神経性やせ症とは
神経性やせ症(AN)とは
1. 概要
極端な食事制限とやせを特徴とする精神疾患で、摂食障害のカテゴリーの一つです。多くの場合、自分の体型に関する歪んだ認知を認めます。社会全体がダイエットを励行しているなか、グレーゾーンの対象も少なくなく、診断基準を満たさない場合でも支援が必要なケースが多いとされます。若年女性の0.5–1%に罹患し、有病率は女性が男性の10~20倍で圧倒的に女性の罹患が多く、思春期から20代までに、ストレスイベントを契機に発症することが多いとされます。実際には痩せていても、理想とする体型が極度に痩せているために、太っていると考えて自己嫌悪に陥ったり、肥満恐怖を認め、深刻な体重減少に伴う抑うつ気分や焦燥、不眠、生理不順、性的興味の減退、万引きや盗み食いなどを呈することがあります。ちなみに無月経の時期があっても、将来不妊になるわけではありません。甲状腺の機能低下もよく合併します。予後に関しては、短期的に回復するものも、難治となり長期に病状が及ぶ(10~15%)ものもありますが、約10年は回復の可能性が期待できるとされます(回復率73.2%)。軽症者は回復しやすいですが、体重回復後も肥満恐怖など心理的な症状が持続することが多く、再発には注意が必要です。死亡率は最も高い部類に入り、約10%とされます。神経性やせ症の患者の半数が1年以内に神経性過食症(BN)に移行することになります。
2. 原因
生物学的な異常としては、食欲調節機構の異常が指摘されています。また、遺伝の関連性も指摘されており、第一度親族に発症者がいると、神経性やせ症:ANや神経性過食症:BNのリスクが高まるようです。また、性格的には自己評価の低さ、完全癖の強さ、学業成績へのこだわり、環境的には家庭内の葛藤などが影響するようです。低体重が深刻であれば、より病状否認が強かったり、肥満恐怖が強まる傾向があることから、やせそのものが病態に関与する可能性も指摘されています。
3. 診断
まずは甲状腺疾患や頭蓋内腫瘍など、食欲や体重の異常をきたす身体疾患との鑑別を行い、それらを除外した上で下記の診断基準を満たせば確定となります。
①必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対して有意に低い体重に至る。
※有意に低い体重とは、正常の下限を下回ると定義される
②有意に低い体重であるにも関わらず、体重増加または肥満になる事に対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続した行動がある
③自分の体重または体型に関わる出来事の否定的な解釈、自己評価において、体重や体型が不相応に影響を与えている、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如がある
至極簡単に言うなら、不相応に痩せているのに痩せようとする思考や行動があり、そうでないと自尊心を保てないという概念になるでしょう。
4. 治療