選択性緘黙とは

選択性緘黙(場面緘黙症)とは

1. 概要

「緘黙(かんもく)」とは、喋らない、無言である、という意味です。選択性緘黙(場面緘黙症)とは、話す能力に問題がなく家庭では普通に話せるのに、幼稚園や保育園、学校など話す事が求められる特定の場面や状況では話す事ができない状態を指します。しかし実際には、言語発達に遅れを有する事も多いので、評価が必要となります。見ず知らずの他者に対しては、発話なく、身を硬くしてじっとしている事が多いです。発話の困難さ以外にも、非言語的コミュニケーションやトイレ、飲水、摂食などの健康を維持する行動が困難な子もおり、臨床像は様々です。選択性緘黙には、3つの分類があります。

①社会化欲求型
家族外では緘黙ですが、家族内ではおしゃべりで家庭内外で差があるタイプです。緘黙は自己の立場を維持しようとする自己主張の意味をもちます。性格、気質が関係しており、今後の経験によって暇以前が期待されるため、予後は良好です。
②社会化意欲薄弱型
家族以外にコミュニケーションを求める意欲に乏しいですが、受動的には求めるタイプです。家庭内でも無口で、生活行動全般に意欲が乏しいです。周囲の流れに身を委ねて行動することが目立ち、家庭内外を問わず自己主張に欠けていることが特徴的なタイプです。家族間のコミュニケーションの問題や、精神疾患が隠れていることもあります。
③社会化拒否型
家庭以外にコミュニケーションを拒絶するかの如く求めないタイプです。家庭内でも選択的に沈黙することが多いです。父親をさけることが多く、母親との強い結合がみられます。社会化意欲薄弱型と同じく、家族要因や精神疾患が隠れている事も多いです。統合失調症に移行するケースもあります。

発症率は0.1〜0.8%であり、男女比2:3程度で女性発症者が多いことがわかっています。有病率は0.1〜0.5%の範囲です。80%は幼児期に発症し、通常は3歳頃から症状が出現し始めますが、気付かれるのは6−8歳頃と遅くなりがちです。困難さをアピールできず、受診までの期間が長く、支援や介入が遅れがちです。言語、コミュニケーション障害が併存する確率が50%程度あります。保育園、幼稚園への入園が引き金となって発症する事が多いとされます。また、他の精神医学的疾患が併存しやすく、自閉症スペクトラム障害(ASD)併存は10〜40%台、不安障害の併存率は74.1%です。成人期ではうつ病の合併が多くみられます。精神発達遅滞の併存は、10.5%程度でIQ50〜70程度の軽症例が多いです。

2. 原因

元来ある不安気質、新しいも行動抑制的気質(新しいものに敏感で不安を感じる特性)など、性格特性が背景にあり、社交不安症と類似の病態が考えられています。また、遺伝的要因も想定されています。話すことを期待される場面で、恐怖を避けるため発語しない事を学習すると、日頃話さないがために、話すとより注目を浴びてしまい、症状が強化されてしまいます。緘黙により不安緊張が緩和することにより、悪循環が固定化されていきます。

3. 診断

以下の5つすべてを満たす場合、確定診断となります。

①他の状況では話せるのに、話す事が期待されている特定の社会的状況で話す事が一貫してできない(全く話せない、という意味ではなく、普段通りに話せないという意味)。
②学業・職業上の成績、対人的コミュニケーションを妨げている
③少なくとも1ヶ月以上持続している(環境の変化後の1ヶ月に限定されない)
④話し言葉の知識や楽しさが不足していることに起因するものではない
⑤ASDやコミュニケーション症、統合失調症やその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない

4. 治療

治療としては、薬物療法と精神療法があります。しかし、いずれも著効するとは言い難い結果となっています。薬物療法としては、抗うつ薬であるSSRIが有用視されていましたが、効果と有害事象を検討した結果、現状ではほとんど用いられておらず、不安が強い場合のみ処方が検討されます。精神療法としては、年齢や症状により力動的精神療法、認知行動療法、遊戯療法など様々な技法が用いられます。患児が慣れるまで、最初は筆談、絵画や箱庭などの非言語的手法が用いられる事が多いです(ただし、非言語的手法によっても身を硬くしている場合は、治療関係の形成は極めて難しく、治療は難渋します)。また、環境調整も重要です。家族や学校などと連携して、患者の環境にアプローチし、必要に応じて病弱対象の特別支援学校への転校も検討します。また、親の不安軽減や教師との協力などを通して、発症予防的な関わりや発症後早期の支援が必要です。周囲の適切な理解が不安を軽減させ、コミュニケーション欲求を高めてスモールステップで自信をつけて行くよう働きかけます。低年齢では改善しやすいですが、早期に適切な介入がなければ、思春期以降の介入では症状が長く続く例が多いです。10歳頃までに改善しない場合は治癒しにくく、社会性の獲得の遅れや対人恐怖、社交不安などの症状を継続して持ち、社会生活に影響を及ぼす可能性が高まります。寛解率は、30−100%と幅があります。フォローアップ期間が10年を超えると、寛解率が良くなる傾向があると報告されていますので、一般的には長い目で治療的関わりを継続することが大切です。「かんもくネット」、「日本緘黙研究会」の活動には、成人期の当事者、家族が多く参加しています。選択性緘黙の33人の13年後の調査では、著明改善24.2%、寛解57.6%、軽度改善18.2%、悪化・不変0%でした。これらのデータは、ほぼ全員がある程度の改善を得る可能性が高いことを示唆しますが、一方で成人後も何かしら他の不安障害を持ち、対人交流の機会を制限する事が多かったことを報告しており、やはり発症予防、早期介入の重要性が高い疾患と位置付けられます。

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診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
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