カウンセリング(心理療法)とは
はじめに
カウンセリングは、心の悩みを解決するための有効な手段です。
しかし、カウンセリングにもさまざまな手法があり、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
本記事では、認知行動療法(CBT)、対人関係療法(ITP)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)といった、
代表的なカウンセリング手法を解説します。
カウンセリングの概要
カウンセリング(心理療法)とは、悩みや問題を解決に導いたり、気持ちを楽にするため、セラピストと対話をすることで行う治療法です。
精神疾患に罹患する患者さんの中には、
ストレスをためやすい性格や人格(認知の偏りと言います)が隠れる方がおり、
そのような場合は薬だけでは改善が難しく、特にカウンセリングが推奨されます。
しばしば、精神科、心療内科のクリニックでは薬物療法と組み合わせて行われることが多いです。
カウンセリングの効果
カウンセリングでは、 感情のコントロール能力の向上や適応的な考え方の向上、
ストレスへの対処能力の向上、人間関係の改善、抑うつや不安、パニック発作の改善、
トラウマティックな記憶の緩和、自己理解の深まりなど、精神疾患の再発予防など、
さまざまな効果を持っています。
薬物療法と比べて、効果を実感するまで時間がかかったり、重症では効果が感じられにくいなど、
幾分、薬物療法よりも見劣りする部分はありますが、
目立った副作用がなく、根本的な解決が期待できることが特徴できます。
セラピーを受ける方の困りごとに合わせて、最適な治療法を選ぶことが大切です。
カウンセリングの種類
認知行動療法(CBT)
認知行動療法は、つらい気持ちの背景にある考え方(認知)に焦点を当てて、
認知に働きかけて問題解決を手助けしたり、認知を修正する練習をしたりする中で、
心を楽にしたり問題解決の手助けをしたりする、構造化された精神療法です。
一般的に16回前後のセッションという比較的短期間で効果を得られることも特徴的です。
科学的な根拠に基づいたアプローチとして多くの心理的問題に活用されており、
精神科クリニックではカウンセリングの王道的な技法としてよく用いられ、支持されています。
数は少ないですが、保険診療でも受けられる医療機関もあります。
その対象も広く、うつ病をはじめとして、
不安障害(パニック障害、社交不安症、限局性恐怖症、広場恐怖症など)、
自分でもできる方法も紹介しているので、
興味がある方は当院のコラム記事をご覧ください。
対人関係療法(IPT)
対人関係療法 (IPT) は、精神疾患の症状と、現在進行中の対人関係の問題との関連に焦点を当てた短期的な心理療法です。1970年代にうつ病治療の一環として開発され、現在ではさまざまな精神疾患に適用されており、
うつ病治療のガイドラインや米国精神医学会(APA)のガイドライン、英国のNICEガイドラインでも有効な治療法として位置付けられています。
対人関係上のストレス(例:喪失、役割の変化、対人紛争、社会的スキル不足)が心理的苦痛や精神疾患の引き金になると考え、これを解決・改善することで症状を緩和することを目指します。
なんらかの仮説に基づいて作成された治療法ではありませんが、既知の心理療法の良いところを体系化して作られた、総合格闘技のような技法です。
IPTはうつ病、不安障害、摂食障害、双極性障害、適応障害(親しい人物の喪失などの悲嘆反応)において、症状の軽減効果が確認されており、重症のうつ病に対しては認知行動療法よりも効果的だったことが示されています。
対人関係療法は、特に対人関係の影響が大きい場合に効果が高いことが示されています。
患者の再発予防や長期的な心理的安定にも寄与します。有効性は多くの研究で実証されているので安心ですし、
対人関係によってストレスが大きい方にはお勧めのカウンセリング法ですね。
力動的・分析的精神療法
力動的精神療法と分析的精神療法は、患者の無意識的な心の働きや、過去の経験が現在の感情、行動、対人関係に与える影響を探ることを目的とします。
このアプローチはフロイトの精神分析理論を基礎として発展してきました。
無意識に抑圧された感情や葛藤が現在の心理的問題の原因となると考え、それを意識化することで症状の改善を目指します。
