統合失調症とは

統合失調症とは

1. 概要

統合失調症は、幻覚や妄想を主症状とした疾患であり、内科的疾患や脳腫瘍など脳画像検査で捉えられないものを指します。統合失調症は陽性症状(幻覚、妄想、支離滅裂、興奮)と陰性症状(感情平板化、社会的引きこもり、自発性の低下)、感情症状群(不安緊張、抑うつ、情動不安定)、認知機能症状群(失見当識、注意障害、意思決定・判断力の障害)などからなります。特に急性期は陽性症状を中心に、社会的機能の障害が著しく、離人体験(自分と他人の区別がつかない)、被害妄想(事実に反する被害的な確信)、幻聴、滅裂な思考、落ち着きのなさや情動の激しい変化を生じる事が多くあります。また、無愛想、独り言、上の空、動きのぎこちなさ、奇異な仕草や化粧、不潔な身なりなど、外見状の特徴を認める事もあります。統合失調症の疾患概念は生物学的観点からは今なお確立されておらず、臨床的な症候論に基づく疾患概念に留まっています。ただし、近年の神経科学の進歩の中で、統合失調症の生物学的基盤についての知見の集積が進んでおり、将来的には診断に寄与するバイオマーカーが発見される可能性があります。有病率は1%未満とされ、一卵性双生児の兄弟が統合失調症であれば40%、二卵性双生児や兄弟(1度近親者)の場合は10−15%の発症率で、両親共統合失調症の場合は40%の発症率となり、遺伝は明確に発症に関係しています。
10歳以下の早発は0.14%未満と少なく、14歳以後発症が増加し、40歳までにほぼ発症します。慢性期には脳萎縮が進行します。早期発症であればあるほど予後不良の傾向があります。一般的に初発エピソードの80%が寛解しますが、大半に日常生活支援が必要であり、未治療では増悪と軽快を繰り返しながら病状が進行し、人格が荒廃していく経過をたどります。自殺率は10〜15%であり、命に関わる病気と言えます。長期的には20%が予後良好な経過をたどるとされ、初発後5年間の病相が予後を左右するとされています。また、発症してから未治療期間が長ければ予後が悪化するため、早期に治療を開始、継続する事が肝要です。

2. 原因

先述のとおり、疾患特異的な生物学的異常は認められていません。ただし、有力な仮説はいくつか存在しています。まず、治療薬の開発研究から、早期から病態との関連性が指摘されてきたドパミンやグルタミン酸などの神経伝達経路が関連しているとするドーパミン・グルタミン酸仮説があります。現在の抗精神病薬は、多かれ少なかれドパミン神経系を抑制する方向に働きます。また、幻覚薬であるPCPがグルタミン酸を介する経路を刺激し幻覚妄想を惹起するばかりでなく、統合失調症に類似した無感情や意欲低下を惹起することから、統合失調症の標的候補として注目されています。また、脳の形態学的変化から統合失調症の病態を解明しようとする研究も進んでおり、統合失調症患者では、健康被験者と比べて辺縁系を含む大脳皮質の広範な範囲で灰白質の体積や皮質厚が減少していることが分かっています。特に前頭前野や前部帯状回、上側頭回、島領域などの脳領域で萎縮があることが明らかになっています。神経病理学的には、前頭葉における錐体細胞の樹上突起棘の密度の低下や白質におけるオリゴデンドロサイトの形態異常や密度の減少、神経細胞を保護するミエリン鞘の異常など、細胞構築上の異常が報告されています。また脳の機能レベルの変化として、前頭葉領域の脳血流の異常や、糖代謝異常が認められるとする報告もあります。
遺伝要因についても古くから注目されており、統合失調症と関係する遺伝子変異がいくらか報告されています。
また、統合失調症は環境によっても発症リスクが高まる事が知られています。胎児期には父の高齢化や母体の感染や出産時の外傷、冬から早春生まれ、都会育ちでリスクが上がります。また、幼少期から思春期には感情的な家族、ストレスフルなライフイベント、麻薬や覚醒剤の乱用などで発症リスクが上がる事が知られています。また、ビタミンDが不足していると発症率が上がるという報告もあります。

3. 診断

妄想、幻覚、まとまりのない発語、ひどくまとまりのない行動や、感情表出の減少や意欲欠如のうち少なくとも2つ以上が存在し、仕事や対人関係、自己管理などの面で支障をきたす状態が少なくとも1ヶ月以上続く場合に診断される事があります(それ未満の場合は別の診断名となります)。主な鑑別診断として、脳腫瘍や甲状腺機能異常症などの器質・症状精神病、うつ病や双極性障害などの気分障害、自閉症スペクトラム症、てんかん精神病、アルコールや覚醒剤などの物質関連障害などが挙げられます。

4. 治療

統合失調症患者の多くは病識が乏しいため、自分が異常な状態にある事に気がつきません。故に治療の主体である抗精神病薬の内服を継続する事も困難を伴う事も多いです。実際、内服後52週で41.5%の患者が、自己決断で薬剤中止するというデータがあります。 お薬を中止すると1年以内に60〜70%、2年以内に98%程度が再発するため、有効であればずっと薬剤を継続内服する事が望ましいですが、初発では少なくとも1年、再発では少なくとも5年間の服薬が強く推奨されます。お薬を継続できない患者さんには、月に1度程度の持効性注射も良い適応になるでしょう。また、服薬の動機付けを高めるために心理教育や認知行動的技法を行い、本人が自ら生活の質を改善するために薬を利用する、という感覚になれることが望ましいです。
上述のように、統合失調症はかつては増悪、寛解を繰り返しつつ人格荒廃が進行する予後不良の疾患でしたが、近年では薬物療法に加え、リハビリテーション技法や社会支援を受け、早期から介入を開始、継続することで社会機能の進行を抑制できるようになりました。治療の主体は依然薬物療法ですが、その他にも住居の確保、就労支援、リハビリテーション、地域社会での支援や心理的介入などが予後に関連すると言われており、早急に精神科を受診するだけでなく適切な社会資源を利用していく事が大切です。

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ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
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