認知行動療法ーイメージ技法ーとは?

はいはい、お加減はいいでしょ?

ねぇ?

私の記事読んでるおかげで、大体はお加減はいいですもんね?

 

どうせいつも診る院長の清水ですよ。

 

もう私のCBT談義にも、飽き飽きしてきたころでしょう。

 

今回はそんな飽き性の皆様に、ちょっとスピリチュアルな方法をご紹介しますよ。

 

あ、ちょっと興味わきました???

イメージ技法は、脳裏に浮かぶ映像によって再体験させる方法

患者さんの多くは、自動思考を言葉だけでなく、

脳裏に浮かぶ映像として体験していることがあります。

 

今回も説明を分かりやすくするため、

当院に通院していたGさんに登場していただきましょう。

 

イメージ技法①

 

Gさん(じーさん)、という音感にはそぐわない、

スタイルのよい美人さんですが、

実は家庭環境に問題があり、虐待、いじめのサバイバーです。

なるほど・・・・

つまりGさんは「私は人から好かれていない」

と考えて、悲しくなったわけですね?

イメージ技法①

・・・そうです(落涙)

その時、頭の中で何かイメージが浮かびましたか?

イメージ技法①

・・・どういう意味ですか?

「私は人から好かれていない」と考えているとき

具体的にはどのような情景が頭に浮かんでくるんでしょうか?

イメージ技法①

えぇっと・・・そうですね・・・

昔のことを思い出したんです。

クラスで一人だけ浮いていた時のことを

ほうほう。

差し支えない範囲で結構ですが、クラスでどのように浮いていたのでしょう?

クラスにいる自分を想像してみてください。

あなたには何が見えますか?

イメージ技法①

あれは給食の時間でした。

食べるのが遅かった私は、男の子たちから昼休みずっとはやし立てられて・・・

「のろま!のろま!」って・・・

なるほど。

そのように脳裏に浮かんでくる映像とか画像、想像や記憶のことを「イメージ」っていうんですよ。

イメージについての心理教育を行い、必要に応じてイメージを膨らませる

イメージができるだけ具体的であればあるほど、介入が容易になるので

治療者は、イメージを呼び起こすような質問を投げかけます。

 

なお、その際には不快なイメージによって、不快な感情を想起し

本人を苦しませることになる可能性があることを十分に共有し、患者さんの不安を和らげます

 

Gさん。

人が浮かべるイメージは千差万別です。

突拍子のない変わったものもあれば、不快な、悲しい

暴力的な感情を伴うものあります。

しかし、それが普通なんです。

最近思い浮かんできたイメージはありますか?

イメージ技法①

特に思い浮かびません

あなたは、先ほどクラスメイトにいじめられていた話をしてくれましたよね?

その時、私の頭にはクラスの中で孤独なあなたと、それを囲む男子児童の映像が浮かんだんですよ。

でも、私があなたのクラスメイトのことを知るわけないですよね?

こういう自分勝手なものでいいから、思い出したイメージがありますか?

イメージ技法①

・・・・・。

そういえば、お母さんに頼みごとをしたときに

思い浮かんだ映像がありました。

何が見えましたか?

イメージ技法①

自宅の和室に私がいます。

当時小さかった私は、折り紙の折り方が分からなくて悩んでいます。

ふと、お母さんに聞けば解決するんだという考えが

思い浮かびます・・・・・

お母さんは、目の届くところにいますか?

お母さんが、何をしているか想像できますか?

イメージ技法①

お母さんは洗濯物のたたんでいて、すぐ隣に部屋にいました。

私は駆け寄って

「お母さん、これどうしたらツル折れるの?」と話しかけます・・・・

お母さんに話しかけている自分を想像してくださいね。

お母さんは、どんな様子ですか?

イメージ技法①

私がお母さんの手を握ると、表情を曇らせ

うざったそうに手を振り払います。

「うるさいわね!お母さんは忙しいの!!

 折り紙なんか、なんで一人でできないの!!」って・・・(声が震える)

認知行動療法ーイメージ技法ーの実践

イメージがある程度定まってきたら、次はそのイメージを処理していきます。

 

まずは、簡単かつ強力なスキル「イメージを最後まで追う」にトライしましょう。

 

さて、Gさん。

あなたは、お母さんに拒絶的に振る舞われて

どんなことを考えましたか?

イメージ技法①

なんでそんな冷たい言い方するんだろうって考えました。

私はお母さんのこと好きなのに、どうしてかまってくれないんだろう・・・

もしかして、この家に必要ないのかな、とまで

考えてしまいました・・・

とても悲しくて・・・絶望的な気持ちです。

他には何かありますか?

イメージ技法①

絶望感に打ちひしがれて、泣いているだけです。

うーん、他には?

イメージ技法①

いいえ、特に何も。

分かりました。

実はこうしたことはよくあるのですが、あなたは

最悪の時点でイメージをやめてしまっていましたね。

母から必要とされず、絶望感で泣いてしまっている。

今から、その後どうなるかを想像してください。
イメージ技法①

えぇ?考えたこともありません。

あなたはその後、一日中泣きっぱなしなのですか?

イメージ技法①

そんなことないと思います。

その後どのようになるか、想像できますか?

イメージ技法①

ずっと泣いているうちに、のどが渇いてきました。

私は泣き止んで、飲み物がないか、冷蔵庫を開けています・・・

それから?

