メンタルヘルスコラム

セルフネグレクトとは?原因・サイン・対処法を解説

  • 更新日:2026.09.04
  • 公開日:2025.08.27

皆さんお加減どうですか?

どうも。いつも診る院長の清水です。

「お風呂に入れない」「食事をきちんと取れない」「部屋を片付けられない」といった状態が続き、自分自身の生活や健康を保つことが難しくなることがあります。

こうした状態の一つとして知られているのが、セルフネグレクト(自己放任)です。

これは本人の努力不足だけで説明できるものではなく、心身の状態や生活環境など、様々な要因が関係します。

この記事では、セルフネグレクトとはどのような状態なのか、そのサインや原因、そして気づいたときの対処法について解説します。

セルフネグレクトとは

セルフネグレクトとは、食事、清潔、医療、住環境など、自分の健康や安全を保つために必要な行動が十分にできなくなっている状態を指します。

セルフネグレクト自体は病名ではありません

セルフネグレクトの背景には、精神疾患、認知機能や身体機能の低下、アルコールなどの問題、社会的孤立などが関係することがあります。

本人の性格や意欲などのみで説明するのではなく、なぜ生活を維持できなくなっているのかに目を向けることが重要です。

ゴミ屋敷やためこみ症とは異なります

セルフネグレクトが進むと、ゴミ捨てや掃除ができず、住環境が悪化することがあります。

ただし、部屋が散らかっているだけでセルフネグレクトとは言えません。物を手放すことへの強い抵抗を特徴とする「ためこみ症」とも異なります。

セルフネグレクトでは、住環境だけでなく、食事、衛生、健康管理などを含めた生活全体のセルフケアが低下していることが特徴です。

セルフネグレクトにみられるサイン

セルフネグレクトでは、次のような変化がみられることがあります。

  • 入浴や着替え、洗濯をしなくなる
  • 食事を抜いたり、十分な栄養を取れなくなる
  • 掃除やゴミ捨てができず、住環境が悪化する
  • 必要な受診や服薬ができなくなる
  • 家賃や公共料金などの管理が滞る
  • 外出や人との関わりが減る

一つの項目だけでセルフネグレクトと判断するものではありません。

以前できていた生活管理ができなくなり、その状態が続いて健康や安全に影響しているかが重要な目安になります。

セルフネグレクトはなぜ起こる?

セルフネグレクトには一つの原因があるわけではなく、心身の不調や認知機能、生活環境などが重なって起こることがあります。

うつ病などによる意欲の低下

うつ病などで気力や活動性が低下すると、入浴や食事、掃除、受診といった日常的な行動にも大きな負担を感じることがあります。

認知機能や判断力の低下

認知症などによって、物事を計画したり順序立てて行ったりする力が低下すると、服薬や金銭管理、家事などが難しくなることがあります。

精神疾患やアルコールなどの影響

統合失調症や双極性障害、アルコールなどの問題によって、生活リズムや判断力が乱れ、セルフケアが低下する場合があります。

孤立や生活環境の変化

死別、失業、経済的な問題などをきっかけに生活が崩れ、社会的なつながりが乏しい状態が続くと、周囲からの支援も得にくい状態が続くと、セルフネグレクトが悪化することがあります。

これらの要因は単独ではなく重なっていることも少なくありません。

セルフネグレクトは若い人にも起こる?

セルフネグレクトは、若い世代でも、うつ状態や精神疾患、強いストレス、孤立などを背景にセルフケアが大きく崩れることがあります。

年齢にかかわらず、以前できていた生活管理が難しくなっているときは、その背景に心身の不調がないか確認することが大切です。

セルフネグレクトが続くと起こりうること

セルフネグレクトが続くと、生活環境の悪化だけでなく、心身の健康や社会生活にも影響が広がることがあります。

健康状態の悪化

食事や服薬、受診が十分にできなくなると、低栄養や脱水、持病の悪化などにつながることがあります。

生活環境の悪化

掃除やゴミ捨てができない状態が続くと、悪臭や害虫の発生、転倒しやすい環境になるなど、安全面の問題が生じることがあります。

孤立が深まる

生活環境を見られたくないという気持ちや、人と関わる負担から、家族や周囲との交流を避けるようになることがあります。

生活が崩れるほど支援を求めにくくなることもあるため、状態が深刻になる前に周囲とつながることが大切です。

セルフネグレクトに気づいたらどうする?

