認知行動療法ー比較癖といいね!リストー
皆さん、お加減どうですか?
どうも。いつも診る院長の清水です。
前回は円グラフ法を紹介しましたね。
今回も比較的簡単な技法をご紹介します。
それは、【比較癖と「いいね!」リスト】です。
そんなことより、わたしのTIKTOKアカウントに「いいね!」くれてもいいんですよ?
比較癖と「いいね!」リストの適応は?
メンタル不調になりやすい方は、
特に自分自身のこととなると、
ネガティブな方向へ判断が偏りがちであると言われています。
つまり、ポジティブな情報を無視、
あるいは差っ引いて考えることが多いのです。
こんな経験はありませんか?
現在の自分を、全く困っていなかった頃と比較してしまったり、
健康でうまくいってそうな他人と比較してしまって、
「それに比べ、なんて自分はダメなんだろう」
と考えてしまう・・・。
他人がうまくいっている、という保障もないのに・・・。
その自動思考のせいで、
不快感を維持、増大させている可能性は
ないでしょうか。
この技法は、そんな自己肯定感の低い方に、
特にお勧めです。
“最悪の時の自分”と“今の自分”を比較する癖をつける、【比較癖】
ここで、2つのことを考えてみましょう。
高校生のときのあなたを想像してください。
あなたは、高校の陸上のトップ選手です。
短距離走の記録では、同級生に敵はいません。
しかしあなたはこのように考えています。
「自分の記録なんて、ウサイン・ボルトと比べたら、全くダメである」
いかがでしょう。
そりゃそーだろと考えてしまうかもしれませんが、
このような考え方では少なくとも、
あまり良い気分はしないでしょう。
もし、このような世界記録をもつTOP選手と比較していたら、
いつになったら自分を評価できる日が来るのでしょうか?
そしてもう1つ。
自分自身にむかって、
「ちょっと待てよ。無理のある比較になっていないかな。
ここはひとつ、最も成績が振るわなかった頃の自分と比較してみよう。
例えば、高校1年の体力テストの記録と今を比較してみたら・・・
今のほうが良くなっているな」
と考えられたら、いかがでしょうか?
おそらく、気分はよくなるでしょう。
もし・・・これを読んでいるあなたが、
長らくうつ状態で苦しんでいたとしたら、
健康な方と、あるいは理想の自分と比較をする癖がついちゃってるのかもしれません。
しかし。
そもそも、「健康」の絶対的な価値基準など、ありはしないのです。
所詮、主観的な指標に過ぎません。
絶対的な価値基準がないのだとしたら、
ご自身より健康な、うつ状態のない人間と比較するより、
最悪の自分自身と比較したほうが、得じゃないですか?
あなたは今、まさに認知行動療法の記事を読んで、
良くなろうと努力されています。
もし、今が最悪の状態だとしても、
その事実に気がついていただきたいのです。
これ、結構なボリュームありますよ?
それって、
すごく努力していることになりません?
理想的な自分になれるように、
必死に取り組むことができている。
つまり、努力できているということは、
「いいね!」に値しませんか?
いいね!リストのやり方
ここで、
これまでの記事の復習をしたいと思います。
あなたがもし、
「自分はまだダメだ、このようにしていくべきだ」
とか、
「なんてひどい出来だろう」
と考えてしまったとき、
いつもどのような気分になっていたでしょうか?
おそらく、気分は悪くなっていましたよね。
そして、
「あ、自分は昔よりも成長している」
とか
「思ったより良く出来たなあ」
とか思えたなら、おそらく気分は良くなってきたでしょう。
ということは、良い物事に気付く癖をつけた方が、
うつ状態に対しては、良いことになります。
ただし、うつ状態なら特にそうですが、
自分のポジティブな事に気がつくのも、覚えておくのも
難しいものです。
そこで、ポジティブな情報をいつでも振り返られるように、
記録しておく方法があります。
これが、「いいね!」リストです。
(いいね!リストという名前が気にいらなければ、ポジティブリストでも
ナイスガッツ表でも、今日の「うふふ」でも、何でもいいです)。
以下に、例を示します。
ポジティブなことをした、あるいは辛かったけども何とかやり遂げた、その他ポジティブなこと・新しい契約がとれた、そしてそのことを上司から褒められた
・資格試験の為に2時間集中して勉強できた
・仕事のミーティングで発言できた
・上司に必要な助言を請うことができた
このような、最悪の自分からみて「いいね!」と思える項目をリスト化します。
出来れば、毎日やったほうが良いとされますが、
負担が大きければ、一週間ごとに書くのでも良いです。
X(旧Twitter)でも、「ホメ療法」として、
似たものをやっている方がいますね。
ポジティブな情報を、覚えているうちに
記録しておき、それをいつでも振りかえることができる
というところがミソです。
さあ、できる方は今日からやってみましょう!
いかがですか?
もちろん、自分に厳しい、あるいは悲観的な考えをする事は、
間違っているとは言えません。
何故なら、
その考えのおかげで成長できたり、
最悪の結果を避ける手助けに
なっている可能性があるからです。
もし、そうかもしれない、と思った方がいたら、
得をすることと損をすること【損益分析】するとよいと思います。
自分を厳しく査定することで、
総合的に損をするのか、得をするのか・・・
これが、損益分析です。
おっとしまった、もう時間(メシの)なので、
これはまた次回のスキル【損益分析】でご紹介しましょう。
そのときまで、お大事に。
【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社
更新:2024.1.23
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医