レジリエンスとは?精神医学と心理学の観点から精神科医が解説!

レジリエンスとは?

レジリエンスとは

 

皆さんこんにちは。

どうも、いつも診る院長、清水です。

「レジリエンス」という言葉、あなたも最近よく耳にしませんか?

もともとは物理学の用語で「弾力性」や「回復力」を意味しますが、今では社会学、教育学、神経科学、遺伝学、分子生物学そして医学の領域でも広く使われています。危機に直面しても折れずに適応し、成長する力——それがレジリエンスです。

今日は心理学や生物学的精神医学の分野で使われるレジリエンスを解説しますが、この領域では心の柔軟性やストレス耐性を表す概念として使われています。

「でも、そんな力は生まれつきじゃないの?」と思うかもしれません。実は、レジリエンスは環境や経験によって鍛えることができるんです。

では、生物学的精神医学と心理学の視点から、レジリエンスの仕組みや強化する方法をお伝えしますね。

生物学的精神医学から見るレジリエンス

レジリエンスは、単なる精神論ではありません。実は、脳の構造や神経伝達物質が深く関係していることが、科学的に証明されています。

特に、最近の研究では「神経可塑性(Neuroplasticity)」——つまり脳の変化する能力——とレジリエンスはほぼ同義語として語られることもあります。

脳の構造とレジリエンス

レジリエンスが高い人の脳では、次のような部位がうまく機能しています。

海馬(Hippocampus): 記憶や学習を司る部位。ストレスホルモン(コルチゾール)の影響を受けやすいが、レジリエンスが高い人は海馬の萎縮が起こりにくく、神経可塑性が高い。

扁桃体(Amygdala): 感情の処理を担う部位。ストレスに過剰反応しないことが、レジリエンスを高めるポイント。

前頭前野(Prefrontal Cortex): 衝動を抑え、論理的に考える役割。レジリエンスの高い人は、この部位がよく働いている。

神経伝達物質とレジリエンス

セロトニン: 感情の安定に関わる。低いとストレス耐性が下がる。

ドーパミン: モチベーションを高める。ポジティブな経験がレジリエンスを強化する。

オキシトシン: 人とのつながりを強め、安心感をもたらす。

「脳は変えられない」と思いがちですが、実際には、これらの神経伝達物質のバランスを整えることで、レジリエンスを高めることができます。

心理学から見るレジリエンス

「心の持ちよう」と言われることもありますが、心理学的な視点から見ても、レジリエンスには明確なメカニズムがあります。

認知の柔軟性

レジリエンスが高い人は、物事を一面的に捉えません。失敗しても「これは学びの機会だ」と考え、逆境を前向きに受け止めます。

 

コーピング(対処スキル)

ストレスに直面したときの対応力が鍵になります。

問題焦点型コーピング: 問題の解決策を探る。

情動焦点型コーピング: ストレスによる感情をコントロールする。

社会的サポートの活用: 友人や家族と話し、支えを得る。

これらのスキルを持つことで、ストレスに押しつぶされることなく、冷静に乗り越えることができます。

レジリエンスを高める方法

「じゃあ、どうすればレジリエンスを鍛えられるの?」という疑問にお答えします。以下の習慣を取り入れてみましょう。

 規則正しい生活習慣をつくる

  • 睡眠をしっかりとる(7〜9時間)
  • バランスの良い食事を心がける
  • 適度な運動をする(特に有酸素運動が効果的)

感情のコントロールを学ぶ

  • マインドフルネス瞑想を取り入れる
  • ポジティブな自己対話を増やす(「自分ならできる」と言い聞かせる)
  • 日記を書いて感情を整理する

社会的なつながりを大切にする

  • 信頼できる人と話す
  • コミュニティに参加する
  • 感謝の気持ちを持ち、良好な人間関係を築く

小さな成功体験を積み重ねる

  • 短期目標を設定し、達成する
  • 失敗しても、自分を責めず次に活かす

まとめ

レジリエンスとは、ストレスや逆境に対処し、回復する力のこと。生物学的精神医学の視点では、脳の構造や神経可塑性が関係し、心理学の視点では、認知の柔軟性やコーピングスキルが鍵となります。

「生まれつきのもの」と思われがちですが、実は生活習慣や考え方を変えることで、誰でも鍛えられるものです。

「レジリエンスとは?」と検索してこの記事にたどり着いたあなたへ。

あなたの心の強さは、あなた自身の意識と行動で変えられます。まずは、できることから始めてみませんか?

それでは皆さん、お大事に。

更新:2025.3.12

 

>執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

 

【引用・参考文献】

  • Southwick, S. M., & Charney, D. S. (2012). Resilience: The science of mastering life’s greatest challenges. Cambridge University Press.
  • McEwen, B. S., & Morrison, J. H. (2013). The brain on stress: Vulnerability and plasticity of the prefrontal cortex over the life course. Neuron, 79(1), 16-29.
  • Davidson, R. J., & McEwen, B. S. (2012). Social influences on neuroplasticity: Stress and interventions to promote well-being. Nature Neuroscience, 15(5), 689-695.
  • Bonanno, G. A. (2004). Loss, trauma, and human resilience. American Psychologist, 59(1), 20-28.
  • Dweck, C. S. (2006). Mindset: The new psychology of success. Random House.
>

 医療法人社団 燈心会
ライトメンタルクリニック
東京都新宿区西早稲田3丁目20-3レガリアタワーレジデンスB1F
TEL 03-6457-6040 FAX 03ー6457-6041
診療日・時間
 月〜金 10:00~13:00、14:00~18:00、19:00~22:00
 土・日 10:00~13:00、14:00~18:00
※土・日の19:00~23:00はカウンセリングのみ
※祝日は原則診療

診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
2.副作用のリスク等から、薬物療法に抵抗感を感じる方にも精神科・心療内科の受診を検討いただけるよう、非薬物療法を充実させています。
3.通院が困難な方のニーズに応えるため、オンライン診療を実施しています。
4.仕切りを設けた待合室により、患者さま同士が極力顔を合わせずに診療を終える事ができます。
このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。