適応障害とは
適応障害とは
1. 概要
適応障害(適応反応症)は、明確なストレス因子を背景とした、情緒ないし行動、あるいは両者の不適応反応と定義されています。身体症状が主症状の事もあります。情緒の障害として抑うつ、絶望、イライラ、不安などがあり、行動の障害として社会ルール無視、喧嘩、危険運転、飲酒、自閉などがあります。また、身体症状としては動悸、不眠、発汗、ほてり、便秘下痢など自律神経症状が主体です。内科では、慢性化した例が自律神経失調症と診断されている事もあります。簡単に言うと、過剰なストレスに対する、誰でも起こり得る反応であり、一般人口の2~8%程度存在し、精神科外来では15~20%とかなり高率に診断される、非常に頻度が高い疾患の1つです。女性は男性の2倍程度多く、特に独身女性に多いとされます。
ストレス因から遅くとも3か月以内に症状が出現し、多くの方は3か月以内に症状が消失します。遅くとも6か月以上症状は持続しない病態だと定義されている予後良好な疾患ではありますが、稀に希死念慮が深刻化する事もあります。症状が6か月以上持続した場合、遷延性抑うつ反応などの診断に変更されることがあります。
2. 原因
定義上、ストレスが原因となり発症します。発症は個人のストレス脆弱性に大きな影響を受けるため、ストレス脆弱性が高い場合は再発を繰り返すことも多いです。基本的に、明らかな脳の異常は概念上はないものとされています。
3. 診断
明確なストレスイベントが存在し、それから遅くとも3か月以内に情緒ならびに行動、あるいは自律神経系の諸症状を中心とする身体症状が出現していることが診断の条件です。症状が6か月以上持続する場合は診断変更となります。また、症状が重篤化し、うつ病などの気分障害や限局性恐怖症、パニック障害などの不安障害の診断基準を満たす場合はそちらが優先されます。
経過中もストレスと症状は明確に連動し、ストレスがかからないと著しく改善しますが、ストレスがかかりだすと不調になる事が多いです。
4. 治療
仕事のストレス負荷が強い場合は休職、家族間のストレスが大きい場合は距離を置くなど、ストレスがかからない環境を整える事ができれば、かなりの確率で症状が改善します。環境調整ができれば、概ね3か月以内に軽快する事が多いです。また、辛さを受容的に受け止めることができる相手がいることも治療的に働きます。再発を繰りかえしている方に関しては、適応力向上とストレス脆弱性の軽減のため、認知行動療法(CBT)、EMDR、精神力動的精神療法、リラクゼーション法やマインドフルネスなどサイコセラピーが有効とされます。最近では、CBTとVRプログラムとの包括的治療(EMMA’s world)も注目されています。薬物療法はあくまで治療の補助としての位置づけですが、抗不安薬の中でも依存性の少ないものや、少量の抗うつ薬の有効性が確認されています。患者さんが、困難な環境に対する他責的態度にとどまり続けている場合、そうした行動が得をしない事を自覚し、困難な環境に対処できるようになれば自然に軽快し、病院の役割は少なくなります。