分離不安症とは
分離不安症とは
1. 概要
分離不安症とは、親などの主要な愛着対象からの分離に関する不安のことで、生活上の機能を妨げる病的なものであり、自宅、あるいは愛着を抱いている人から離れる事を過剰に恐れ、それから離れる事に抵抗する、と定義されます。大事な人から離れまいとする不安から、日常生活に支障をきたす事が多いです。小児期早期の正常な発達過程においては、生後6ヶ月前後にある程度は見られることであり、正常な発達では3歳以後は次第に愛着対象である母親などとの信頼が確立され、次第に離れることができるようになります。しかし分離不安症と診断される例では、学童期、思春期に至っても不安が持続し登園しぶりや不登校、引きこもりなどの社会生活上の問題を心配されて受診に至る事があります。思春期以降は直接的に愛着対象と離れる不安を表出することが少なくなり、頭痛、吐き気、下痢などの身体症状を主訴とすることも多いです。分離不安症は12歳以下、特に7−9歳に多く、学齢期全体では約3%。幼児期と思春期全体では4%程度いると言われます。就学前は有病率に性差はありません。社交不安症と遺伝的に類似している可能性が高いと言われ、他にも不安症や気分障害の4割に本疾患の併存が認められたとする報告や、衝動制御障害、物質使用障害との併存、複雑性悲嘆との関連も指摘されています。典型的には18歳以下で発症し、通常は成人期までに寛解する事が多い病態です。
2. 原因
気質と環境の双方が重要な病因と考えられています。引っ込み思案で不安が強い気質と、生活の変化や家族との関係性などの心理社会的要因が複雑に作用して発症に関連しているとされており、親の過干渉、過保護、ネグレクト、親側の分離不安などが発症リスクと関連することがわかっています。愛着がある人物の病気、離別、喪失や引っ越しなど、心理的ストレスが発症の契機となることがあります。また、子供要因として、発達障害の特性が発症に関与しています。遺伝も関連があり、本症の遺伝率は73%です。また、不安症をもつ成人が血縁関係にいると、本症の発症リスクも高くなります。
3. 診断
分離不安の強さが発達段階において不相応に強く、日常生活機能に支障をきたしており、かつ自閉症スペクトラム障害、統合失調症、広場恐怖症、全般性不安症、病気不安症などのように他の精神疾患で説明できない状態で、下記のうち少なくとも3つ以上の証拠が、18歳未満の場合4週間以上、18歳以上の場合6ヶ月以上持続していた場合に診断となります。
①愛着を抱いている人物や家からの分離が、予期または経験されるときの過剰な苦痛
②愛着を抱く重要人物を失うかもしれない、危害が及ぶかもしれないという過剰な心配
③愛着を抱く人物から分離される、誘拐されるなど運の悪い出来事を経験するという過剰な心配
④分離への恐怖による、出かけることへの抵抗や拒否
⑤愛着を抱く人物がいない状況で過ごすことへの持続的な抵抗や拒否
⑥家や愛着対象から離れて就寝することへの抵抗や拒否
⑦分離に関する悪夢の反復
⑧愛着を抱く人物から分離されることの経験または予期による身体症状(頭痛や腹部愁訴など)の反復する訴え
4. 治療