トラウマ治療のEMDR
1. EMDR
EMDRとは
EMDRの概要
EMDRは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法として発展した、うつ病やパニック障害など、他の精神医学的疾患にも有効性が示された、新しい心理療法です。
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、1987年、公園を歩いていたFrancine Shapiro博士により偶然着想を得て、PTSDの治療として発展した新しい心理療法です。現在では国際的なガイドラインでPTSDの標準治療として推奨されているトラウマ治療となりました。過去の嫌な記憶のように、不快な思考と眼球運動の両者に注意を保つことによって、自己治癒を促す事を目指します。現在、精神医学分野で最も浸透している心理療法は認知行動療法(CBT)ですが、CBTでうまくいかない症例や、過去に外傷体験を有するうつ病やパニック障害のなど、他の精神医学的疾患にも効果をあげています。
EMDRが何故効くのか
EMDRは、過去の不適応的な記憶ネットワークにアクセスし、自己治癒に導くことで効果を発揮するとされます。そもそも人は、苦痛を伴う体験の記憶をうまく処理する仕組みをもっています。これを適応的情報処理(AIP)モデルと呼んでいます。不快な体験においても、AIPが適切に機能する場合は映像や音声、身体感覚や情動など、記憶の要素一つ一つが適切に連結して記憶ネットワークを形成するとされます(適応的記憶ネットワーク)。しかし、劣悪な生育環境や生命を脅かされるような強烈なトラウマ体験下では、記憶の各要素が不適切なネットワークを形成してしまいます(不適応的記憶ネットワーク)。
適応的情報処理(AIP)モデル
適応的記憶ネットワーク
不適応的記憶ネットワーク
適応的記憶ネットワークが形成されている場合、過去の嫌な記憶に繋がるストレス刺激にさらされても、過去の嫌な体験と共に、これまでの人生での肯定的な感覚や認知に自動的に接続されるので、嫌だった「過去の記憶」として想起されます。しかし不適応的ネットワークが形成されると、過去の嫌な記憶に繋がるストレスにより、不快な映像や感覚、情動が抑制されずに活性化されるため、あたかも「現在の体験」として想起され、日常生活に意味のある苦痛をもたらします。
EMDRの効果と副作用
・EMDRは、生理学的機序は不明ながらも、EMDR前後で脳血流の変化や脳機能画像での変化が認められたとする報告があります。
・外傷性ストレス障害(PTSD)だけでなく、パニック障害やうつ病など、その他の精神疾患に応用されており、背景にトラウマが存在する場合は認知行動療法よりも効果的なのではないかと言われています(うつ病に対する効果は68%の寛解率)。さらに1年後の経過観察でも再発が少なく、かつ認知行動療法よりも効果の実感が早いため、注目されています。
・過去の体験に注意を向ける際に、不安や恐怖に襲われ、一時的に病態が悪化することがあります。
EMDRの禁忌
※次に該当する場合は、治療を受けることができません
・今現在も被虐体験の渦中におり、安全が保証されていない方
・物質濫用、自殺企図、自己や他者に対しての深刻な暴力行為がある方
・解離性障害の診断歴がある方で、現在症状がコントロールできていない方
・その他、医師が現在の状態を見て適応ではない、または治療に耐えられないと判断した場合
当院におけるEMDR
当院におけるEMDRのプログラム
EMDRは⼀回60分のセッションであり、完全予約制となります。
セッションは、対⾯のみ実施が可能です。
可能な方は週に1回、難しければ頻度は相談可能です。実施するためには、院長の清水聖童医師の診察が必要です。
治療効果を実感していただくには、3〜7回程度のセッションが必要になります※。
※反応には個人差があり、効果を保証するものではありません。
EMDRのご予約について
当クリニックのWebから、まずは院長の清水聖童医師の初診をご予約下さい。
お電話、受付でご予約された⽅のキャンセルは、受付時間中に、お電話でご連絡ください(この場合、Webサイトからの予約キャンセルができません)。
当⽇キャンセルや、連絡なくご来院されないことが2回続きますと、予約をお断りする場合があります。以降もEMDRの継続をご希望される場合、キャンセル時にキャンセル料をお⽀払いいただくこととなります。
2. 診療メニュー
【来院】EMDR(トラウマ治療)
所要時間:50分程度
初回治療
5,000円(税込)
2回目以降
8,000円(税込)
※来院の上でセラピストと面談し、治療を受けます。当日ご予約時間に遅れた場合、料金の減額、時間の延長はできませんのでご理解下さい。
※当日の無断キャンセルをされてしまうと、キャンセル料6,500円が別途かかります。