自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

1. 概要

注意欠如・多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)と並ぶ、代表的な発達障害の1つです。対人関係の構築・維持が先天的に困難であり、それに加え環境など変化への弱さや頑固さ、興味の偏りや感覚過敏/鈍感さなどを特徴とします。神経回路の発達が平均的ではないため、物事の感じ方や体験の仕方も平均的ではなく、特に複雑な人間関係に必要な他者の感情理解に偏りがあります。しかし、1つのものに取り組む態度や他者と異なる認知特性が有利になる場面もあり、ASD特性が長所に繋がる可能性もあります。かつては自閉性障害(自閉症)、アスペルガー障害、広汎性発達障害と呼ばれていた歴史的背景があります。知覚処理のレベルから、情動不安定、社会的認知や注意、遂行機能障害などの高次認知機能不全まで広範な異常を呈する事もあり、その臨床像からLDやADHDの併存も認められる事があります。最近の疫学研究では、有病率は1%を超えており、男性は女性の3倍多いとされていますが、女性の表現型が異なるため、過小評価されている可能性もあります。ASDの傾向は遺伝しやすく、家族内に集積しやすいとされ、50〜80%の遺伝率を示したという報告もあります。典型例では1歳代で早期兆候が認められ、ライフステージを通して症状が持続していますが、個人差が大きく、幼児期後期に社会適応や情緒的、行動的問題が目立ち始めたり、社会人になってから様々な不適応の問題が出現してくる例も散見されます。適切な対応が遅れると、問題行動が持続しトラブルに発展したり、慢性的な不安から不登校・引きこもりに至り、自己肯定感の形成不全や社会機能の欠如に関連する可能性があります。

2. 原因

多数の遺伝子変異に起因するものとされます。その1例として、さまざまな精神疾患に関わるAUTS2遺伝子の変異が指摘されています。AUTS2遺伝子は、中枢神経のシナプス形成やその恒常性維持に関わっていますが、AUTS2遺伝子の異常でASDや統合失調症、トゥレット症候群や薬物依存など様々な精神疾患のリスクが上がるようです。また、結節性硬化症やダウン症、てんかんなどの身体疾患に合併しやすい事が知られています。また、大半のASDは環境要因も遺伝要因との複雑な相互作用で症状発現に関与すると考えられていますが、現時点では特異的な環境要因については特定されていません。

3. 診断

対人的・情緒的相互関係の欠陥、非言語的コミュニケーションの欠陥、対人関係の発展・維持能力の欠陥のうち全てが発達早期から存在しており、その上で
1)常同・反復的発話、動作、行動、道具使用
2)習慣への拘り、変化の回避
3)限定された興味
4)回転体、温痛覚、触覚、聴覚、嗅覚、光への鋭さ、鈍感さ
にうち2兆候が揃うことで診断されます。これらを判断するには両親など幼少期を知る人物からの客観的意見が参考になります。また、ASDでしばしば認められる能力の偏りをWAISと呼ばれる知能検査によって明らかにする事も診断に役立ちます。
幼少期では、発達に遅延がある例であれば、言語の遅れや対人場面でのアイコンタクトや呼名反応の欠如に加え、言語の遅れ、手をひらひらさせるような反復常同的な行動異常が顕著であり、1年6カ月健診で発見される事が多いです。しかし全般的な発達の遅れがない場合は年齢相応の遊び方や他者との関わり方を基準において判断するため、本人の幼少期をよく知る両親に、詳細な生活場面の聴取を行います。家庭のみならず保育・学校での生活ぶりも参考になるため、通知表も参考になる事があります。
先述の通り、症状が軽度だったり学生時代は適応できていた場合でも、青年期や成人期になって症状が目立ち始め、医療機関を受診する事も少なくありません。その場合は不安や抑うつ、職場不適応などを主訴とする場合が多いです。実際に、うつ病や不安障害、適応障害と診断される群の中には一定数ASD特性の高いケースが存在します。その場合は本人が疑わない限り、ASDの診断がつかずに適切な介入が行われることなく経過する例も散見されます。

4. 治療

ASDの治療の大原則は、生活場面の環境調整がファーストとなります。生活場面で本人のストレスが少なく、能力を生かせる場に環境調整をする事が大切です。予後が良い場合は、障害されている領域ではなく得意な領域を活かせる場で、才能を活かして社会的に成功している人もいます。療育や心理療法、リハビリテーションも行われる事があります。心理療法としては本人に対する認知行動療法、リラクゼーション法、対人技能訓練などが行われますが、最近では両親に働きかけるPACT(parent mediatedcommunication focused treatment in children with autism)と呼ばれる心理療法がコストが比較的かからないことから注目されています。PACTは2週に一度、2時間程度のセッションを親に施し、12回のセッションの後、半年間月に1度のフォローアップを続けるといった内容です。両親へのかい介入として現在日本でメジャーになっているのは療育ですが、早期発見、早期診断が大前提ではあるものの、実際には診断治療が遅れる事も多いです。音楽療法は、少なくとも社会的コミュニケーションの改善に関しては比較的明確に否定されているのが現状です。
環境調整やリハビリテーション、心理療法を検討した上で、それらで不十分な改善だったり、何らかの理由でそれらが出来ない場合には、薬物療法も検討されます。日本では、常同性、易刺激性、興奮、衝動性に対してリスペリドンやアリピプラゾールという薬剤に保険が適応されています。また保険適用外使用で、他の薬剤も使用される事があります。また、神経過敏に対して抑肝散加陳皮半夏、パニックやストレスに対して柴胡加竜骨牡蛎湯などの漢方薬も使用される事があります。オキシトシンは注目されており、個人輸入する患者さんもいるようですが、まだ効果は検証中であるのが現状です。ASDの特性を理解して周囲がサポートすることは、患者本人の行動や情緒を良い方向に変える力になり、トラブルを回避し適応力を改善させることに役立ちます。ASDの人々が受けられる支援については、地域の発達障害者支援センターや自閉症協会などの窓口、または発達障害情報・支援センターのサイトなどの公共サービスで案内を受ける事ができます。

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 医療法人社団 燈心会
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診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
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このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。