認知行動療法をセルフで⑭【ACT】。

認知行動療法ーACTーとは?

みなさんお加減どうですか?

どうも。いつも診る院長の清水です。

 

前回は、【ロールアクト】スキル

モテる話でしたね?

モテたい方は、ちゃんと、復習しておいて下さいね笑

 

今日は皆さんに、

新世代の認知行動療法といわれる、

ACTをご紹介したいと思います。

そもそもACTは、

Acceptance and commitment therapy
(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の略です。

直訳すると、受容と約束、という意味ですが、ちょっと謎ですね。

以下から、より詳しくACTについて解説していきます!

 

感情や思考をコントロールせず、受け止める

ACTがなぜ、新世代の認知行動療法と言われているのか、というと

様々な技法の要素を取り入れているからだと思われます。

例えば、

「今、ここになにが起きているか」に没頭する意味では

リラクゼーション法のマインドフルネスと似ていますし、

自分を客観視したり、価値のある人生を選ぶ為に効果的に行動する、

という意味では従来の行動療法的です。

最終的に目指すゴールとしては、

痛みに逆らわず、受け入れ、

有意義な人生を創造することにあります。

感情のコントロールを手放す

ACTの目指すゴールを例える比喩があります。

例えば・・・

 


認知行動療法(ACT)のイメージ

底無しの穴の横に立っているご自身を想像してみてください。

穴の反対側には、大きな怪物が立っています。

その怪物は、あなたが恐れ、避けている、あらゆる思考や感情からできています。

あなたの全ての不安、痛み、怒り、悲しみが、この大きな怪物の中に蓄えられています。

怪物は長い綱をもっており、その綱のもう一方の端をあなたが握っています。

あなたと怪物は、その綱を引き合っている苦しい綱引きの真っ最中。

あなたは、「私はこのまま引っ張られて穴に引きずりこまれるのか」と恐れ、震えながら全身全霊で綱を引っ張っています。

これが、自分の否定的な思考や感情をコントロールしようという努力です。

 

突然、あなたは別の事を試そうと決意します。

それは、綱を手放し、それを地面に落としてしまうことです。

残念ながら、ご自身の足下にある巨大な穴も、

向かい合っている怪物も、

依然存在していますけども、

あなたは、もはやもがく必要もなく、

穴に引きずり込まれる事を恐れてもいません。


 

これが、ACTのゴールとする「感情のコントロールを手放す」という考え方です。

嫌な気分や思考は、確かにそのまま残っても、

それを受け入れ、戦わなければ良いのです。

ACTの中心的治療過程

ACTは、6つのSTEPで構成されています。

①今、この瞬間と接触
現在、この場所で、自分が行っている事を認識し、完全にそのことに没頭する

②受容
思考や感情に対して、葛藤したり、過度に注意に捉われず、その出現や消滅を許容する

③自己観察者
対局的見地から自己観察し、自分と、その思考や感情とを区別する

④認知的脱融合
一歩離れて自分の思考を観察し、それらを絶対的事実や恐ろしい体験ではなく
一過性の内的な出来事として見る事ができる

⑤価値観
自分個人として何が重要ないし有意義かを明確にし、自らの人生においてどのような人間でありたいかを定義づける

⑥価値ある人生を送るための同意し選択した行動を実行する
自分の重視する価値観に基づいてゴールを設定し、それを達成するための効果的な行動を実行する

 

・・・・・うーん。ちょっと抽象的すぎて何を言っているか、さっぱり・・・

って感じですよね。

 

でも、ご安心を。

この①から④をまるっと体験できる、

実際のエクササイズをこれからご紹介します!