子ども時代の経験や対人関係が、現在の心理状態や行動にどのように影響を与えているかを検討し、
患者と治療者の関係(治療関係)が、患者の無意識的なパターンや感情を表す場として機能することを利用してそれを解釈し、患者が自分の問題を再認識し、変化を促します。
しかし、他の心理療法に比べて医学的思考はかなり曖昧な位置付けとされており、何が効果的なのか、
決定的なことは判明していません。
おそらく、無意識の感情に対する洞察が進み、自身の生活史に対する不連続な部分が理解され、
自己受容が生まれるためだとされています。
治療には非常に時間がかかるぶん、一般的な心理療法ではなかなか改善しないような、
パーソナリティの深い部分で困難さを抱える方や、深い自己洞察を得たい方は、やってみても良いかもしれません。
集団精神療法
集団精神療法は、心理的な問題を抱える複数の患者が一つのグループに集まり、精神科医や心理士などの専門家による指導や介入を受けながら治療を進める方法です。個人療法とは異なり、他者との交流やグループダイナミクスを活用して心理的な課題に取り組む点が特徴です。
集団の力を利用し、メンバー間の相互作用を通じて、患者が自己理解を深め、行動や感情の変化を促します。また、他のメンバーの多様な経験や意見が新たな視点を提供し、問題解決の糸口を得るきっかけとなります。
他の人も同じような問題を抱えていることを知ることで、孤独感や疎外感が軽減され、グループでのやりとりを通じて、コミュニケーションや対人関係のスキルが改善されます。
他者のフィードバックや反応を通じて、自分の行動や考え方についての洞察が深まります。治療の終了後も活用できる関係性が構築できる可能性もあります。
また、個別療法に比べて多人数に同時に治療を提供できるため、コストパフォーマンスが高いことも特徴的です。
うつ病や不安障害、PTSDなどの患者でも適応がありますが、とりわけ精神科領域では依存症、人格障害といった難治性の病態で、治療の軸となります。
適切に設計されたプログラムと治療者による管理の下で、多くの精神疾患や心理的課題に対して有効性が示されれており、対人スキルや人間関係も築けるのがお勧めですね。
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing、眼球運動による脱感作と再処理)は、トラウマや心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療に対して、主に用いられる心理療法です。
患者がトラウマに関連する記憶や感情に集中しながら、目を左右に動かしたり、音や触覚の刺激を受けたりすると、この刺激が脳の情報処理を促進し、記憶の再統合を助けるとされています。
この治療の正確なメカニズムはわかっていませんが、不思議なことに、治療前後で脳の機能画像が変化します。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)や、過去の虐待体験による不安障害やうつ、慢性疼痛に対して推奨されています。
EMDRは、多くの臨床研究でその有効性が確認されており、特にPTSDの治療において、従来の認知行動療法(CBT)や薬物療法に匹敵する効果があるとされています。
臨床的にも、短期間で劇的な反応を示すことがあり、コストパフォーマンスも優れています。
能動的に考える必要がないので、感情的にセラピーを受けたい方にもお勧めです。
ただ、過去のつらい記憶を思い出す中で、少なくとも短期的には不調になることも覚悟しなければいけません。
まとめ
ライトメンタルクリニックの特徴とおすすめポイント
ちなみに当院は、常勤公認心理士が在籍しており、
認知行動療法や対人関係療法、EMDRをはじめとしたさまざまな治療を、
その方の症状によって適宜組み合わせて柔軟に治療できる、数少ないクリニックです。
他と比べてお手頃価格なところもポイントですので、ぜひご検討下さい!
手前味噌ですが・・・当院心理士の荒木は、
やさしい心理おじさんとして、患者さんにご好評いただいています。
また、夜間や土曜日の診療にも対応しており、仕事や学校で忙しい人にも利用しやすい環境が整っています。
当院で心理療法を受けるには、まずは医師の初診が必要です。
ご予約はこちら。
更新:2024年11月27日
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医