抜毛症とは
抜毛症とは
1. 概要
抜毛症は、「やめようとしているにも関わらず、自分の体毛を繰り返し引き抜き、社会生活上明らかな障害が生じても、なお抜毛がやめられない」病態です。ペットや人形、絨毯やセーターも抜毛の対象になります。基本的には抜毛を周囲に隠しがちです。抜毛直前の緊張感や抜毛後の満足感、開放感を伴うことがありますが、必ずしも抜毛行為を意識していないこともあります。稀に抜いた毛を食べてしまい、胃毛石を生じることもあります。有病率は0.5–2%(生涯有病率は0.6%)であり、性差は1:4で女性に多い病態です。好発年齢は幼児期と思春期に多いのですが、基本的に早発例の方が予後が良く、思春期、青年期発症になると他の精神医学的疾患の併存も多く、難治になりがちです。精神疾患の合併は10代の患者の40%に認められ、不安障害、気分障害、ADHDが多いことがわかっています。
2. 原因
現在原因は詳細不明ですが、遺伝、環境、心理が複雑に絡む疾患と考えられています。遺伝学的には、双子研究の結果から、遺伝寄与率は76.2%であることが分かっています。また、神経学的基盤としては強迫性障害に似た異常を想定する説が有力です。また、心理学的な要因としては白髪、枝毛などのイレギュラーな毛髪や、退屈、葛藤、寂しさ、攻撃性、不満などのネガティブな感情が抜毛の原因になることがあります。
3. 診断
抜毛症は、下記の①から③の診断基準を満たし、他の身体的疾患ないし精神医学的疾患で説明できない時に診断されます。
①毛髪を抜きたいという衝動に抵抗する事に繰り返し失敗し、毛髪を著名に喪失している
②毛髪を抜きたい衝動に駆られ、その前に緊張とその後の開放感を生じる
③それ以前には皮膚の炎症が存在しない、またその行為は妄想や幻覚に対する反応ではない事。
抜毛症はあくまで症状レベルの診断名であり、背景にある精神病理、脳の機能異常がないか、見定める必要があります。
4. 治療
分類
特徴
推奨治療
反応型
明らかな誘因の存在
原則として乳幼児期の発症
治療反応性は良好
家族療法
遊戯療法
行動療法(反応妨害法)
神経症型
性格の偏倚
家庭内の環境不全
原則として学童期・前青年期の発症
治療には一定期間かかる
治療の枠が守られる事が多い
遊戯療法
家族療法
行動療法(習慣逆転法、セルフモニタリング)
薬物療法
パーソナリティ障害型
対人関係の著しい障害
自己破壊的行動や思考
片親不在、家族の精神疾患
青年期前期以降の発症
年単位で長期に渡ることが多い
個人精神療法
行動療法(習慣逆転法、セルフモニタリング)
家族療法
薬物療法
時に入院治療
分類
特徴
推奨される治療
反応型
明らかな誘因の存在
原則として乳幼児期の発症
治療反応性は良好
家族療法
遊戯療法
行動療法(反応妨害法)
神経症型
性格の偏倚
家庭内の環境不全
原則として学童期・前青年期の発症
治療には一定期間かかる
治療の枠が守られる事が多い
遊戯療法
家族療法
行動療法(習慣逆転法、セルフモニタリング)
薬物療法
パーソナリティ障害型
対人関係の著しい障害
自己破壊的行動や思考
片親不在、家族の精神疾患
青年期前期以降の発症
年単位で長期に渡ることが多い