【精神科専門医が解説】「回避型」の恋愛パターンとは? 〜愛着障害の観点から読み解く〜

回避型

最近SNSや恋愛コラムで「回避型」という言葉を目にすることが増えましたね。

「付き合うと冷たくなる」「本音を話してくれない」「距離を詰めようとすると逃げてしまう」——。

そんな恋愛の悩みの背後に、この「回避型」の特徴が潜んでいることも少なくありません。

本記事では、「回避型」と呼ばれる恋愛傾向の背後にある愛着スタイルや

精神医学的診断(回避性パーソナリティ障害・反応性愛着障害)との関連を紐解きつつ、その原因と対処法について解説します。

1. 「回避型」ってどんな人?

「付き合うと冷たくなる」「心を開いてくれない」「近づくと逃げられる」——そんな恋の悩み、ありませんか?

実はそれ、“回避型”愛着スタイルが関係しているかもしれません。

回避型とは、恋愛や人間関係において「心理的距離」を保とうとする人のこと。

親密さを「リスク」と感じてしまい、自分を守るために感情をシャットダウンする傾向があります。

この特徴は、心理学者ボウルビィやエインズワースの「愛着理論」に由来し、愛着スタイルは主に以下の4つに分けられます:

  • 安定型(Secure)

  • 回避型(Avoidant)

  • 不安型(Anxious)

  • 混合型(Fearful-Avoidant)

回避型の人は、幼少期に「感情を表現しても反応がなかった」「依存を拒まれた」といった経験を持ちやすく、

大人になると親密さへの不安や自己開示の難しさに発展することがあるんですよね。

2. 精神医学的背景:診断名との接点

実は、この「回避型」と言われる心理学の言葉は、

精神医学でも近しい疾患概念として使用されることがあります。

特に関連の深い、2つの精神病理について解説します。

■ 回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder)

アメリカの診断基準DSM-5では、社会的評価への恐れから対人関係を避ける傾向があるとされています。

  • 他者からの拒絶への過剰な恐怖

  • 新しい対人関係への極端な警戒

  • 自己否定的な信念

  • 「完全な受容」がないと親密になれない

恋愛関係でも、「傷つくくらいなら最初から距離を置く」という回避行動が見られます。

■ 反応性愛着障害(Reactive Attachment Disorder)

幼少期の深刻なネグレクトなどが原因で生じる障害で、愛着の形成そのものが困難になります。

  • 感情表現の乏しさ

  • 他者との信頼構築の困難さ

  • 社会的関係を回避する傾向

適切な治療がない場合、大人になっても恋愛での回避傾向や対人不信として残ることがあります。

3. なぜ“回避型”になるのか?

主な背景には以下の要因があります:

  • 幼少期の愛着不全(無視、過干渉、不安定な反応)

  • 恋愛トラウマ(裏切り、突然の別れなど)

  • 自己肯定感の低さと拒絶への恐怖

  • 「依存=悪」という家庭文化や価値観

これらが積み重なることで「他者との関わり=危険」という認知が形成され、自立を重視しすぎる対人スタイルが固まっていきます。

5. 自分が回避型かも?対処法は?

  • まずは自己理解から:愛着スタイル診断や書籍、カウンセリングで自分のパターンを知る

  • 感情を少しずつシェア:安心できる相手に、小さなことから自己開示を始める

  • 「依存=悪」を見直す:適度な依存は健全な関係性の一部であると再定義

  • トラウマの整理:必要であれば、心理療法や専門医の力を借りる

実際に、ポジティブな関係性を持った回避型の人は、時間とともに自らの愛着スタイルを変える可能性があるという研究もあります(Stanton et al., 2017)

6. 相手が「回避型」の場合は?

  • 「距離を取るのには理由がある」と理解する

  • 無理に近づこうとせず、安心感のある関係を目指す

  • 相手の不安定さに巻き込まれすぎないよう、境界線を意識

  • 恋愛以外の場面(趣味、仕事)でも信頼関係を築く工夫を

7. まとめ:愛着を知ることは、自分と誰かを救う一歩

「なぜあの人は逃げるのか?」「なぜ自分は親密になるのが怖いのか?」——その謎を解くカギは、愛着スタイルにあります。

恋愛の悩みは、しばしば深い心の傷や生育歴と繋がっています。

自分を責める前に、まずは“背景”を知ってみること。それが、新しい愛し方を見つける第一歩になるかもしれませんよ。

【引用・参考文献】
・Overall, N. C., & Sibley, C. G. (2008). Attachment and attraction toward romantic partners versus relevant alternatives within daily interactions. Personality and Individual Differences, 44(5), 1126–1137.
・Stanton, S. C. E., Campbell, L., & Pink, J. (2017). Benefits of positive relationship experiences for avoidantly attached individuals. Journal of Personality and Social Psychology, 113(4), 568–588.
・Shen, J., & Igoshina, L. (2024). Examining trust issues in romantic relationships: The interplay between anxious and avoidant attachment styles. Applied & Educational Psychology.
・Simpson, J. A. (1990). Influence of attachment styles on romantic relationships. Journal of Personality and Social Psychology, 59(5), 971–980.

更新:2025.7.15

 

>執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

>

 医療法人社団 燈心会
ライトメンタルクリニック
東京都新宿区西早稲田3丁目20-3レガリアタワーレジデンスB1F
TEL 03-6457-6040 FAX 03ー6457-6041
診療日・時間
 月〜金 10:00~13:00、14:00~18:00、19:00~22:00
 土・日 10:00~13:00、14:00~18:00
※土・日の19:00~22:00はカウンセリングのみ
※祝日は原則診療

診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
2.副作用のリスク等から、薬物療法に抵抗感を感じる方にも精神科・心療内科の受診を検討いただけるよう、非薬物療法を充実させています。
3.通院が困難な方のニーズに応えるため、オンライン診療を実施しています。
4.仕切りを設けた待合室により、患者さま同士が極力顔を合わせずに診療を終える事ができます。
このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。

ご予約はこちら
高田馬場院 渋谷本院