限局性学習症(学習障害:LD)とは
限局性学習症(学習障害:LD)とは
1. 概要
知的水準は正常域にあり、社会文化的な機会も与えられながら、一般教育では読み書き能力や計算能力といった学習能力に困難を認める状態をいいます。ASDやADHDとともに、発達障害にカテゴライズされます。読字、計算、書字の障害など多様な障害が認められます。学習領域にわたる限局性学習症の有病率は、学齢期の児童においては5〜15%程度と考えられています。有病率には性差があり、4〜7:1で男児に多いと考えられています。多くは小学校の年代で診断されることになる一方で、怠学として捉えられているケースもあります。学習障害の存在が理解されず、適切な教育支援が得られない場合には、当然学習上の問題が顕著になっていき、併せて徐々に不安や反抗性を高めていくことになり、学習上の問題より情緒の問題が中心になってくる事も多いです。経過とともに、それらの対応も必要となる局面もあります。有効な介入がなされた場合でも学習領域における苦手さは存在し続けることが多く、本人がどれをどのように受け止め、それを回避、あるいは対処する方法論を確立していくかが重要です。ASD、ADHDの併存もしばしば認められます。
2. 原因
中枢神経における認知機能障害が基盤に存在していると考えられており、大半は生来的な要因で、遺伝性もあると理解されています。病態としては聴覚処理障害、大細胞系機能障害、小脳機能障害、実行機能やワーキングメモリの障害、不注意などが報告されており、臨床的に様々な症状を呈すように、個々の特性は多様とされます。例えば読み書きの能力に絞ってみても、読む、聴くという言語入力に始まり、書く、話すという出力に至るまで、感覚処理、作動記憶、情報分析、単語の意味の辞書利用、文字や音韻の再生、運動器官への指令など、様々な中枢機能を用いることになり、そのいずれかが障害されていると症状が出現することになります。
3. 診断
単語を正確かつ流暢に読むこと、読解力、書字表出および綴字、計算、数学的推理などの基本的な学業的技能を学習する事に幼少期から困難を生じており、その上で学習困難をきたし得る視力・聴力障害、身体障害、知的能力障害がないことが診断の条件となります。具体的には、下記を全て満たすことになります。
①学習することの持続的困難さが存在していること
②成績がその年齢より十分に低いこと
③幼少期からその特徴を認めること
④その困難が知的障害、視覚障害、聴覚障害、あるいは情緒障害によるものではないこと
また、能力の偏りや言語能力を捉えるため、WAIS、SCTAW(標準抽象語理解力検査)などの心理検査や、 与えられた教育機会の確認、成績表なども参考になります。
4. 治療
学習困難による患者の困り感に気づき、その患者の教育的ニーズに適した支援や指導、環境調整が行われるための体制づくりをすることが最も重要です。家族の治療同意がなければ、学校や関係機関と連携することも必要です。板書の写し書きの代わりに写真を撮ったり、板書と同じプリントを配布したり、漢字の書字を免除したり、問題文を読み上げるなどの合理的配慮も、モチベーションの維持には有効とされます。他の心理社会的治療としては、言語療法や作業療法を加える。読字障害に対しては音韻に分けて読む訓練を重ねたり、眼球運動の訓練を通して改善を図るもの、苦手な学習を電子機器を用いて代替しようとする試みなどが検討されています。他の発達障害と同様、ペアレントトレーニングも重要です。また、ADHDや不眠症の薬物療法により、書字、読字、計算などの能力が改善することもあるため、ADHDや睡眠障害が併存していれば、その治療を行います。