メンタルヘルスコラム

認知再構成法とは?自分でできるCBTのやり方・具体例を精神科医が解説

  • 更新日:2026.09.09
  • 公開日:2025.08.28

私たちは出来事そのものだけでなく、その出来事をどう受け止めたかによって、気分が大きく左右されます。

今回ご紹介する認知再構成法は、認知行動療法(CBT)で用いられる代表的な方法の一つです。

認知行動療法(CBT)の仕組みや当院での治療についてはこちらをご覧ください。

この記事では、認知再構成法の考え方と、自分で取り組むときの具体的な手順を例を使って解説します。

※この記事は「認知行動療法セルフ実践シリーズ③」です。

認知再構成法とは

認知再構成法とは、つらい気分につながっている考えに気づき、その考えがどの程度事実に沿っているのかを検討し、別の見方ができないか考えていく方法です。

大切なのは、ネガティブな考えを無理にポジティブな考えへ変えることではありません。

「本当にそう言い切れるか?」「そう考える根拠は何か?」「反対の事実はないか?」

と一度立ち止まり、自分が納得できる、よりバランスの取れた考え方を探すことが目的です。

CBTでは、このように出来事に対する捉え方を整理することで、感情や行動にも変化が生まれることを目指します。

自動思考とは|事実と解釈を分ける

認知再構成法を行ううえで、まず知っておきたいのが「自動思考」です。

突然ですが、こちらの画像をご覧ください。

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ここで、半分まで水が入ったグラスを見て、「まだ半分ある」と思う人もいれば、「もう半分しかない」と思う人もいるでしょう。

でも、ここで事実として確認できるのは、「グラスに水が半分入っている」ということです。

「まだある」「もうない」は、その事実に対する解釈です。

意識して考えようとしなくても自然に浮かんでくる考えを、CBTでは「自動思考」と呼んでいます。

不安や落ち込みが強いと、一つの解釈だけを事実のように感じてしまうことがあります。

そこで認知再構成法では、「今考えていること」と「実際に確認できる事実」をいったん分けて考えます。

認知再構成法のやり方|5つのステップ

ここからは、会社員Aさんの例で実際にやってみましょう。

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Aさんは仕事が忙しくなってミスが増え、上司から注意を受けました。その後、

「自分は会社の役に立っていない」

という考えが繰り返し浮かぶようになり、気分も落ち込んでいます。

STEP1|状況・感情・自動思考を書き出す

まず、「何が起こったか」と「そのとき何を考えたか」を分けます。

頭の中だけで考えるより、紙やスマートフォンなどに書き出した方が、自分の考えを少し離れて見やすくなります。

Aさんの例では、下記のような状況です。

状況:上司から「最近ミスが多い」と注意された。

感情:落ち込み、自責感、不安。

自動思考:「自分は会社の役に立っていない」

STEP2|その考えをどのくらい信じているか確認する

次に、その自動思考をどの程度信じているか、0~100%で考えてみます。

Aさんの場合、「自分は会社の役に立っていない」 80%としました。

なお、この数字に正解はありません。あとで考え直したときに、自分の感じ方がどの程度変化したか比較するための目安です。

STEP3|自動思考を支持する事実を探す

まずは、その考えを支持する事実を考えます。

Aさんの場合、

自動思考を支持する事実:「上司から最近ミスが多いと注意された」

が挙げられました。

ここでは、「自分は役立たずだから」などといった主観的な解釈ではなく、できるだけ実際に確認できる事実を挙げることがポイントです。

STEP4|別の見方を支持する事実も探す

次に、自動思考とは異なる見方につながる情報がないか探します。

Aさんには、次のような事実もあったとします。

・以前は仕事の実績を評価されていた
・上司から復帰を期待する言葉をかけられていた
・同僚から仕事を手伝ったことを感謝されていた

最初は「自分は役に立っていない」という情報ばかりに注意が向いていましたが、振り返ってみると、それだけでは説明できない事実もあります。

こんなときは、

他の人なら、自分に何と言ってくれるんだろう?(他人の視点)

過去はどうだったかな?(過去の実績)

と、自分に問いかけてみると、別の視点を見つけやすくなります。

このように、質問を使って一つの考えを検討していく方法が、CBTで用いられるソクラテス式質問法です。

STEP5|バランスの取れた考えを作る

最後に、ここまで確認した情報を両方含めた考え方を作ります。

Aさんの場合、

「最近は体調の影響もあってミスが増えている。ただ、これまで評価されてきた仕事もあり、今の状態だけで『会社の役に立っていない』と決めつける必要はなさそうだ」

と考えることができました。

これが「バランス思考」です。

楽観的な考えを作る必要はありません。

自動思考よりも、実際の状況を幅広く説明でき、自分自身が納得できる考えになっているかが重要です。

最後に、

「自分は会社の役に立っていない」

という最初の考えを、今は何%くらい信じているか確認します。

同時に、落ち込みや不安がどう変化したかも振り返ってみましょう。

自動思考を完全に否定できなくても構いません。最初より少し距離を取って見られるようになれば、それも認知再構成法による変化の一つです。

認知再構成法がうまくいかないとき

これまでのプロセスが難しい!と思った方、まったく問題ありません。

認知再構成法は、文章だけでは手順をつかみにくいことがあります。千葉大学大学院医学研究院監修の「ここれん」では、質問に沿って認知をとらえ直す練習を体験できます。

また、認知再構成法には弱点があります。

それは、自動思考が客観的に正しい時です。

例えば、

「収入が減り、このままでは生活費が不足する」

という考えが、実際の収支からみても現実的だったとします。

この場合、

「きっと生活には困らない」

と考え直しても、説得力はありません。

むしろ必要なのは、

「では何ができるか」

を考えることかもしれません。

CBTには認知再構成法だけでなく、問題解決法行動実験行動活性化などさまざまな方法があります。悩みの内容によって、適した方法は異なります。

まとめ

認知再構成法は、ネガティブな考えをポジティブに置き換える方法ではありません。

自動的に浮かんだ考えをいったん立ち止まって確認し、根拠と別の可能性を検討しながら、より現実的で柔軟な見方を探していく方法です。

最初は難しく感じるかもしれませんが、「これは事実なのか、それとも自分の解釈なのか」と考えてみるだけでも、認知再構成法の第一歩になります。

監修者
監修者プロフィール

ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童(Seido shimizu)

精神保健指定医/日本精神神経学会認定 精神科専門医/認知症サポート医/コンサータ処方登録医/

【引用・参考文献】
・ジュディス・S・ベック 著、伊藤絵美・藤澤大介 訳『認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第3版―ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト』星和書店、2023年
・Wenzel A, ed. Handbook of Cognitive Behavioral Therapy, Volume 1. American Psychological Association, 2021.
・Overholser JC, Beale E. The art and science behind socratic questioning and guided discovery: a research review. Psychotherapy Research. 2023;33(7):946-956.
・David Lee 著、竹本毅 訳『10分でできる認知行動療法入門:10分間CBTハンドブック第2版』日経BP社、2016年

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