 

認知行動療法ーACTーを体験してみましょう

さあ、ACTのエクササイズを実際にやってみましょう。

 

このエクササイズは目を閉じて視界に映る情報を遮断する必要があるのですが、

そうするとこの記事が読めなくなってしまうので(笑)、

まずはご一読いただいてから、行うといいでしょう。

実際は、このようにやっていきます。

まず、セラピストは以下のようにあなたに語りかけます。

 

いつも診る院長
まず、目を閉じて下さい。座って、できるだけ楽な姿勢でリラックスできる状態でいて下さい。

 

よろしいですか?それでは、続いて、以下のように指示を出します。
いつも診る院長

想像して下さい。

あなたは、川の縁に座っています。

そして、ぼんやりと上流から下流に流れている、川の流れを見ています。

そんなあなた自身を、想像して下さい。

ぼんやりと川の流れをみていると、大きな葉っぱが、流れてくるのがみえます。
葉っぱは、川の流れにしたがって、ゆっくりと、あるいは早く、あなたに向かって流れてきます。
そして、それはあなたの前を通り過ぎ、やがて、遠ざかっていきます。

そしてついには、その葉っぱは、あなたから見えなくなってしまいます。

 

認知行動療法(ACT)のイメージ
想像できたでしょうか?
できましたら、セラピストは次のように、あなたに語りかけます。

 

いつも診る院長

・・・今度はゆっくりと、ご自身の呼吸に意識を集中します。しばらく呼吸していると・・・ある、「考え」や「感情」に、気づきますか?

それは、例えば、「息が苦しいなあ」という考えかもしれません。

あるいは、「悲しい」という感情かもしれません。

はたまた、「こんなことをして、意味があるのか?」という考えかもしれません。

それを、ただ、視覚的にイメージして下さい。

 

そう、その調子です。

 

イメージができていれば、

 

セラピストは以下のようにあなたに語りかけます。

いつも診る院長
そして、そのイメージを、流れてくる葉っぱの上に、ピン留めしていくのです。
葉っぱにピン留めされた「考え」のイメージは、
ただゆっくり、川の流れのままに、あなたに近づき、いずれは遠ざかっていきます。
それが最終的に見えなくなるまで、ただ、観察して下さい。

 

もしかしたら、意識がこのエクササイズが外れて、

 

あなたを悩ませている思考に囚われてしまう事もあるかもしれません。

 

その場合は、セラピストは以下のように教示します。

 

いつも診る院長
時々、意識がこのエクササイズからズレても、気にしないでください。
それは当然のことなので、悩む必要すらありません。その場合は、
ただ穏やかに注意をエクササイズに戻せばよいのです。
葉っぱの動きを早めたり、遅くしたりする必要もありません。その考えをどうにか変えようとする必要もありません。
さあ、浮かんでくる思考や、あるいは感情を、流れてくる葉っぱにピン留めし続けましょう。
そして、それらがただ、流れていき、いずれ見えなくなることを感じて下さい・・・。

 

数分間このエクササイズを続け、

流れてくる葉っぱにピン留めする思考、あるいは考えがなくなった、

 

あるいは少なくなったな、と感じたら、ゆっくり目を開けます。

 

さあ、実際にやって見た方は、気分はいかがでしょうか?

 

少しくらい、気分がマシになれば良いのですが。

 

このエクササイズでは、思考や感情を、脊髄反射的に事実そのもの!と確信する前に、

 

一歩離れて観察できるように考案されています。

 

そして、その思考や感情が脅威となることのない、一過性のものであると感じるような

手続きになっているんですね。
(そのために、思考や感情を視覚的にイメージし、いずれ遠ざかる葉っぱにピン留めしたんですね)。

 

普段、勝手に出てくる思考(=自動思考)に、

 

「〜と、私は思った」と付け加えるだけでも意味がありますよ。

ACTでは、先ほどのエクサイズだけでなく、⑥価値のある人生を送るための行動を選択、実行する事

が重要、という行動療法的側面もあるのでした。

 

その点に関しても、少し話しておきましょうか。

価値のある方向へ人生を歩む

自分がバスの運転手であると想像してみましょう。

 

 

