ダイエット薬、どれが一番良いのか?
皆さん、お加減どうでしょうか?
どうも。「いつも診る院長」の清水です。
当院は、メンタルクリニックでありながら、
ダイエット薬の処方に取り組んでいる医院の一つです。
実際、メンタルと容姿は非常に密接なつながりがあり、美容医療と相性がいいんですよね。
特に過食は、衝動制御障害や認知の偏り、ストレス免疫力の低下が関係していることが多く、体型の維持には薬だけではなく、
認知的なアプローチも役に立つんですよ。
そんなこんなでダイエット外来をやっていると、皆様から多く寄せられる疑問があります。
漢方薬・・・・
サノレックス・・・
ゼニカル・・・・
メトホルミン・・・
スーグラ・・・
オゼンピック・・・・
リベルサス・・・・
マンジャロ・・・
色々痩せるって言われる薬があるけれど、
「結局、どの薬がいいの?」
これです。
「良い」の価値基準が、効果なのか、費用なのか、安全性なのか、
あるいはそのバランスなのか、その患者さんにとって良しとするところは違うと思いますが、
この記事が、そんな方にとって役に立てば、幸いです。
色々な“痩せる”薬、一括比較!
抗肥満薬、といっても、世間には様々な薬が出回っています。
そもそも、肥満症に保険適用のある薬剤は日本ではサノレックス(マジンドール)のみと少なく、
ほとんどが他の作用を狙っており、副次的に体重減少効果があることがわかったものの方が多いです(最近、オゼンピック/リベルサスの成分であるセマグルチドも肥満症に適用を取りました!)。
一般的に、よく自由診療で出されているお薬には
次のようなものがあります。
【漢方薬】
防風通聖散、防已黄耆湯、大柴胡湯
<特徴>効果はマイルドだが安全性重視
【抗肥満薬】
サノレックス(マジンドール)
<特徴>肥満症に保険適応がある。満腹中枢を刺激し食欲を抑制。依存、精神状態の悪化や便秘に注意。三ヶ月の使用制限がある。
【抗てんかん薬】
トピナ(トピラマート)
<特徴>満腹中枢を刺激し食欲を抑制。精神状態の悪化、眠気や集中力低下に注意
【脂肪吸収抑制薬】
ゼニカル(オルリスタット)
<特徴>脂肪分解酵素を阻害し、腸からの脂肪吸収を抑制する。腹痛、油漏れに注意
【選択的SGLT2阻害薬】
スーグラ/ルセフィ/フォシーガ/カナグル(イプラグリフロジン)
<特徴>元来は糖尿病治療に用いられる薬剤であり、尿からの糖排出を促進する。
【ビグアナイド系薬】
メトグルコ(メトホルミン)
<特徴>元来は糖尿病治療に用いられる薬剤であり、糖消費を助け、糖吸収を抑制する。
【GLP-1受容体作動薬】
トルリシティ(デュラグルチド)、ビクトーザ/サクセンダ(リラグルチド)、オゼンピック/リベルサス(セマグルチド)、マンジャロ(チルゼパチド)
<特徴>元来は糖尿病治療に用いられる薬剤であり、インクレチンの分泌を介して満腹中枢を刺激、消化管運動の抑制など幅広く効果を発揮する。
体重減少効果の差は、いかに?
まず、こちらの表からご覧ください。
専門的なことは可能な限り排除して、表にまとめてみました。
体重減少効果 | リスク | |
防風通聖散 | 肥満者(平均BMI30.6kg /m2)のBMIを半年で0.52減少させた。ただし異質性は大きかった。 | 胃腸症状 |
防已黄耆湯 | 不詳 | |
大柴胡湯 | 不詳 | |
サノレックス | 1年間で7.7(±0.1)kg減。 | 肺高血圧症の発症を避けるため、三ヶ月の利用制限がある 精神状態の悪化、依存・耐性化のリスクがある |
トピナ | 92mgを1年間投与された場合、総体重の6.8%減。 | 感覚異常、口渇、味覚障害、便秘、不安、うつ病、不眠症が用量依存的に増加 |
ゼニカル | 1日量120mgで、12ヶ月で総体重の2.9%の体重減。 1年後が体重減少のピークだった。 | 91%が胃腸の問題をかかえており、結腸に過剰な脂肪が残るため、結腸/直腸癌のリスクあり |
スーグラ | 大凡、3ヶ月で2.5±2.95kg減。継続しても大体横ばい。 | 頻尿、便秘、口渇、膀胱炎 |
メトグルコ | 750mg〜2250mgを約1年投与したところ、平均1.2kgの 体重減少(100kgの人なら約1%)。 | 乳酸アシドーシス、胃腸症状 |
トルリシティ | デュラグルチド0.75mgを用いた場合、約1年経過時点で 約1%程度の体重減少あり。 | 胃腸症状 |
ビグトーザ | リラグルチド3mg投与群において、12ヶ月で5.4%の体重減。 | 下痢、便秘、消化不良が多い。FDAが承認した 抗肥満薬の中で、研究参加者の副作用による 中止率が最も高かった(13%) |
オゼンピック | 1mgを12週投与すると、5kg体重減少した。12ヶ月後、セマグルチド1mgで約7.8%、セマグルチド2.4mgで約10%の体重減少あり。 | 胃腸症状、味覚が変化する可能性あり |
リベルサス | 14mgを12週投与したところ、約4kgの体重減少。 約1年後も約4kg程度の体重減少を維持していた。 | オゼンピックと同様 |
マンジャロ | 最初の4週はチルセパチド2.5mg、次の4週は5mgを使った 時点で6%程度の体重減少、15mgを用いて1年間経過した 場合は20%超の体重減少。オゼンピック1mgと比較した際の体重減少効果はほぼ2倍の体重減少効果あり。 | 胃のむかつき、下痢、便秘、消化不良、嘔吐 |
うん、まだ分かりにくいですね。
結論いきましょう。
現状ッ!! どれか一つと言われたらッ!!
