【精神科医監修】アスペルガーとカサンドラ症候群の関係、対処法は?〜苦しむパートナーのために〜

はじめに:「アスペルガー」と「カサンドラ症候群」

カサンドラ アスペルガー 対処法

もしかして、これが「カサンドラ症候群」かもしれません

「家族なのに、まったく気持ちが通じない」
「言葉は通じているはずなのに、どうしてこんなに孤独なの?」

そんな“見えないストレス”を抱えていませんか?

あなたのパートナーが、アスペルガー(自閉スペクトラム症)の特性を持っている場合、その関係性のズレによって生まれる苦しみが、あなたを知らず知らずのうちに追い詰めているかもしれません。

このような状態は「カサンドラ症候群」と呼ばれ、医学的にも心身に大きな影響を及ぼすことがわかってきています。

本記事では、アスペルガーとは何か、そしてそれに起因するカサンドラ症候群の特徴と具体的な対処法をわかりやすく解説します。

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群の現在

「アスペルガー症候群」という言葉は、かつて広く使われていた診断名です。
知的な遅れがなく、しかし対人関係や共感力に特徴のある自閉症の一形態として知られていました。

2022年時点での**ICD-11(WHOの国際診断分類)およびDSM-5(アメリカ精神医学会の診断マニュアル)**においては、「アスペルガー症候群」という表現は廃止され、
**自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)**という包括的な診断名に統合されました。

つまり、アスペルガー症候群は現在では「ASDの中でも言語・知的発達に遅れのないタイプ」の発達障害として扱われています。

本記事では、多くの方が検索・認識しやすいよう「アスペルガー」という用語を使用していますが、これは現在の診断名「ASD(自閉スペクトラム症)」に該当する概念です。

ちなみに「発達障害」とは、遺伝子の異常により、脳機能異常が生じている状態を指します。

このため、「普通ならできる」水準のコミュニケーション能力、情報処理能力、表現力、集中力などが

維持できません。

障害されている機能により、発達障害にも

ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)など様々な型が存在しますが、

遺伝子異常に伴う脳機能異常という意味では共通です。

主な特徴

  • 相手の気持ちや空気を読み取るのが苦手

  • 一方的な会話や自己中心的に見える表現

  • こだわりが強く、予定変更に過度なストレスを感じる

  • 感覚の過敏さ(音、光、匂いなど)

本人には悪気がないのに、「冷たい」「空気が読めない」「人の気持ちを考えない」と誤解されてしまうことが多いです。

カサンドラ症候群とは?

概要

カサンドラ症候群とは、アスペルガーの特性を持つパートナーと共に生活する中で、

「共感してもらえない」「心が通じない」ことにより生じる情緒的な孤独と精神的な疲弊のことです。

ギリシャ神話に、予言の力を持ちながら誰にも信じてもらえなかった女性がいるのですが、

その女性の名前にちなんで「カサンドラ症候群」と名付けられています。

アスペルガーのパートナーとの関係で苦しむ人も、カサンドラと同様、

自分の感情や辛さを理解してもらえない孤独感を抱えることから、この名がついています。

症状の例

  • 会話しても気持ちがすれ違う

  • 無視されているような感覚になる

  • 孤独、無価値感、怒り、抑うつ

  • 身体の不調(不眠・頭痛・胃痛)

