双極性障害(MDI)とは

双極性障害(MDI)とは

1. 概要

双極性障害(MDI:manic depressive illness)気分が動揺し、テンションが上がったり、イライラしやすくなる状態(躁状態)が特徴的な脳の疾患です。反対に気分が沈む状態(うつ状態)も多く、初発はうつ状態が多いのでうつ病と鑑別が非常に困難です。実際、治療抵抗性のうつ病として治療されている事も少なくありません。双極性障害の生涯有病率は1%前後で、全経過中に占める抑うつエピソードの割合は30〜50%とされており、双極性障害における抑うつ状態は反復、遷延化しがちです。また、衝動性の高さや攻撃性の高さ、情緒不安定性から自殺のリスクが高く、病相の移行時に見られやすい躁うつ混合状態では特に注意を要します。15〜24歳の発症が多く、90%は再発します。経過は様々ですが、10〜15%は10回以上の再発を経験するとされています。また、病相を反復するごとに、躁状態あるいはうつ状態になるまでの正常気分のスパンが短くなる傾向にあるようです。双極性障害に罹患した人は、ほぼ人生の半分を躁状態ないしうつ状態で過ごすことになり、その中でうつの期間が躁の3倍期間が長いというデータがあります。長期的な経過で、人格水準が低下したり、認知症に移行しやすくなったり、自殺をしたりする事もある、恐ろしい病気の1つです。

2. 原因

原因については、まだ明確にわかっていません。極めて特異的な所見というのは未だなく、一つの原因というよりは、遺伝、病前性格、脳機能の異常など多彩な病態が関与していると思われています。遺伝率は高く、親が双極性障害である場合、1親等の親族は5-10%程度が双極性障害とされ、一卵性双生児であれば40–70%と極めて高くなっています。
脳機能異常に関しては、扁桃脳由来の神経栄養因子(BDNF)や神経保護因子が不足し、正常気分を保護する神経回路(前頭前野、前部帯状皮質、海馬や扁桃体、大脳基底核、視床)の機能も低下しているのではないかという仮説や、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の異常などの仮説があります。また、病相に無関係に衝動的な傾向があり、情動制御を担う脳領域である前部帯状回が萎縮している可能性も指摘されています。注意欠陥・多動症(ADHD)と親和性があり、併存率は23.3%にもなります。

3. 診断

気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で易怒的になるのに加えて、目的指向性の活動(仕事や学業など)や活力が亢進する時など、普段と異なった期間が期間が1週間以上続き、自尊心の肥大や睡眠欲求の減少、多弁、観念奔逸(色々なアイデアが生まれること)、注意散漫、焦り、困った結果になる可能性が高い活動への熱中(浪費、大量飲酒など)のち3つ以上の症状を認め、その結果生活に支障が出ている場合に診断されます。ただ、臨床的には診断基準を満たさないレベルの気分変動でも生活に支障をきたす症例もあり、これらを双極スペクトラム障害として捉える向きが提唱されつつあります。過去の軽躁病エピソードは患者さんにとっての自覚が乏しい例も多々あるので、注意が必要です。抗うつ薬によって焦燥感が出現したり、逆に気分が不安定になる例では、双極性障害である可能性が高まります。また、うつ病と比べて不眠や食欲変化が目立たない事も診断に役立つ所見です。2014年にうつ状態の補助診断として光トポグラフィー(NIRS)が保険適用されましたが、単独で診断ができるほど感度・特異度ともに優れた検査ではありませんが、病態の理解が進めば、いずれは客観的な検査でうつ病を診断できる時代が来るかもしれません。双極性障害と鑑別が必要な疾患として、うつ病、適応障害、脳腫瘍などの器質性脳疾患、甲状腺機能異常症などの身体疾患、統合失調症、境界性パーソナリティ障害などがあります。特にうつ病との鑑別は難しく、双極性障害の患者さんの7割程度がうつ状態から発症するため、過去のエピソードや家族歴、薬の反応や身体症状の有無を丁寧に拾って行くことが診断精度を高める為に必要です。

4. 治療

治療の主体は薬物療法で、中でもバルプロ酸や炭酸リチウム、ラモトリギンなどの気分安定薬が用いられます。ただし、これらは反応に時間がかかるため、急性期はクエチアピンやルラシドンなどの抗精神病薬が併用される事もあります。そうしたアプローチで上手く行かない場合は、抗うつ薬を使う事もありますが、有害性を評価しながら慎重に増量していく事になります。上述のように、薬剤中断後の再発率が著しく高く、気分変動により失われた社会機能の喪失が大きいため、症状が重篤な双極性障害の場合は、一生涯の維持療法が推奨されます。しかし、高血圧患者が薬を飲み続けるのと、そう大差はございません。薬剤の効果が乏しい症例や、希死念慮が切迫するなど生命の危機がある場合は、電気痙攣療法(ECT)も考慮されます。薬剤以外では、睡眠リズムを安定化させることが双極性障害の経過を安定させるために重要であり、そのため朝日光を浴び、日中適度に運動をして夜間良眠を得ることは大切です。また、認知行動療法によって、うつ状態に至った時に気分を向上させるスキルを高めておく事も大切です。

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