過食性障害とは

過食性障害とは

Summary

overview

過食性障害(BED)は、代償行動を伴わない反復的過食を特徴とする摂食障害です。過食後に罪悪感や抑うつを感じ、肥満を伴うことが多いが体型は様々で、うつ病やADHDなどを併発し、思春期以降に多く発症します。

cause

原因としては、心理的・生物学的・社会的要因が複雑に関与します。虐待や自己否定感、感情調整の困難、ストレス対処としての過食、環境要因などが発症に影響すると考えられています。

diagnosis

短時間で大量に食べてしまい自分で抑えられない過食が一定期間繰り返される状態を指します。速く食べる、満腹でも食べ続ける、恥ずかしさから一人で食べるなどの行動がみられ、代償行動や著しい体重減少を伴わないことが特徴です。

treatment

過食性障害の治療は外来での認知行動療法が中心で、心理教育により理解を深め、感情や思考を整理して過食を減らします。薬物療法は補助的で、併存症や衝動性に応じて用いられます。

概要

過食性障害(BED:Binge Eating Disorder)は、反復的な過食エピソードを特徴とする摂食障害の一種です。神経性過食症(いわゆる過食症)と異なり、自己誘発嘔吐や下剤の乱用といった代償行動を伴わない点が大きな特徴です。

この障害では、短時間に大量の食物を摂取し、食行動を自分でコントロールできない感覚を伴います。過食中は満腹であっても食べ続け、過食後には罪悪感や自己嫌悪、抑うつ気分が強く現れます。そのため、過食行動を隠す傾向があり、孤立を深めやすいとされています。

自己評価は必ずしも体重や体型のみに依存しませんが、「食べてしまう自分はだめだ」といった強い自己否定感が特徴的であり、抑うつや不安が慢性的に続く傾向があります。このため、学校や職場での支障、対人関係の回避、引きこもりなどを引き起こすこともあります。

過食性障害では肥満を伴うことが多い一方、標準体重ややせ型でも診断される場合があります。併存しやすい精神疾患としては、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠如・多動症(ADHD)、物質使用障害などが挙げられます。

患者の性別では女性がやや多いものの、男性の割合も比較的高い点が特徴です。発症は思春期後期から成人期に多く、生涯有病率は約1〜3%とされ、神経性過食症よりも一般的な摂食障害と考えられています。

原因

過食性障害の原因は単一ではなく、心理的・生物学的・社会的要因が複雑に関与すると考えられています。

心理的要因としては、幼少期の虐待やネグレクト、情緒的サポートの不足、強い自己否定感や感情調整の困難さなどが指摘されています。

また、ストレスへの対処として「食べることで一時的に気分を和らげる」行動が固定化し、過食が情動調整手段として機能してしまうことがあります。

現代社会における高カロリー食品へのアクセスの容易さ、慢性的ストレス、睡眠不足なども発症リスクを高める要因とされています。

診断

条件Aを満たし、かつ条件Bが3つ以上あてはまる場合に、確定診断となります。なお、過食に関して明らかな苦痛が存在し、平均して3ヶ月以上にわたって少なくとも週1回以上の過食が存在すること、神経性やせ症神経性過食症で説明できないことも診断の条件となります。

【条件A】
①多くの人が同じような状況で、同じくらいの時間に食べる量と比べて、はっきりと多い量の食事を、あるいは短い時間内に食べてしまうこと
②食べることを抑制できない、または食べ物の種類や量を抑制できない感覚がある
【条件B】
①通常よりもずっと速く食べる
②苦しいくらいに満腹になるまで食べる
③身体的に空腹を感じていないときに大量の食物を食べる
④自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため、一人で食べる
⑤後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪悪感を感じる

神経性やせ症や神経性過食症のように、太ることに対する恐怖と自責が強烈であることは共通する病態ですが、過食を認めるものの神経性過食症のような不適切な代償行動を伴わず、また神経性やせ症のような体重減少もないことが特徴です。

治療

過食性障害の治療は、外来治療が中心となります。重篤な身体合併症や自殺リスクが高い場合を除き、入院治療は一般的ではありません。治療の第一選択は認知行動療法(CBT)です。特に摂食障害に特化したCBT(CBT-ED)が推奨されますが、実臨床では一般的な認知行動療法を応用する形で行われることも多いのが現状です。疾患心理教育では、過食が起こるメカニズム、食事制限が過食を悪化させる仕組み、「意志の弱さ」ではなく病的反応であることを丁寧に説明し、自己責任感を軽減します。認知行動療法では、過食前の状況、感情、思考、食事内容を記録し、過食の引き金となるパターンを可視化します。
「嫌な気分=食べるしかない」という自動思考に対して、別の対処行動(代替行動)を増やし、過食に至る確率を下げていきます。ある程度過食頻度が低下した後は、対人関係の問題や慢性的ストレスへの対処を治療の焦点とすることが有効です。

一方、過食性障害に対する薬物療法は補助的治療と位置づけられます。NICEなどのガイドラインでは、心理療法が治療の中心であることが強調されています。抗うつ薬は、過食そのものを直接抑える目的では第一選択とはなりませんが、うつ病や不安障害などの併存症がある場合には有効です。

衝動性が強い場合やADHDを併存する場合には、症状に応じた薬物調整が検討されることもあります。