統合失調感情障害とは
統合失調感情障害とは
1. 概要
統合失調感情障害は、統合失調症と気分障害(うつ病または双極性障害)の症状の特徴を同時に持つ病態の精神疾患です。この疾患では、妄想や幻覚などの統合失調症的な症状に加え、気分の極端な変動が見られることが特徴です。統合失調感情障害は統合失調症や気分障害と混同されることが多く、遺伝的にも症候論的にも重なりが大きいと考えられています。生涯有病率は統合失調症よりも低い全人口の約0.3~0.8%とされ、女性にやや多い傾向があります。幻覚や妄想などの精神病症状以外に抑うつ気分が主体のものをうつ病型と呼び高齢者に多く、精神病症状以外に爽快な気分やイライラした気分を特徴とするものを躁病型と呼び若年者に多いです。しかし単一の症状を繰り返すケースは1/3程度であり、他は変化しつつ多彩な表現型を展開していきます。長期的に見ると、精神病症状と気分症状が常に重なって存在する場合にはうつ病や双極性障害などの気分障害と同様の経過を辿ることが多く、精神病症状が気分症状と独立して存在する場合は、統合失調症の経過を辿ることが多いようです。社会的・職業的な機能低下を引き起こしやすく、本人や家族への影響が大きいため、早期の対応が求められます。
2. 原因
統合失調感情障害の原因は複雑で、多因子的な要素が関与しています。疫学的研究では、遺伝的要因が約50~80%の発症リスクに寄与すると示されています。特に一親等内に統合失調症や気分障害を持つ家族がいる場合、発症リスクが大幅に増加します。また、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)の異常が症状の発現に関与することが示唆されています。環境要因として、出生前の合併症(妊娠中の感染症や栄養不足)、幼少期のトラウマ体験、強いストレスや社会的孤立がリスク要因とされています。さらに、近年の研究では、脳の灰白質減少や炎症マーカーの増加といった生物学的異常も関連する可能性があると報告されています。
3. 診断
統合失調感情障害の診断は、いくつかの特徴的な臨床症状を満たすことによって診断されますが、その診断基準は複雑です。以下に示す、精神病症状と気分症状と同時に存在したことがあり、かつ単独で精神病症状が2週間以上存在したことがある場合に診断されます。また、病歴の中で気分症状は、半分以上の期間に存在することも診断の条件となります。
①精神病症状:妄想、幻覚、まとまりのない思考や言語、極度に混乱した行動、または陰性症状(感情の平板化、意欲低下など)が認められる。
②気分症状:重度の抑うつエピソードまたは躁状態(爽快な、あるいはイライラした気分)が精神病症状と同時に存在する。
③持続性:精神病症状が、少なくとも単独で2週間以上続き、その期間には顕著な気分障害の症状が見られない。
④全体的な持続期間:気分症状と精神病症状は、併せて病歴の大半の期間にわたって存在する。
診断には、詳細な問診、精神状態の評価、身体検査、そして必要に応じて血液検査や脳画像検査が併用され、他の身体疾患や精神作用物質の影響で説明可能ではないか吟味されたのちに診断されます。
4. 治療
統合失調感情障害の治療には、薬物療法と心理社会的支援が組み合わされます。薬物療法では、抗精神病薬(アリピプラゾールやリスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)に加え、気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)や抗うつ薬が用いられます。これらの薬物は、幻覚や妄想などの統合失調症的な症状と、気分障害的な症状の両方を軽減します。また、認知行動療法(CBT)や心理教育を通じて、症状への対処法やストレス管理を学ぶことも重要です。さらに、社会復帰を支援するリハビリテーションプログラムや家族への支援も、長期的な回復に寄与します。個人間で経過が異なる事も多々あり、なかには病像がそのつど変化して、全体として統合失調症や気分障害の経過の一部と見なせるものもあれば、どちらにも移行せずに統合失調感情障害のエピソードを繰り返すこともあります。いずれにせよ治療は個別化されるべきで、専門医と連携しながら進めることが推奨されます。