愛着障害とは

愛着障害とは

1. 概要

愛着障害とは、乳幼児期の発達に必要な対人交流や情動調節の経験ができず、それらに障害が生じたものを意味します。対人関係に過度に警戒、攻撃的ないし抑制的になる反応性アタッチメント障害(RAD)と言われるものと、それとは逆に警戒することなく馴れ馴れしく、誰彼かまわず助けを求め、気を引こうとする脱抑制型対人交流障害(DSED)と言われる二つの臨床像に分類されます。RADは一般人口では1%、DSEDでは2%存在するとされています。幼少期の剥奪的なストレス環境は、生理学的なストレス応答システムのバランスを歪め、睡眠、食欲、排泄などの生理機能のバランスも崩し、成長不全などの身体的な問題も生じさせます。また、脳の成熟にも否定的な影響を与える事がわかっており、記憶や言語表出、実行機能など社会認知に関連する認知機能の抑制が生じます。また、近年では外傷的ストレス暴露後の自己組織化の障害、否定的自己認知、感情の制御困難及び対人関係の困難は「複雑性PTSD」という概念で語られます。

2. 原因

主な原因は病理的な養育環境にあります。私たちは生後6ヶ月から5歳に至るまでの間に、不安な時には養育者に接近し保護を求め(愛着行動)、時には危険を冒して外部を探索し、対人関係を構築します(探索)。このように私たちは愛着行動と探索を繰り返すなかで、情動制御のスキルや「自分は何者なのか」を学習していきます。しかし、安心や刺激、愛情などの基本的な情緒的ニーズが剥奪された環境(心理的・身体的虐待やネグレクト)が持続することで、認知、行動、対人関係の正常な発達が抑制され、対人交流と情動の障害が出現します。ただし、特定の遺伝子疾患でもこのような症状が出現すすることもあり、生物学的な要因の関与も推測されています。

3. 診断

愛着障害は、5歳以前の乳幼児期に病理的な養育状況におかれ、子どもに対人交流と情動の障害が生じ、「特定の状況に限定されず12ヶ月以上社会機能の障害が持続」していることで診断されます。社会機能障害は、先述の反応性アタッチメント障害(RAD)と脱抑制型対人交流障害(DSED)で臨床像が異なります。一般的には愛着パターンが形成され始めるのは生後6から9ヶ月のため、診断は生後9ヶ月を経てからとなり、かつ5歳以前に症状が明らかな場合に診断となります。RADは自閉症スペクトラム障害(ASD)、DSEDは注意欠如・多動症(ADHD)と混同されやすいので鑑別は慎重さを要します。

[反応性アタッチメント障害(RAD)]
※①と②を満たし、かつ③から⑤のうち少なくとも2つを満たすこと。
①苦痛を感じる時でも、その子供はめったに安楽を求めない。
②苦痛を感じる時でも、その子供はめったに、最小限にしか安楽に反応しない。
③他者に対する最小限の対人交流と常同の反応
④制限された陽性の感情
⑤大人の療育者との威嚇的でない交流の間でも、説明できない明らかないらだたしさ、悲しみ、または恐怖のエピソードがある。

[脱抑制型対人交流障害(DSED)]
※①から④のうち少なくとも2つを満たすこと。
①見慣れない大人に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
②過度に慣れ慣れしい言語的または身体的行動
③不慣れな状況であっても、遠くに離れて行った後に大人の療育者を振り返って確認することの減少または欠如
④最小限に、または何のためらいもなく見慣れない大人についていこうとする

4. 治療

適切な養育環境を提供し、かつ養育者にも介入を行います。里親療育など、高い感受性と安定性を備えた愛着対象と養育環境を提供することで、予測可能性、自己制御感の経験が得られ、対人関係の問題対処能力が上がることが期待されます。また、子供のプレイセラピー、親の心理教育などの治療設定を行い、療育者と子供の肯定的な相互作用を良化させ、子供にとっての安全が保障され、探索行動が承認されるように働きかけます。具体的な養育者への介入としては、子供の相互作用をプレイセッションで記録し、ビデオフィードバックなどで治療者ともに観察し、二者間の肯定的なやりとりに注目してもらう方法などがあります。養育者の剥奪・虐待などの養育体験をもつことも多く、養育者を対象とした心理療法も有効です。具体的な子供への介入としては、個別のプレイセラピーや、指示やルールを視覚的に提示し、報酬、ペナルティー、タイムアウトなど因果関係を明示した対応を行い、刺激統制を行うこともあります。年長児では認知行動療法をはじめとした心理教育的アプローチも有効性が期待できます。また、子供の発達障害の傾向評価の評価を行い、有効な介入や環境調整を行うことも重要です。DSEDの場合や、5歳を超えても治療介入されていない場合、その後の介入によっても症状は改善しにくいとされ、早期の介入が重要とされます。学齢期以降は、養育者に対する支配的ー懲罰的あるいは過度に服従的な世話役的な行動に推移する事が多いです。また、学齢期・思春期以降に精神医学的疾患の発症リスク要因となり、特に多い併存疾患はADHD、反抗挑発症、素行症、強迫症双極性障害うつ病などがあります。

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診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
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