認知行動療法(CBT)をセルフで②。【行動活性化(BA)】

認知行動療法ー行動活性化ー

 

みなさん、お加減どうですか?

いつも診る院長の、清水です。

今日は、自分で試せる認知行動療法(CBT)のスキル「行動活性化(BA)」について解説します。

そもそもCBTって?という方は、是非、以前のコラムを見て下さいね!

 

単純かつ、有効性が高いスキル

行動活性化(BA)は、behavioural activationの略です。

コストも要せず、簡便で、訓練を受けた専門家でなくてもできる事がメリットです。

行動活性化は、広い意味でCBTの中の1つのスキルという位置付けでありながら、

とある信頼のある文献によると、うつ病に対する効果は、

抗うつ薬と効果が同等、

複数のセッションを必要とする、ベーシックなCBTと比較して有意差ないという報告もあるくらいです。

 

簡便かつ、有効性が高いという方法ということですね。

さて、そんなBAですが、どんな内容かというと、

 

シンプルに、

 

活動量を増やすイメージ

 

活動量を増やしましょう!ウェェエイ!!という精神療法の一つですね。

 

 

いや、まってくれと。

できるわけないやないか、と。

 

うつ病は、休んだ方がいいんじゃないですか?という疑問が浮かんだ方、

 

それ、大正解です。

 

確かに、急性期は休んだ方がいいと言われています。

しかし。

ずっと休んだままでいてくださいね、という意味ではないのです。

 

嫌な事を避けて、休んでください 

という意味であって、

「何もしないで下さい。好きなことも、やらないでください」

という意味ではないのです。

 

うつ状態では、意欲も低下してしまうので、

なかなか好きなこともやれなくなるのですが、

逆説的に、疲れない範囲で好きなことをやってください、というのが

行動活性化(BA)の考えなのです。

 

よくよく考えたら、うつ病と診断されたサラリーマンが、

ずっと休職してしまったら、どうやって職場復帰するんだ?って不安になりますもんね。

 

それではこれから、行動活性化の理屈とその具体的なやり方について、

説明していきますね。

 

行動を変えて感情や思考、身体反応に対応することを重視

ランニング

さて、認知行動療法の考え方としては、

思考、感情、行動、身体反応の4つの軸が、

互いに影響していると考えるんでしたね。

ここで以前投稿したコラム、認知行動療法(CBTとは?)で使った、

会社員のAさんの例えを思い出してみてください。

Aさんは、多忙な業務で疲弊し、会社でのミスが増えてうつ状態が悪化し、

病院でうつ病と診断されてしまいました。

倦怠感と意欲の低下がひどく、趣味のランニングもできなくなっている状態でした。

このAさんの場合は、以下のような悪循環が考えられます。

感情:抑うつ気分、意欲低下
        ↓
思考:「ランニングなんかしても、どうせ楽しめないだろう」
        ↓
行動:自宅で引きこもっている
        ↓
思考:「楽しいことがない」
        ↓
感情:抑うつ気分、意欲低下が悪化

あるいは、


身体反応:不眠、倦怠感

       ↓
思考:「体がだるくて、動けない」
       ↓
行動:自宅で引きこもっている
       ↓
思考:「楽しいことがない」
       ↓
感情:抑うつ気分、意欲低下が悪化

 

…このような負の連鎖が起きている可能性、

あると思いませんか?

 

うつの症状であるうつ気分や倦怠感があることによって、

さらにうつを助長する行動をとってしまっているんですね。

さて、不快な感情や身体反応、つまり意欲低下や倦怠感を

軌道修正するには、思考か行動を変えるしかない、というのが認知行動療法(CBT)の考え方でした。

 

行動活性化(BA)は、このうち、行動を変えるほうを重視します。

 

認知行動療法【行動活性化(BA)】の具体的な方法

認知行動療法(行動活性化)における行動記録表

では、どのように行動を変えるか。

行動するといっても、気分がより下がったり、倦怠感が強まったりする行動では

本末転倒ですから、自分が何をしているときに気分が上がるか、

それを把握しておく必要があります。

その具体的な方法としては、行動記録表があります。
(最近では、スマホからアプリでもできます。他にも、「行動記録表」で検索すると色々なアプリが出てきます)。

ダウンロードしていただければわかると思うのですが、

結構めんどくさそうですね…?

こんなの面倒でできない!というアナタは、

何も完璧に仕上げる必要はなく、

書けるところだけ書くのでも意味がありますよ。

行動記録表を書いていくと、

自分の気分が時間で変わっていくのか、あるいは行動によって左右されているのか、

一定の傾向が見えてくる事もあると思います。そうすると、

気分を上げるのに役立つ行動がわかったり、

楽しくもなければ重要でもない活動に時間を費やしていることが

浮き彫りになるかもしれません。

 

御作法的には、数週間ほど行動記録表をつけて観察した後、

新たな活動の計画に着手します。

その際、最終的には何をしたいのか、現実的には何ができるのかをすり合わせて、

ゴールを設定した上で、

有意義かつ楽しめる活動を、少しずつ、現実的なペースで増やしていきます。

その際、長い目で見ると体調を悪化させてしまうような活動は、避けてくださいね。

加えて、約に立たない行動は減らしていきます。

 

そもそも身体を動かすこと自体が抗うつ効果がある事がわかっていて、

5-10分程度の散歩でも抑うつ気分を緩和できる事がわかっています。

 

行動によって、気分がどれくらいマシになったのか、

気分がマシになったことで、活動量がどれくらい変化したのか、

適宜、自分でフィードバックすることが大切です。

 

無理をしすぎて本末転倒にならないよう、

少しずつでも行動量を増やしていくことで気分が上がり、

意欲低下や抑うつ気分が改善し、さらに行動できるようになるという、

理想的な循環がまわると良いですね。

 

あ、もちろん行動記録表を書かなくても、気分を上げる事ができる!

という方はそれでもいいですよ。

大事なことは、この行動活性化(BA)によって、

気分が変わるんだという事を実感してほしい、という事なんです。

BAは、他のスキルを理解するためのより基本的な技法なので

是非、行動活性化(BA)をマスターして、

次のスキル【認知再構成法】を習得するための準備をしておいて下さい!

 

それではみなさん、お大事に。

 

【引用・参考文献】
・David A Richards,et al. Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): a randomised, controlled, non-inferiority trial.
Lancet (London, England). 2016 Aug 27;388(10047);871-80. doi: 10.1016/S0140-6736(16)31140-0
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社

更新:2022.1.22

 

執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医
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