社交不安障害(SAD)とは
社交不安症(SAD)とは
1. 概要
2. 原因
病態生理としては、特定の脳領域の機能不全が指摘されています。専門的には、扁桃体、前部帯状回皮質、島皮質のセロトニン5-HT1A受容体結合能が低下し、線条体におけるドパミンD2受容体と、ドパミントランスポーター結合能が減少しているという報告などがあります。遺伝の関与が指摘されており、第一度親族が社交不安障害であれば、罹患する確率は2–6倍高くなるとされています。心理的には、低い自己評価と関連しており、自己にたいする否定的な考えが強い方が罹患しやすいです。社会的な交流を回避するようになり、自信がなくなることでさらに不安が強まるという悪循環が病態を進行させます。
3. 診断
社交不安障害の診断は、以下の全てを満たすことによってなされます。
①他者の注視を浴びる可能性のある複数の場面で、著しい恐怖または不安を感じる
②不安症状として表出される行動が、否定的な評価を受ける事になる事を恐れている
③社交的状況では、常に不安を誘発する
④その社交的状況は回避され、または強い恐怖または不安を感じながら耐え忍ばれる
⑤その恐怖または不安は、その社交的状況がもたらす危険や、その社会文化的背景に釣り合わない
⑥その恐怖、不安または回避は持続的で、典型的には6か月以上続く
⑦その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす
⑧物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない
⑨パニック症、醜形恐怖症、自閉症スペクトラム症といった他の精神疾患の症状では、うまく説明されない
簡単に言うのであれば、目立つ場面や社交場面で著しく不安が高まり、それに関係することで日常生活に支障をきたす状態が6ヶ月以上続き、他の医学的疾患や精神疾患で説明できないものと考えておくとよさそうです。
4. 治療
治療は薬物療法と心理療法が主となります。薬物療法では、SSRIを中心とする抗うつ薬が主体となります。治療効果は3ヶ月程度みて、可能であれば1年継続することが推奨されています。抗うつ薬の反応率は、6〜7割程度です。1年程度寛解が維持できていたら、薬剤を少しずつ減らし、最終的にはなくしてみます。心理療法では認知行動療法(CBT)が一般的で、リラクゼーションスキルの構築(呼吸法、マインドフルネス法など)、否定的な考えの変容などをテーマに扱っていきます。ある程度不安に対処できるようになったら、できるだけ回避行動をとらないで、その結果がどうなったか確認してもらう(行動実験)を行います。