認知行動療法(ACT)のイメージ

指定された目的地に向かってバスを走らせていたあなたは、

最初のバス停で数人の、〝タチの悪い客〟を乗せてしまいます。

この客たちは、あなたの「不安」「怒り」「悲しみ」に相当します。

彼らは、運転手であるあなたに対して、

決めていた目的地ではなく

「別のところへ連れて行け!」

と騒ぎ立てます。

彼らが問題を起こすのを避けるため、

あなたは渋々彼らに従いバスを走らせますが、やがて、

本当の目的地からかなり離れてしまっている事に気がつきます。

 

うんざりしたあなたは、彼らタチの悪い客たちを

降車させようと試みますが、彼らは暴力的に抵抗し、

乱闘騒ぎになります。

今は、バスはちっとも動きません。

やがてあなたは彼らにこう伝えます。

 

「もうたくさんだ。

言いたいことは分かったが、

今後、どこに向かうかは

運転手である私が決める!」

 

その後も相変わらず彼らタチの悪い客は騒ぎ続けますが、

あなたはそれを無視して、目的地に向かってバスを走らせるだけです。

結局、その厄介者たちは席に座り、あなた自身が決めた方向にバスを運転する事を

受け入れますー。


いかがでしょうか。

この例えの要点は、

人生の運転手であるご自身を妨げる不快な考え・感情(タチの悪い客)に

かまっているのは生産性に欠けることであり、

またご自身の運転(行動)を断固としてやれば、

やがて不快な考え・感情(たちの悪い客)も

コントロールできるようになるのだ、という事です。

 

それでは、早々に目的地を決めて、

あなたのバスを走らせるために役立つ、

5つの質問をここに、ご紹介しましょう。

 

 

いつも診る院長
① あなたにとって、「自分がそうなりたい」と思える人は、どのような人ですか?
② あなたは、自分の人生で、何を表現したいと思っていますか?
③ あなたの葬儀で、残された人たちから、何と言われたいですか?
④ それらの価値観に合致するために、どのような行動をとるべきですか?
⑤ ④のような行動によって、あなたに不快な思考や感情が芽生えたとしても、その行動を実行したいですか?

いかがでしたでしょうか。

ACTは奥が深く、文章だけで説明する事はかなり困難ですが、

その一部だけでも触れていただければと。

 

ACTは比較的新しい技術で、

実際にACTができるところは数少ないですが、存在しますので、

興味のある方は調べてみて下さいね。

 

それでは次回のスキル【アサーショントレーニング】でお会いしましょう。

そのときまで、お大事に。

 

更新:2024.1.25

 

執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

 

 

>

 医療法人社団 燈心会
ライトメンタルクリニック
東京都新宿区西早稲田3丁目20-3レガリアタワーレジデンスB1F
TEL 03-6457-6040 FAX 03ー6457-6041
診療日・時間
 月〜金 10:00~13:00、14:00~18:00、19:00~22:00
 土・日 10:00~13:00、14:00~18:00
※土・日の19:00~23:00はカウンセリングのみ
※祝日は原則診療

診療科目 心療内科、精神科、児童精神科、美容皮膚科

ライトメンタルクリニックは、新宿・高田馬場にて夜間診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。次に掲げる考え方のもと、「夜間・休日含む常時診療」「非薬物療法の充実」「遠隔診療の実施」「プライバシーの配慮」の4つを特徴とし、精神科・心療内科受診に抵抗のある方にこそ選ばれる医院を目指しております。
1.心身に不調を感じているにもかかわらず、日中忙しいことにより精神科・心療内科の受診を躊躇する方のニーズに応えるため、当院は日中の診療に加え、夜間・休日診療も行います。
2.副作用のリスク等から、薬物療法に抵抗感を感じる方にも精神科・心療内科の受診を検討いただけるよう、非薬物療法を充実させています。
3.通院が困難な方のニーズに応えるため、オンライン診療を実施しています。
4.仕切りを設けた待合室により、患者さま同士が極力顔を合わせずに診療を終える事ができます。
このほか、夜間のひとときをリラックスしてお過ごしいただけるための環境整備に努めてまいります。