性別違和(性同一性障害)とは
性別違和(性同一性障害)とは
1. 概要
性を決定する要素は、生物学的な性(染色体、外性器など)のほか、社会的性(性役割、性別表現、性自認)など多要因にわたります。これら性を決定する要素の中で、著しい不一致で苦悩が著しい場合や、身体的治療を求めて医療機関を求める場合に示される概念が「性別違和」です。大概は、自身の反対性の一員に、一時的ないし永続的になろうとします。民間企業による6万人を対象とした調査では、LGBTに該当すると回答した人は8.9%おり、もはやどのコミュニティでも、トランスジェンダーの存在は無視できなくなっています。戸籍上指定された性とは異なる遊び、衣服をえらびたがる、遊び友達が異性ばかりである、などの事で周囲から認知され、その違和感を本人が適切に言語化する事は難しい事が多いです。しかし成人期になると比較的明確に自身の性自認や、好きになる性に対して違和感を自覚し、表現できるようになります。幼児期や学童期早期に診断基準を満たしても、その後症状の軽減が得られる症例が多く、また児童思春期は性自認が揺らぎやすいことが多いです。周囲から理解を得られず、生きづらさを抱えていたり、自己肯定感が低下しやすく、援助が必要になる場合があります。
2. 原因
アメリカ精神医学会による診断基準(DSM–Ⅴ)では性別違和、また国際疾病分類(ICD-11)では性的不合と表現されており、従来のICD-10で規定された性同一性「障害」というネーミングが改められています。つまり、もはや国際社会において、ジェンダーの構成要素の不一致が、疾患という枠組み内で捉えるべきではないという認識に改められています。従って、原因はこの項では記載なしとします。
3. 診断
性別違和の診断基準は、児童思春期と青年期以降で微細に異なります。これは、児童思春期は自身のジェンダーに関わる違和感を言語化しにくい点に拠ります。ここでは、児童思春期の診断基準を記載します。
体験・表出するジェンダーと、戸籍で指定されたジェンダーとの間の著しい不一致が、少なくとも6ヶ月持続し、以下の8項目のうち6つ以上によって示される。ただし、少なくとも一つは(1)でなければならない。
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(1)反対のジェンダーになりたいという強い欲求または自分は違うジェンダーであるという主張。
(2)指定されたジェンダーと反対のジェンダーの服を身につける、指定されたジェンダーに定型的な衣服を着ることへの強い抵抗を示す。
(3)ごっこ遊びや空想遊びにおいて、反対のジェンダーの役割を強く好む。
(4)反対のジェンダーに定型的な玩具や遊び、活動を強く好む。
(5)反対のジェンダーの遊び友達を強く好む。
(6)指定されたジェンダーに定型的な玩具や遊び、活動を強く拒む。
(7)自分の性器の構造を強く嫌悪する。
(8)自分の体験するジェンダーにあう第一次及び第二次性徴を強く望む。
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※ただし、統合失調症など精神病圏の疾患による症状から性転換願望を訴えるわけではなく、文化的、社会的理由、職業的利得を得るための訴えではないこと
4. 治療
精神療法、ホルモン療法、手術療法があります。精神療法では、主として精神科医が窓口となります。苦悩を理解し、自身の多様性を認め、今後の生活スタイルや、ホルモン治療、手術療法などの身体治療の決定の援助を行います。また、カムアウト(秘密の告白)のタイミングや、カムアウト後に起こり得る状況に対する対策、心的備えなどを検討します。ホルモン療法は、性自認が女性の場合はエストラジオール製剤、男性の場合はテストステロン製剤を中心とする性ホルモンを投与し、身体的な表現形を理想に近づけます。原則18歳以上からの適応であり、未成年では保護者の同意が必要となります。また、生殖能力を喪失する性別適合手術は20歳以上が原則であり、未成年は保護者の同意が必要となります。