セルフネグレクトでは、生活全体を一度に立て直そうとすると、かえって負担が大きくなることがあります。

まずは、食事を確保する、必要な薬を飲む、寝る場所を整えるなど、健康や安全に直結することから優先します。

自分だけで難しい場合は、家族や身近な人、医療・福祉の支援を利用することも重要です。

家族や周囲の人が気づいたときは

セルフネグレクトが疑われる場合、本人に改善を求めても進展しないことがあります。

まずは、食事が取れているか、必要な受診ができているか、生活上の危険がないかなど、健康と安全に関わる部分から確認することが大切です。

また、本人が支援を拒む場合でも、家族だけで抱え込まず、必要に応じて医療機関や地域の相談窓口につなげることを検討してください。

医療機関や地域の支援につなぐ目安

相談先は、目立っている症状や生活上の困りごとによって異なります。

気分の落ち込みや意欲低下が続いている場合

うつ状態、不安、強い意欲低下、幻覚や妄想などがみられる場合は、精神科・心療内科への相談が選択肢になります。

物忘れや判断力の低下が目立つ場合

認知症などが疑われる場合は、かかりつけ医や認知症を診療する医療機関への相談を検討します。

高齢者で生活そのものが難しくなっている場合

介護や生活支援が必要な場合は、地域包括支援センターなど地域の相談窓口を利用できます。

デイサービスや訪問介護を活用することで、入浴補助などの介護を受けられるだけでなく、孤立感を軽減し、本人が社会的つながりを感じる機会を生み出すことができます。

また、場合により、清掃代行サービスや家事代行サービスの利用も選択肢となります。

食事がほとんど取れない、脱水が疑われる、持病が著しく悪化しているなど、健康や生命に差し迫った危険がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

セルフネグレクトは生活が維持しにくくなっているサイン

セルフネグレクトは、食事や清潔、健康管理、人とのつながりなど、これまで保てていた生活が少しずつ維持しにくくなっている状態として捉えることが大切です。

心理的・社会的要因などが影響していることもあるため、本人だけで抱え込まず、必要な支援につなげることが、生活を立て直すきっかけになります。

共に支え合う環境を築き、誰もが健康で豊かな生活を送れる社会を目指しましょう。

それでは皆さん、お大事に。

監修者
監修者プロフィール

ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童(Seido shimizu)

精神保健指定医/日本精神神経学会認定 精神科専門医/認知症サポート医/コンサータ処方登録医/


引用・参考文献

  • 厚生労働省.「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(国マニュアル)」令和8年3月改訂.
  • Yu M, Gu L, Shi Y, Wang W. A systematic review of self-neglect and its risk factors among community-dwelling older adults. Aging & Mental Health. 2021;25(12):2179-2190.
  • Hildebrand C, Taylor M, Bradway C. Elder self-neglect: the failure of coping because of cognitive and functional impairments. Journal of the American Association of Nurse Practitioners. 2014;26(8):452-462.
  • Lamkin J, Nguyen PT, Coverdale JH, Gordon MR. Towards a Definition of “Self-Neglect” in Psychiatric Patients: Descriptions of a Case Series. Psychiatric Quarterly. 2017;88(3):553-560.
  • Bratiotis C, Muroff J, Lin NXY. Hoarding Disorder: Development in Conceptualization, Intervention, and Evaluation. Focus. 2021;19(4):392-404.
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