運動障害(MD)とは

運動障害(MD)とは

1. 概要

運動障害には、生活年齢、または与えられる学習や機会から見込まれるよりも明確に不器用さがあり、生活に支障をきたす発達性協調運動症 、手をばたつかせる、体を揺するなど無目的な運動を繰り返す常同運動症、突発的、急速な運動や発声を繰り返すチック症があります。[発達性協調運動症]協調運動とは、視知覚、触覚、固有覚、位置覚など様々な感覚入力をまとめあげ、運動制御として出力する一連の脳機能のことです。スポーツに限らず、嚥下・構音からバランス維持までほとんどの日常生活に必要とされます。発達性協調運動症では、いわゆる不器用で生活に支障が出るレベル(ボタンをかける、はさみを使うなどにも支障あり)を言います。小児(5–11歳)の5–6%に存在し男児で多いと言われ、5から7割が青年期に持ち越します。成人期に車の運転や機械操作の習得、メモをとることなどが苦手で職業生活に影響することがあります。発達障害との関連性が指摘されており、ADHDの30〜50%、限局性学習症の50%、特異的言語障害の30%に併存します。ASDに至っては80%と高い併存率が指摘されています。[常同運動症]発達早期に発症し、運動・行動により社会的、学業的、生活に支障をきたす状態と定義されており、頭を打ち付けたり、自分の体を噛むなどの自傷行為も含まれます。多くは3歳までに、症例の80%は2歳までに発症すると言われます。発生頻度は3〜4%とされます。ASDや知的発達症(ID)など、他の疾患に伴うものを2次性常同運動症といい、2次性常同運動症ではASDに併存することが多く(44%)、他にはADHDの30%、強迫症の10%に2次性常同運動症が併存するとされます。また、知的障害(ID)があると、4-16%に常同運動を有すると言われています。発達障害のない児童にもみられますが、発達とともに消失していく傾向がありあます。知的障害IDがあると、何年も続くことがあり、慢性化することもあります。[チック症]心理的または身体的状態に伴い変化することがあり、不安緊張、緊張が解けたとき、疲労時、興奮している時などに悪化しやすいようです。一定の緊張度を保つ時、集中して作業をしている時は減少する傾向があります。5から10人に1人が一時的に発症します。なお、およそ1%弱の有病率であり、男性・4〜6歳時にチックを発症しやすとされます。10歳以上になると、「やらずにはいられない」という抵抗し難い感覚(前駆衝動)を認識することが多くなり、10〜12歳で症状がピークになりやすいとされます。チックの多くは1年以内に軽快、慢性化しても20歳までに軽快に転じる症例が2/3以上であるとされています。

2. 原因

発達性協調運動症においては、胎生期のアルコール暴露、早産児、低出生体重児が関連するとされています。常同運動症においては、覚醒異常や運動制御障害に関する仮説があるが、まだ明確ではない点も多いです。常同運動症をもつこどもの脳活動を計測した結果、自発的な運動では異なるメカニズムで生じていることが示唆されています。その一方で環境要因も影響すると考えられており、社会的に孤立して刺激が乏しい環境などで、自己刺激行動として生起する、または刺激か過剰な環境で常同運動に没頭することでノイズや不安を軽減する機能として生起するものであると考えられています。また、チック症では、遺伝要因、環境要因の関与が想定されています。病態生理学的には、皮質–線条体–視床-皮質回路の異常、ドパミン系の過活動を含めた神経伝達物質の異常も示唆されていますが、明確な原因は判明していません。

3. 診断

[発達性協調運動症]
・IQ70以下は除外した上で、DCDQやMOQ-T、M–ABC2などの神経心理検査で2SD以下、日常生活などに明らかな支障をきたしていること。
[常同運動]
・反復し、駆り立てられているように見え、かつ外見上無目的な運動行為があり、生活に支障をきたしていること。
・チックや強迫性障害などの他の精神疾患では説明できず、物質関連障害などで説明できない。チックと比べると全身に生じやすく、律動的で無目的であること。
[チック症]
・突発的、急速、反復性、非律動性の運動または発声が、1年以上持続している。18歳以前に発症する場合、持続時間が1年未満であれば、暫定的にチック症となる。持続期間が1年以上であれば、持続性運動または音声チック症となり、多彩な運動チックおよび1つ以上の音声チックを有すると、トゥレット症候群となる(ICD-11では、運動チックも音声チックも1つ以上でかまわないとされる)。

4. 治療

[発達性協調運動症]
非薬物療法として、身体機能指向型(筋トレ、感覚統合療法)、活動指向型・参加指向型アプローチ(NTT、CO-OP)があります。スマホやタブレットによる音声入力、デジカメやOCRソフトの使用、ICカードなどの代替手段の利用も合理的配慮として重要です。薬物療法としては、抗ADHD薬の有効性(メチルフェニデート、アトモキセチン)が示唆されております。メチルフェニデートの効果は比較的明確に協調運動を改善させる効果が示されています。
[常同運動症]
薬物療法や行動的介入が用いられていますが、確立された治療法はありません。環境調整を含めた心理社会的治療が介入の中心となっています。薬物療法では、メタアナリシスレベルで有効性が示された薬剤はありませんが、抗精神病薬や抗うつ薬、抗てんかん薬などが使われています。自閉症スペクトラム障害(ASD)合併例ではその有効性が個々の研究で示唆されています。一方行動的介入では、①環境中の刺激を撤去あるいは提示する、②常同運動に替わる望ましい行動を強化する、③常同運動に随伴して倫理的範囲内で負荷をかけることで直接常同運動を減らす、などの介入が推奨されています。
[チック症]
家族ガイダンスや心理教育、環境調整がメインとなり、軽症例や併存疾患がない例ではこれだけで改善が期待できます。より積極的に治療するなら認知行動療法(CBT)を行います。CBTはハビットリバーサルと呼ばれる手法が中心です。ハビットリバーサルは、本人が「やらずにはいられない」という前駆衝動に気づき、チックをしそうになったらチックと同時には行えずより目立たない行動(拮抗行動)を行ってチックをしないように練習するものです。また、チックを維持する方向に作用している要因を分析し、調整する機能分析や、不安を軽減させてチックが起こりにくくするリラクゼション法なども用いられます。
また、段階的に恐怖になれていく手法である暴露反応妨害法(エクスポージャー)もチックに対して行われています。重症例では薬物療法も行われますが、抗精神病薬を中心に、抗ADHD薬、降圧薬、漢方薬などが試される傾向にあります。家族ガイダンスでは、チック症と上手く付き合っていけるにはどうすればよいか検討し、チックも含めて本人であること、チックは親の育て方や本人の性格によって起こるものではないことを知ってもらう事が重要です。また、チックは本人、周囲ともに心配すると増悪する傾向にあるため、変化しやすいチックの症状にとらわれず、本人の特徴の一つとして受容するよう促します。

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診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
2.副作用のリスク等から、薬物療法に抵抗感を感じる方にも精神科・心療内科の受診を検討いただけるよう、非薬物療法を充実させています。
3.通院が困難な方のニーズに応えるため、オンライン診療を実施しています。
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このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。