神経性過食症とは

神経性過食症(BN)とは

1. 概要

反復する過食と排出行動が特徴的な精神疾患であり、摂食障害のカテゴリーの一つです。本人の自己評価が、体重や体型により大きな影響を受けるため、過食して体重が増える事を恐れ、それを防ぐための不適切な代償行動が過食後にみられます。代償行動は、過剰な運動だったり、絶食、自己誘発嘔吐、利尿薬や緩下剤の使用などが例として挙げられます。体重は標準内ではあるものの、過食を食事制限を繰り返すため変動は激しいことが多いです。過食や代償行動、理想的でない体重に対し罪悪感を抱き、自己評価が低下し抑うつ的になり、学校や仕事に行けず孤立し、自傷やアルコール、薬物乱用に至ることもあります。家庭内暴力や性的乱脈、自傷行為などの衝動行為も多いです。しかし、不適切な代償行動や体型によって生まれた抑うつ気分や不快感を解消するためにまた、過食を行うことが多く、悪循環に陥っています。気分障害のなかでもうつ病、不安障害、パーソナリティ障害(特に境界性人格障害)、物質使用障害などの併存が多く認められます。患者の約9割が女性であり、減量を目的としたダイエットや、ストレスフルな出来事が契機になり発症する例が多く、思春期から青年期にかけて発症します。若年女性では2−3%が発症とされています。12ヶ月有病率は1から1.5%(欧米での生涯有病率は0.5〜3%)。児童思春期の調査では0.3から1.7%、2000年以後の日本の有病率調査では2.5%とされています。神経性やせ症から移行する場合もあります。予後としては0.3%が死亡(自殺企図は25〜35%) 5-10年で50%が完全回復、27%は改善、30%が再発、 23%が慢性化しなおも治療中とされています。4から9年の追跡期間に最も高い回復率がみられるようです。また、1年以上症状がない時期があれば、その後も良好であることが示唆されています。逆に、他の精神疾患の併存やアルコールなどの物質使用障害、慢性的な経過は、自殺リスクと関連しています。身体症状として、齲歯、耳下腺腫脹、指の変形、低カリウム血症、月経不順などがあります。

2. 原因

環境因として、こどもの頃に虐待をうけると神経性過食症の罹患リスク上がります。最近は現代青年の欲求不満耐性の低さ、ストレス処理能力の低さや、コンビニエンスストアの普及などによる食物確保のしやすさも、罹患率を上げる一因であると指摘されています。

3. 診断

下記の条件を全て満たす時、確定診断となります。胃や食道の異常でないかを鑑別する必要があります。摂食への没頭と渇望あり、自制できない感覚を伴う過食が反復している。体重増加を防ぐ不適切な代償行動がある(Ex…自己誘発嘔吐、下剤 、利尿薬の不適切使用、絶食や過剰な運動、糖尿病であればインスリン中断など)過食と不適切な代償行動がともに平均して3ヶ月間に渡り、少なくとも週1回以上起こっている自己評価が体型または体重の影響を過度にうけているその障害は、神経性やせ症のエピソードの期間のみに起こるものではない

4. 治療

治療は外来が主ですが、過食排出行動のサイクルをリセットするための2週間から1ヶ月程度の短期入院治療もあります。外来では、疾患心理教育、認知行動療法や対人関係療法などのカウンセリングを主体とし、薬物療法を補助的に使うことがあります。本来は摂食障害に対する認知行動療法であるCBT-EDが望ましいのですが、それができる専門家が普及していないのが現状ですので、実際は一般的な認知行動療法に準じた対応をすることが多いです。疾患心理教育では、過食の起こるメカニズム、自己誘発性嘔吐や下剤乱用の身体的負荷、突然死の可能性があることを教育し、治療の動機づけを行います。また、3食食べても体重が増え続けることはないこと、過食後の不食がさらなる過食を引き起こす事、個人で適切な体重が決まっており(セットポイント)、それを超えて痩せようとすると反動的な過食を行うようになることを説明し、必要に応じて実験的に検証しながら、理解させていきます。認知行動療法的なアプローチでは、痩せ願望や肥満恐怖の背景にある苦しさにも焦点を当て、環境調整を促したり、日中の活動、食事内容、嘔吐や下剤使用の有無、過食前の状況、思考、気分などを記録しモニタリング能力を高めたりします。[少しでも食べると太る]という認知の歪みがある事が多いのですが、[どれほどの量でどれくらい体重がふえるか]を検討し、適切な認知へ修正することを目的にアプローチします。過食を遅らせるための代替行動のリストを作成し、順に実行したり、食後に吐くまでの時間を少しづつ伸ばすなどのスキルを使い、不適切な行動に至る確率を下げていきます。ある程度食行動異常が改善したら、治療の焦点を対人関係の問題に移し、症状を増悪させる対人関係上の問題を取り扱うこととなりますが、特に食行動異常を増悪させる人間関係上の問題について取り扱うのが望ましいです。一方、薬物療法についてですが、NICE2017というガイドラインでは薬物療法の推奨はなく、日本国内でも少なくとも薬物療法単独では治療すべきでない、とされています。2018年のネットワークメタ解析でも、薬物療法の有効性は否定されています。そのため、過食そのものを改善する目的での抗うつ薬投与は推奨されませんが、うつ病、社交不安障害、月経前不快気分障害(PMDD)などの併存症の治療として抗うつ薬を使うことは推奨されています。また、薬剤性の過食があれば、それを中止して過食を防いだり、自己破壊行動を伴う場合に抗精神病薬を少量使って衝動性を挫いたりすることがあります。また、境界性パーソナリティ障害を合併する神経性過食症の患者で自己破壊的行動が見られる場合は、情動安定のため薬物療法を優先させることがあります。その場合、心理療法で食行動異常に焦点を当てた認知行動療法を完遂させるのは困難なので、対人関係上の問題を取り扱うことが優先とされています。境界性パーソナリティ障害の患者家族には過食・排出行動に関して、家族や周囲の人間には止められないこと、叱責しても不安定になるだけであることを理解してもらい、家族との関係が緊迫している場合、合同面接を行うことが望ましいとされています。
>

 医療法人社団 燈心会
ライトメンタルクリニック
東京都新宿区西早稲田3丁目20-3レガリアタワーレジデンスB1F
TEL 03-6457-6040 FAX 03ー6457-6041
診療日・時間
 月〜金 10:00~13:00、14:00~18:00、19:00~22:00
 土・日 10:00~13:00、14:00~18:00
※土・日の19:00~23:00はカウンセリングのみ
※祝日は原則診療

診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
2.副作用のリスク等から、薬物療法に抵抗感を感じる方にも精神科・心療内科の受診を検討いただけるよう、非薬物療法を充実させています。
3.通院が困難な方のニーズに応えるため、オンライン診療を実施しています。
4.仕切りを設けた待合室により、患者さま同士が極力顔を合わせずに診療を終える事ができます。
このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。