全般性不安症(GAD)とは
全般性不安症(GAD)とは
1. 概要
日常的な多くの出来事または活動に対する過剰な不安と心配が持続し、これに伴って自覚的な緊張や自律神経症状などを呈する疾患です。日常の些細な事が心配になり、例えば子どもと青年なら学校の成績やスポーツの出来映えを心配するし、年配者なら家族の幸せや自分の健康が心配の対象になります。成人期に多く発症し(中央値30歳)、男:女=1:2の発症率で女性に多いとされています。有病率は1.8%、12ヶ月有病率は0.9%です。気分障害、パニック障害をはじめとした他の不安障害や薬物依存を合併しやすく、特に双極性障害の合併率は12.2%と高いです。慢性の経過を辿り、寛解率が少ない病態であるとされます。
2. 原因
上述のように、気分障害や他の不安障害、薬物依存を合併しやすいため、それらと共通した生物学的異常があるのではないかと疑われており、不安や心配に関係する脳神経回路が過活動を起こしているという仮説があります。また、多元性のストレス関連感情障害であるとする説も存在しています。すなわち、生物学的異常に加え、こころの状態が芳しくないと発症する可能性があるというのが現在の解釈です。
3. 診断
慢性肺疾患、心疾患、副腎腫瘍や甲状腺疾患の鑑別や物質使用障害の鑑別が必要となります。他の不安障害や気分障害、強迫性障害などで説明可能なら、診断はそちらを優先します。症状は6ヶ月以上持続することが典型的です。抑制できない不安・心配が、起きる時の方が多い状態が、少なくとも6ヶ月以上継続し、かつ下記の3つ以上を伴う場合に確定診断となります。
①落ち着きのなさ
②易疲労感
③集中困難
④易怒性
⑤筋肉の緊張
⑥睡眠障害
4. 治療
治療には、抗うつ薬をベースとした薬物療法と、心理療法があります。一般的には薬物療法より心理療法、とりわけ認知行動療法(CBT)がエビデンスが蓄積しており、再発予防効果に優れ、第一選択となります。全般性不安症に対するCBTには、心理教育やリラクゼーション法、認知再構成法や暴露反応妨害法、セルフ・モニタリング、対処技能獲得法が含まれています。また、ヨガ(マインドフルネス)の効果も認知されるようになってきています。一方お薬のほうですが、特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)または選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が用いられます。他にも、タンドスピロン(セディール)、プレガバリン(リリカ)、クエチアピン(セロクエル)、ヒドロキシジン(アタラックス)など作用機序の異なる薬剤が使用されることがあります。ただし、日本においては保険収載された薬剤はありません。効果のある薬剤は、最低半年から一年程度継続することが一般的です。