  • 周囲に話しても「気のせいでは?」と理解されにくい

    カサンドラ症候群の方が知って欲しいこと

    「あなたの苦しみは、あなたのせいではありません。」

    共感されないのは、あなたの価値が低いからではなく、*

    「相手が共感する力を持たないだけ」なのです。

    相手も悪気はありません。

    だからこそ、自分を責めるのではなく、違う構造の人とどう関わるかに視点を切り替えていきましょう。

    カサンドラ症候群の具体的な対処法【実践編】

    ①「共感してくれる人」ではなく「構造が違う人」として見る

    アスペルガーの方は、感情を“受信”するセンサーが極端に弱い場合があります。

    「なぜわかってくれないの?」ではなく、「そもそもわかる構造じゃない」と考えることで、

    過度な期待や落胆を避けることができます。

    ② 指示は「普段の3倍具体的に」

    アスペルガーの特性を持つ人には、あいまいな言い方が通じません。

    悪い例:「もうちょっと家事して」
    良い例:「19時までにお皿を洗って、テーブルを拭いてね」

    「誰が」「いつ」「何を」「どうするか」まで伝えるのがポイントです。

    ③ 「夫婦=心の共有」は捨ててOK

    共感や空気の読み合いが難しい相手に「心の通い合い」を求めすぎると、傷つくだけになります。


    生活の役割分担パートナーという枠組みで捉えると、

    冷静に付き合えることもあります。

    ④ 境界線(バウンダリー)をはっきり持つ

    • 言われて嫌なことは明確に伝える

    • 自分の時間や空間を確保する

    • 相手の感情に“巻き込まれすぎない”

    “相手のために”と限界を超えて頑張りすぎないようにしましょう。

    意外にも、具体的に、理論的に言えばアスペルガーの方にも伝わることも多いです。

    ⑤ 感情は言葉にして「外に出す」

    ノート、日記、アプリ、カウンセリングなど、自分の気持ちを言語化する習慣を作りましょう。

    「私の中にあるこの感情は、正当だ」と再認識することが、自己肯定につながります。

    ⑥ 共感してくれる「第三者」の存在を確保する

    • 同じ経験を持つ人との会話(SNS、コミュニティ)

    • 共感型のカウンセラー

    • 家族会、支援グループなど

    “わかってもらえる人”は必ず存在します。 孤立しないことが回復のカギです。

    ⑦ 医療機関や支援施設を活用する

    アスペルガーの正確な診断と、カサンドラ症候群への心理的支援は、専門家の介入がとても有効です。
    当院では、以下のようなサポートが可能です:

    • 発達特性の評価・診断

    • パートナー/家族向けカウンセリング

    • グループ支援プログラム

    ⑧ 最終手段:「離れる」ことも選択肢

    あなたの人生は、“我慢し続けるため”にあるわけではありません。

    相手を変えられなくても、自分の生き方は変えることができます。

    逃げることは敗北ではなく、“自己尊重”の証です。

    さいごに

    いかがでしょうか。アスペルガーに限らず、

    自分の価値観と異なる人はいるものです。そうした時でも、

    ブログの戦略が生きるかもしれないですね。

    ちなみに、カサンドラ症候群に悩む方、アスペルガーのパートナーとの関係に苦しんでいる方は、

    当院でもご相談に乗っています。

    お一人で抱え込まず、ぜひ当院までご相談ください。

    それでは皆さん。お大事に。

    更新:2025年4月16日

     

    >執筆者紹介

    清水聖童
    ライトメンタルクリニック院長
    日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

     

    【引用・参考文献】

    ・Attwood, T. (2007). The Complete Guide to Asperger’s Syndrome. Jessica Kingsley Publishers.
    ・Baron-Cohen, S. (2000). Theory of mind and autism: A review. International Review of Research in Mental Retardation, 23, 169–184. https://doi.org/10.1016/S0074-7750(00)80010-2
    ・Lai, M.-C., Lombardo, M. V., & Baron-Cohen, S. (2014). Autism. The Lancet, 383(9920), 896–910. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(13)61539-1
    ・Matsuura, M., & Yamada, M. (2021). Psychological distress in spouses of adults with ASD: Characteristics of “Cassandra syndrome”. Japanese Journal of Autism Spectrum, 18(2), 23–30. https://doi.org/10.11192/jas.18.2_23
    ・Tanaka, Y. (2022). Understanding and support for partners of people with Asperger’s syndrome. Journal of Family Psychology, 34(4), 455–469. https://doi.org/10.1037/fam0000933
    ・World Health Organization. (2018). International Classification of Diseases for Mortality and Morbidity Statistics (11th Revision). https://icd.who.int/
    ・American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.). https://doi.org/10.1176/appi.books.9780890425596

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