インターネット・ゲーム障害とは
インターネット・ゲーム障害とは
1. 概要
2. 原因
生来の特性として、ADHD傾向、男性、中高生であることなどがリスクとなります。性格特性としては、自己抑制や判断能力欠如、自己評価や自己肯定感の低さ、社会的な孤立、人間関係の希薄さ、趣味がゲーム以外ないこと、神経症的な傾向などが指摘されています。後天的なリスクとしては、他の精神疾患(うつ病や不安障害など)の合併や、家族関係の悪さ、社会的な能力の低さがあり、それらは発症を助長してしまうことが知られています。その一方で、自尊心の高さ、学校、社会での幸福度の高さ、自制心の高さなどが防御因子として挙げられます。脳内の異常としては、他の依存、嗜癖と同様に脳内の報酬系、それ以外の複数の脳領域の異常が関与している事が想定されています。具体的には中脳腹側被蓋野から側坐核、前頭前野、帯状回に至る脳内報酬系は活性化、島回と楔前部および舌状回との機能的接続の低下が認められ、後部帯状回および運動関連領域とともに、眼窩前頭皮質と海馬の機能的接続が低下していることが示唆されています。これは、衝動コントロールする脳領域の機能低下があることを示しています。細胞の代謝を可視化できるモダリティを使用した研究においては、前頭前野、側頭、辺縁系などの脳領域でのグルコース代謝の低下が報告されています。
3. 診断
2024年6月現在においては、DSM−5における診断基準は「研究中」と位置付けとなっており、非公式となっています。その代わり、国際的な診断基準であるICD-11では、「ゲーム障害」という疾患名のもと、以下のように定義されています。
以下のうち4項目以上が12ヶ月以上持続する場合に診断。
ただし、4項目以上が存在し、重症であればそれより短くとも診断可能。
①ゲームのコントロールができない
②他の生活上の関心ごとや日常の活動よりもゲームを選ぶ程ゲームを優先する。
③問題が起きてもゲームを続ける。またはより多くゲームをする。
④ゲームのためにひどく悩んでいる。または個人や家族の社会における学業上または職業上の機能が充分に果たせない。
4. 治療
現在、ゲーム障害に対する標準的な治療法として確立したものはありません。しかし、ギャンブル障害などこれまでの行動嗜癖を参考にした治療法が、我が国でも試みられています。これまで認知行動療法や、家族療法の有効性がメタ解析でも示されてきましたが、依存症の専門機関である久里浜医療センターが開発した「ゲーム障害に対する認知行動療法をベースとした包括的治療プログラム(CAP-G)」の有効性が実証されつつあり、治療が試みられています。生活習慣が著しく悪化したり、身体合併症の悪化、家族への暴力などにより在宅療養が困難、遠方で外来通院が困難などの条件を満たす場合は、久里浜医療センターでは2ヶ月程度の入院治療を行うケースがあり、スマホなどの電子機器から離れて生活習慣を確立するよう支援しています。また、文部科学省より委託を受けた国立青少年教育振興機構と共催の治療キャンプが開催されており、こちらは認知行動療法や野外アクディビティを中心として、参加者をサポートしています。
治療で最も困難な点は、そもそも患者が治療の必要性を感じておらず、治療につながらない点です。治療の特に初期は、インターネット、ないしゲームを禁止することを強要するような介入を避ける必要があります。実際、親による叱責や注意の強要では有効性は示されませんでした。治療では、1日の生活時間の円グラフを記載し、ゲームやインターネットをする理由、メリットとデメリットを書き出し、今後どのようになるか推測することで、治療のモチベーションを引き出すように支援します。また、ゲームやインターネットをしたくなるトリガーを見つけ出し、それに対処するスキルを高めるよう援助します。もし治療の動機づけに乏しくても、他の活動に少しでも興味感心を抱かせることができれば、依存からの回復が期待できます。久里浜医療センターのHpに、ネット・ゲーム依存の専門医療機関が掲載されています。患者家族の対応としては、アルコール依存症の家族対応「CRAFT」が参考になります。