強迫性障害(OCD)とは

強迫性障害(OCD)とは

1. 概要

強迫性障害(OCD:obsessive–compulsive disorder)は、本来ならば気にしなくてもよい繰り返し生じる思考(強迫観念)とそれを打ち消すために繰り返さずにいられない行為(強迫行為)を主たる症状とする疾患です。大部分は不安に関連しており、他の思考や行動(手洗い、儀式、呪文など)によって不安を中和を試みたりします。具体的には朝の支度に時間がかかる、外出の際に時間がかかるなどの例が多く、日常生活の遅延と質の低下が特徴的です。歴史的には不安障害の1つとされてきましたが、2013年以降は強迫症および関連症群というカテゴリーが設けられ、醜形恐怖症、抜毛症、ためこみ症などと近い疾患概念となっています。症状は多彩であり、多くの場合、複数の症状が併存します。多くの場合、強迫観念は馬鹿らしく思えることが多いですが、約20%の症例では症状に対する不合理感が失われ、妄想に近い思考を伴うものや、症状の表出に対してほとんど不安の介在がみられないケースが存在します。生涯有病率2%前後の疾患であり、精神疾患の中では発生頻度が高い部類です。発症から受診までの未治療期間が7–8年と概ね長期であることが統計上示されています。好発年齢は10–20歳代、男性は10歳前半をピークとする思春期発症例が多く、女性は結婚、妊娠出産などのライフイベントに関連した20歳代以降の発症例が多いとされます。中高年以降に発症するリスクは少ないです。ライフイベント上のストレス、対人関係上のストレスは症状を増悪させます。大部分の患者は治療なしでは自然寛解に至ることは少なく、動揺しながら慢性の経過を辿ることが多いです。早発例では社会適応が妨げられ、長期の引きこもりに至る例が少なくないため早期介入が必要な疾患です。また、患者の半数程度は経過中にうつ病や他の不安障害を合併します。パーソナリティ障害、知的障害、チック障害、トゥレット障害などの疾患も併存する例が少なからず散見されます。

2. 原因

本人の人格や性格とは異なり、神経伝達物質に関連する脳機能の異常が原因とされます。病態生理学的にはセロトニン神経系の異常、特に前頭眼窩面におけるセロトニン受容体の機能変化が病態に関連していると推定されています。一方で難治例ではSSRIよりも抗精神病薬による強化療法が有効であることから、ドパミン神経系の関与があることが示唆されています。最近は、グルタミン酸の関与も示唆されており、その調節作用をもつ薬剤の臨床研究も盛んに行われています。PET、SPECT、fMRIなどの画像研究によると、前頭葉領域の活性化における線条体における視床の制御障害が生じ、前頭眼窩面と視床の間で相互活性が生じ異常に増幅された結果、眼窩前頭皮質、淡蒼球、視床、尾状核、前部帯状回などの脳部位のネットワーク障害で強迫症状が増幅されるとされていました(前頭葉ー皮質下回路に関する神経ネットワーク仮説)。しかしその後の検証により、前頭葉ー皮質下回路に前部帯状回、海馬、扁桃体を加えた情動ループ、前頭前野外側部、後頭葉、頭頂葉、小脳から尾状核、視床下核を経由して黒質、淡蒼球、視床に至る空間認知や注意に関する認知ループなど広範な脳部位の関与も考慮に入れる必要があると推定されています。神経症性疾患のなかでは最も遺伝率が高いとされており、近親者の3-5割程度に強迫性障害の素因があると言われています。

3. 診断

以下の全てを満たす場合に診断となります。
①強迫観念や強迫行為の存在、もしくはその両方がある。
②強迫観念や強迫行為による1日1時間以上の時間的浪費や苦痛ないし職業・社会的機能障害
③物質関連/身体疾患や他精神疾患で説明できない
精神疾患では統合失調症、発達障害、知的障害との鑑別が問題となり、身体疾患では、脳血管障害、脳炎、認知症、頭部外傷、舞踏病、パーキンソン病、側頭葉てんかん、レンサ球菌感染症関連自己免疫精神障害との鑑別を行うこととなります。自閉症スペクトラム障害に伴う強迫症状は、正確性、こだわりや溜め込みが特徴的です。

4. 治療

ストレス因を除去するための環境調整や心理療法、薬物療法が中心になります。特に知的障害や発達障害が併存する患者には、社会資源の導入、日中の活動の場の提供や就労支援など環境調整を第一に行います。まず、心理療法の中でも良質なエビデンスが蓄積している認知行動療法(CBT)を検討します。認知行動療法は薬物療法と同様の効果があり、副作用が少なく、再発予防効果に優れています。まずCBT週1回、13–20回で反応を評価し、有効なら3から6ヶ月間定期的なブースターセッションを行います。恐怖刺激に段階的に触れていくことで慣れていく暴露法(エクスポージャー)と強迫行為をしたい衝動に耐える反応防止法などの、行動療法的アプローチが王道とされます。チック関連症では、ハビットリバーサル、モデリングやペーシング、プロンプティングなの心理療法を組み合わせて包括的に行うことが推奨されています。CBTで改善しない場合は薬物療法の出番です。主として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という種類の抗うつ薬が用いられます。治療の反応率は40〜50%です。8〜12週SSRIを服薬し、有効であれば同薬を1から2年継続します。その後数ヶ月かけて漸減を考慮しますが、その際CBTもできるだけ併用して再発予防に取り組むのがベストです。SSRIでうまく行かない場合、抗精神病薬やミルタザピン(NaSSA)やベンラファキシン(SNRI)など他の抗うつ薬を試すこともあります。費用や要する時間の関係で、現実的にはお薬から治療を開始する場合も多いですが、お薬だけでは20から40〜50%は中等度の軽快にとどまり、20〜40%はそのまま持続するか増悪すること、薬物療法が奏功しても中断すれば再発する可能性が高いことから、可能な限り認知行動療法を併用することが大切です。また最近では、難治例に対して反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)や、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、DBS(脳深部刺激療法)などのニューロモジュレーションが施行され、有効性が報告されつつあります。

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診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
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