オゼンピック、リベルサスがオススメ。
効果値でいうと、トピナやサノレックスも光るものがあるのですが、過食と精神疾患は紙一重、
精神症状を悪化させる可能性のある抗肥満薬は、精神科医としてはお勧めしにくいものがあります。
それにサノレックスには3ヶ月以上の使用は難しいといった制限もあるから長期使用にも向きませんね。
ですので、効果もトップレベルかつ耐性化もしにくく、
リスクもそれほど重篤なものがない、
コストパフォーマンスに優れるリベルサス、オゼンピックがお勧めというわけです。
そして、そんなリベルサスやオゼンピックでも効かなかった
そこの貴方。
マンジャロに期待してください。
このマンジャロという薬。
効果値は現状堂々のNo1、かつリスクも胃腸症状主体で、オゼンピックとほぼ同等とのことでした。
また、オゼンピックとの比較試験で、さらに強力なダイエット効果が得られる事がわかっています。
まだまだ流通してから歴史が浅い薬なので、
思いもよらぬ副作用が報告される可能性がありますので、まずはオゼンピックやリベルサスから
試し、ダメならマンジャロ、という運用がおすすめです!
ただし、案の定ダイエット目的の濫用が起こり、
糖尿病患者に供給が行き渡らないため、
一時出荷調整となりました。現在調整は解除されていますが、
ダイエット目的の使用に関しては十分な流通はなされていません(2024年8月現在)。
それから、この表をみて、
「え、こんなしか痩せないの?」と思った方。
安心してください。実臨床ではもっと痩せます。
プラセボ効果が加わるんで笑。
あ。でもね。ダイエット薬のことで、ネガティブなことも知っておいてほしいのです。
それは、
「一度痩せても、薬をやめると5年後には5から8割はリバウンドする」
という悲しい事実。
というかこれ、何もダイエット薬だけでなく、全てのダイエットが当てはまるようです。
遺伝的に、ある程度体重のセットポイントが決まっていて、ストレスなく維持できる体重が設定されているため、
何も意識しなければ、太っていく人は太っていくようです。
遺伝で太るべくして生まれた人が理想的なボティラインを維持するには、
一生ダイエットをし続けなければいけない、ということです。
ということは、薬をいつか卒業してもらうには、
行動習慣や認知の変容を促す介入が必要であり、
私たちがその力になれるといいな、と思っています。
当院では、そんな方のために、薬を卒業する力を身につけるプログラムである
心理的な介入「CBT-OB」を行なっていますよ。
メディカルダイエットを検討するなら、
是非当院の利用もご検討ください。
【引用・参考文献】
・Lili Dai, et al.Safety and Efficacy of Saffron (Crocus sativus L.) for Treating Mild to Moderate Depression: A Systematic Review and Meta-analysis.The Journal of nervous and mental disease. 2020 04;208(4);269-276.
・Masato odawara et al. Long-term treatment study of global standard dose metformin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetol Int. 2017 Aug; 8(3): 286–295.
・Garcia Ramirez et al. Meta-analyses and approach of the real impact of anorexigenic drugs in the obesity in humans: the last five years of the randomized studies.
・Kazushi Uneda et al. Japanese traditional Kampo medicine bofutsushosan improves body mass index in participants with obesity: A systematic review and meta-analysis. PLoS One 2022 Apr 13;17(4)
・Kazuyuki Tobe et al.Impact of body mass index on the efficacy and safety of ipragliflozin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: A subgroup analysis of 3-month interim results from the Specified Drug Use Results Survey of Ipragliflozin Treatment in Type 2 Diabetic Patients: Long-term Use studyJ Diabetes Investig
. 2019 Sep;10(5):1262-1271.
更新:2024.8.29
ライトメンタルクリニック院長
精神科専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医