【精神科専門医監修】あなたは大丈夫?5月病のセルフチェックとできる対策

はじめに

5月病

みなさんお加減どうですか?

どうも、いつも診る院長の清水です。

新年度から1か月。

ようやく生活が落ち着く5月ですが、

この時期精神科・心療内科は急に激務になります。

・・・なぜなら。

この時期は、「なんとなくやる気が出ない」「朝起きられない」「人と話すのが億劫」といった

心の不調を感じる方が増える時期でもあるからです。

これは俗に「5月病」と呼ばれ、適応障害やうつ病、あるいは双極性障害の初期症状である可能性もあります。

本記事では、精神科専門医の視点から、

5月病のチェックリスト、背景要因、そして見落としやすい双極性障害との関連性や対策までを解説します。

 まずはチェック!5月病セルフ診断リスト

以下の項目のうち、2つ以上に当てはまり、それが2週間以上続いている場合は注意が必要です。

  • 朝起きるのがつらく、遅刻や欠勤が増えた

  • 興味や楽しみが感じられない

  • 食欲の異常(減退または過食)がある

  • 集中力が続かず、仕事や家事でミスが増えた

  • 「自分はダメだ」と思うことが増えた

  • 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める

  • 人と話すのが面倒、孤立感がある

このチェックリストは、DSM-5に基づくうつ病や適応障害の診断基準をベースに構成されています。

単なる一時的な疲れと見過ごさず、早めのケアが大切です。

なぜ5月に心の調子が崩れやすいのか?

1. 環境ストレスの蓄積

4月の入学・異動・人間関係など、環境の変化に適応するストレスに反応する形で、

1か月以内に心身に影響を及ぼします。

ストレスとの関連が明確な場合、臨床で「適応障害」として診断されることになります。

2. 光環境と脳内ホルモンの変動

日照時間の増加により、脳内のセロトニンやメラトニンのバランスが一時的に不安定になることが知られています。

これは春季うつや双極性障害の躁転リスクにも関連しています。

 実は5月病の影に潜む「双極性障害」とは?

5月にみられる一部の不調は、単なるうつ状態ではなく、

双極性障害(特にⅡ型)の初期段階であることがあります。

双極性障害は、気分をはじめ、

睡眠、食欲、身体症状が明確な理由もなく変動する病態ですが、

最近の研究では、双極性障害の躁状態や混合状態が春〜初夏(3〜7月)にピークを迎えることが報告されています (Virtanen et al., 2023)

また、双極性障害における初発症状はうつ状態から始まることが多く、

「5月病」と見分けがつきにくいのも特徴です (Fawcett, 2012)

 血液検査と精神疾患の関係

2022年の研究では、双極性障害患者において

白血球や血小板の数が「無気力・興味喪失・睡眠障害・自殺念慮」などと関連していたことが示されました (Lengvenyte et al., 2022)

過去の研究からも、気分障害をはじめとして数々の精神疾患に脳内の炎症が病態に関係しているとする研究は多いのですが、

一部血液検査で捉えられる指標も出てきた、ということなのでしょう。

ただし、これらはあくまで「相関」であり、診断的なカットオフ値(陽性・陰性の閾値)は存在しません

この件は多くの精神科医にとって常識ではなく、一部の医師により、

他の症状や経過とあわせて、補助的指標として活用されます。

専門医がすすめる5月病対策

● セロトニン活性を促す朝散歩

起床後に10分でも光を浴びるだけで、脳内のセロトニン生成が促進され、気分の安定に寄与します。

● 「できていること」に意識を向ける認知訓練

CBT(認知行動療法)では「できないこと」より「できたこと」に注目する習慣が、抑うつ予防に有効とされています。

● 感情を言葉にする

感情を表出することは、精神的ストレスを軽減し、孤独感の緩和につながります。誰かと話すだけでも予防効果があります。

さいごに

5月病は誰にでも起こり得る一時的な心の疲れですが、

背後にうつ病や双極性障害などの気分障害が潜んでいるケースもあります

当院では、精神科専門医による詳細な問診・診断・必要に応じた血液検査を行い、

患者様に合った適切な支援をご提案しています。

「ただの疲れかも…」と我慢せず、お気軽にご相談ください。

それでは皆さん、お大事に。

更新:2025年4月16日

>執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

 

【引用・参考文献】
・Fawcett, J. (2012). The many facets of bipolar disorder. Psychiatric Annals, 42(5), 165.
・Lengvenyte, A., Strumila, R., Belzeaux, R., Aouizerate, B., Dubertret, C., Haffen, E., … & Courtet, P. (2022). Associations of white blood cell and platelet counts with specific depressive symptom dimensions in patients with bipolar disorder: Analysis of data from the FACE-BD cohort. Brain, Behavior, and Immunity, 108, 176–187.
・Virtanen, M., Ormälehto, S. T., Partonen, T., Elovainio, M., Ruuhela, R., Hakulinen, C., … & Sund, R. (2023). Seasonal patterns of sickness absence due to diagnosed mental disorders: A nationwide 12-year register linkage study. Epidemiology and Psychiatric Sciences, 32.

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