TMSで精神疾患は「治らない」…?
皆さん、お加減どうですか?
どうも。日中診療だろうが夜間診療だろうが「いつも診る院長」の清水です。
今日は、切れ味鋭い話題を。
それは、TMS(経頭蓋磁気刺激療法)の闇についてです。
TMSとは?
TMSは、これまで精神科・心療内科での治療の王道だった薬物療法に代わる、
新しい治療法の1つです。
特殊なコイルに電流を流し、磁場を発生させることで、
脳内の特定部位に電流を流します。
すると神経線維の結びつきが柔軟になり(神経可塑性)、
その後神経栄養因子等々の作用も加わって神経伝達のバランスが整うのだとされています。
主としてうつ状態に使われるのですが、
薬物療法より全身の副作用が少なく、
それでいて抗うつ作用は同等以上と言われ、期待されています。
日本では難治性のうつ病に対して保険適応されたこともあり、
その効果はお墨付きと言えるでしょう。
現時点ではうつ病や双極性障害をはじめ、
強迫性障害、外傷性ストレス障害(PTSD)、不安障害、睡眠障害に対するエビデンスも蓄積しつつあります。
TMS治療を示す言葉の中にはrTMS、iTBSなど様々な言葉がありますが、
それぞれ治療のプロトコールは異なるものの、大枠は同じカテゴリーだと理解していただければよいです。
TMSの闇。
さあ。この新しい治療。まだまだ難治性うつにしか適応はありません。
それはつまり、他への治療は自由診療になるということ。
そして自由診療ということは、治療の価値(値段)を自由に医療機関側が設定できるということです。
そして真の問題は、
この治療であたかも精神疾患が「治る(治癒する)」と営業をかけるDrがいること。
治るわけねぇ〜だろが!こんっバカちんがぁあ!!
一般的にTMSの効果は4から12ヶ月と言われています。急性期TMS治療を終えた薬剤抵抗性うつ病患者を1年間フォローしたところ、寛解または奏功した患者のうち37.5%が奏功基準を満たさなかったという報告もあります(これでもすごい方なんだけど…!!)。
精神疾患は未だ、完全に治癒可能と言い切れるものは存在せず、いつでも再発のリスクと隣り合わせなのです。(そんなこと言い出すと医学的疾患のうち、完全に治るのは外傷か感染症しかない)。
極め付けは、多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害が[治る]として営業をかけているDrがいること。
・・・・・・・・・?
確かに、衝動制御や攻撃性、抑うつが改善するという報告はあります。
ただし、その文献さえも十分な証拠が蓄積したとは言えないもの。
まして、効果がどれほど持続するか検証した報告など、到底エビデンスの蓄積とは言い難い。
そもそも、ADHDの原因とされているドパミントランスポーターの遺伝子異常…
ASDの原因とされているAUTS2遺伝子の異常…
こんなものがTMSで「治る」ことはあるのでしょうか?
医学的見地からは、到底無理があると言わざるを得ません。
例えるなら、暴走運転する自動車に人間が突っ込んで止めようとするようなもの。
暴走車は、司令塔である運転者を止めなければとまりません。
TMSを受ける際は、慎重に
以上を踏まえて、慎重にDrと話してみて下さい。
営業のことしか考えていないDrであれば、
「TMS受ければ万事解決!治る!」みたいなニュアンスで勝負してきます。
今は白衣を着ていても、完全に信用ならない時代です。。。泣
患者の希望につけこんで、専門知識であるために明確に詐欺と言えないところを、
上手に突いてきます。
TMS以外にも、過剰に広告する自由診療にはご注意を。
いかがでしたでしょうか?
今日は、精神医療に蔓延る、TMSの闇についてのお話でした。
当院はちゃんとありのままのデータを伝えた上で、tDCSを勧めますのでそこはご安心ください!
(そうなると、実際積極的に勧められる人は多くないです・・・😅)
それでは皆さん、お大事に。
【引用・参考文献】
・Samuel J Westwood et al, Noninvasive brain stimulation in children and adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: a systematic review and meta-analysis, ・David L Dunner et al. A multisite, naturalistic, observational study of transcranial magnetic stimulation for patients with pharmacoresistant major depressive disorder: durability of benefit over a 1-year follow-up period. The Journal of clinical psychiatry 2014Dec01 Vol. 75 issue(12).
更新:2022.7.13