イメージ技法①

お気に入りのヤクルトドリンクを持ってきて、

一気に飲み干します

ヤクルトを飲み干している自分の姿を想像してくださいね。

さて、そのあとは?

イメージ技法①

折り紙の解説本を持ってきて、折鶴の折り方を勉強します

いいですね!

それで?

イメージ技法①

折鶴を折る作業に没頭しています。

そのあとは?

イメージ技法①

気が付いたら、5羽ほど出来栄えの良い折鶴ができたことに気が付きます。

 

さぁ、どうでしょう?

お母さんから拒否された時の気分と、今の気分では違いがありますか?

イメージ技法①

今のほうがだいぶマシです。

 

如何でしょうか?

 

この技法は、最悪のところで止まってしまったイメージを次々と追っていき、

少しラクになるところまで追いかける、という技法です。

 

この方法を練習すると、不快なイメージから少し楽なイメージになり、
感情的にも改善が期待できそうだと思いませんか?

 

しかし、この技法にもうまくいかないときがあります。

それは・・・

さらに破局的な場面をイメージし、感情がさらに悪化してしまった場合です。

破局的終末の意味を概念化する

さて、Gさん。

あなたはお母さんに拒絶されてしまって、泣いているのですね。

その光景を詳しく頭の中に思い浮かべてください。

その後どうなりますか?

イメージ技法①

お母さんが「そんなに泣いても、何も解決しないのよ!」と声を荒げています。

そのあとは?

イメージ技法①

私はもっと悲しくなって、一層大きい声で泣いています。

その後あなたはどうなりますか?

イメージ技法①

お母さんが近づいてきて、

私にぴしゃりと平手打ちをします。

うーん。それからお母さんは?

イメージ技法①

その後も、私が泣き止まないのでお母さんは

「うるさいのよ!あんたなんて生まれてこなければよかったのに!」と叫びながら、私を殴り続けます…(涙ぐむ)

それで、どうなりますか?

イメージ技法①

わかりません・・

これ以上は考えられません・・・(鼻をすすりながら)

Gさん。

もう少し先まで考えてみませんか?

あなたが殴り続けられることで、一番つらいのはどのようなことですか?

イメージ技法①

お母さんが私を必要としていない、そして私は無価値な人間だって感じる事です。

 

前回と異なり、イメージが破局的な結末で終わってしまっている場合でも、

「それがどのようなことを意味しているか」
「自分にとって、そのイメージの何がつらいのか」

が対話によって明らかになることがあります。

 

このケースでは、お母さんに拒絶されたことで、私は必要とされていない存在だと考えることがつらかった、と苦痛の意味を概念化できています。

 

 

 

それができると、さらなるイメージ技法を試すチャンスが広がります。

時間を先取りする、概念化した意味をポジティブに解釈する

なるほどね・・・

お母さんから必要とされていない、という考えが辛いんですね。

そしてその考えは、現在までも続いている。

違いますか?

イメージ技法①

大体そんなところです。

今後もその考えは、変わらないのでしょうか?

イメージ技法①

これだけの年月変わらないのだから、おそらくそうでしょうね。

それでは、あなたの10年先を想像してください。

あなたはどうなっていますか?

イメージ技法①

んーーー。

今の彼氏と結婚してるかな・・・

子供ができていたり?

イメージ技法①

さぁ?そうかもしれません。

あなたに娘ができたとして、

「折り紙の折り方を教えて!」と言われることを想像できますか?

イメージ技法①

はい。

まぁそれはあり得る話ですね。

じゃあ、娘さんはなんと言ってくるでしょうか?

イメージ技法①

娘は控えめな性格で、あまり露骨には私のもとにお願いしに来ません。
でもそれを察した私が近づくと、嬉しそうな顔で折り紙の本を開きます・・・

いいですね!それで、あなたはどんな気持ちですか?

イメージ技法①

満たされるような気分です。

すばらしい。

それでは、あなたのお母さんから必要とされなくても、自分の娘は自分を必要としてくれる・・・ということかも知れないですね。

イメージ技法①

そうなのでしょうか。

ところで、あなたがされてきたのと同じように、怒りのままに娘を殴ってしまう、というイメージはできますか?

イメージ技法①

まさか。考えられません。自分の娘に手をあげるなんて、そんなひどい事

それは、「ひどい目にあってきたからこそ、自分の娘には同じ目にあわせたくない」
ということでしょうか。

イメージ技法①

そうかもしれません。

もしかすると、ご自身が虐待されてきたのは

たった一つ、ポジティブな意味がありそうなんですよ。

その点に気づくことができますか?

イメージ技法①

はい。

母とは違うやり方で娘と接しようと思うことができたことだと思います。

母を反面教師にして子育てしようと思えたこととか

素晴らしいですね。

では、今の気分は最初と比べてどうですか?

イメージ技法①

そうですね。

少しは楽になったと思います。

 

如何でしょうか?

 

イメージを捉え、状況が楽になるイメージになるまで時間を追い
破局的な結末になったらそこから苦しい理由を明らかにする

この一連のやり取りがご理解いただけたら幸いです。

 

破局的な結末になった以後も、時間を先取りしてイメージの中で脅威を減らしたり

破局的な概念をポジティブに解釈しなおすことで、不快感を減らせることもあります。

 

 

次回は、他のイメージ技法にも触れる予定です。

 

 

 

今回の方法がいいなと思った方は、次回も楽しみにしていてください!

 

 

 

 

それでは次回のスキルまで

 

お大事に

 

 

【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社