認知行動療法をセルフで⑰【イメージ技法②】。

認知行動療法ーイメージ技法ーの続き

 

みなさんお加減どうですか?

どうも。いつも診る院長の清水です。

今日は、前回のイメージ技法初級編に続き、応用編ですよ。

イメージ技法は、あまりごちゃごちゃ頭を使わない、

直感的な方法ですので、面倒が嫌いな人にはお勧めです。

さあ、いってみましょう!

認知行動療法イメージ技法ー応用編ー

 

イメージとは、自然と脳裏に浮かんでくる、画像、映像、想像のことでしたね。

全員とまではいきませんが、多くの患者さんは、勝手に浮かんでくるイメージの中で、

自動思考を体験しています。

不快なイメージを頻回に体験している場合には、いくつかのイメージ技法を

繰り返し練習することが役立ちます。

認知行動療法

イメージの中で対処する

さあ、前回に引き続き、Gさんに登場していただきます。

Gさんは、虐待、いじめのサバイバーで、

自己肯定感が著しく低い、美しい女性でしたね。

ちなみに、仕事はモデルをやっています。

 

さあ、イメージ技法の応用編、第一弾です。

それは、思い浮かぶ困難な状況に対して、イメージの中で対処する、

という技法です。


 

いつも診る院長

つまり、撮影の後、次の撮影までの待ち時間をイメージして、そこで困ってしまったのですね?
みんな和気藹々と談笑しているのに、自分だけ取り残された気がして?

 

Gさん
・・・そうです。

 

いつも診る院長

あれ。またもや、イメージが最悪の時点で止まってしまってますね。

Gさん
そうみたいです。

 

いつも診る院長

もう一度イメージをやりなおして、問題に対処できないか考えてみませんか?

 

Gさん

わかりました。

・・・・撮影が終わると、監督が「はいOK!」と言い、助手さんたちが「オッケーでーす」と声を張るのが聞こえます。
他のモデルさんも、スタッフの皆さんも、「はいお疲れさまでした~」と言って、現場から離れていきます。

 

いつも診る院長
それから?

 

Gさん
仲のいいスタッフさん同士で談笑が始まります。私をそれをただ見て・・・いるのをやめて、他のモデルの子たちが待つ、控え室に向かいます。

 

いつも診る院長

いいですね、それから?控え室はどのような様子ですか?

 

Gさん
控え室には数回は話した事のある、モデルの子がいます・・・。私が伏せ目がちに会釈すると、
その子も会釈を返してくれます・・・。
その後、相手のほうから「今日暑いですよね~」と話しかけてくれます・・・。

このようにして、イメージの中でうまく対処できるように

治療者は患者さんを誘導します。

自分でこの技法を行う場合は、

これまで身につけた技法をイメージの中で使っていただいて構いませんし、

イメージの中で行動実験を試すのも有効でしょう。

イメージを変える

イメージは、あくまでイメージでしかありません。

イメージの言いなりになる必要はないのです。

イメージは、現実に沿う形で結末を変えたり、

魔法のように別の形に変える事だってできるのです。

 


いつも診る院長

Gさん、イメージは変えてもいいんですよ。ちょうど映画監督のように、やりたいようにやってもいいんです。実際にはあり得ないような、魔法みたいな方法でもいいし、現実的な方法でもいい。
やってみると、楽になることもありますよ。

 

 

Gさん
何をおっしゃりたいのか、あまり良く分かりませんが・・・

 

いつも診る院長

例えば・・・そうですね、じゃあ、周りが談笑している中、
一人ぽっちになっているとき、どのようになったらいいと思いますか?

 

 

Gさん
他のモデルの子がこっちに来て、話しかけてくれるといいですね。
その後、ランチに誘われたりするともっと楽しいと思います。

 

いつも診る院長

なかなかいい結末ですね。もっと非現実的な、ドラマティックなものは?

 

 

 

Gさん
菅田将暉がいきなり現場に来て、デートに誘われる、とか?(笑)

 

いつも診る院長

確かに(笑)これだと一気に楽しくなりそうですね。
そういうイメージをすると、気分はどうなりそうですか?

 

 

Gさん
いいです。でも、実際にそんなこと起こるわけないから。

 

いつも診る院長

そうですね。こんなことが起こるわけないし、他のモデルにランチに誘われるかどうかもわかりません。わかるのは、悲しいことをイメージすると、悲しくなることだけです。
それに、どのようにしたらより良いイメージに近づけるのか、検討することができますよ。
例えば、どのようにしたら他のモデルからランチに誘われやすくなるか。
素敵な異性と出会う確率を上げるには、どうしたらよいか。

 

このケースのように、イメージを変えることによって、

現実の問題解決を含む生産的な話し合いに繋がることもあります。

 

イメージの現実検討を行う

イメージを、あたかも自動思考を修正するように、

「ソクラテス式質問法」や「行動実験」を使って修正を試みると、

気分が改善することがあります。

 


いつも診る院長
病院で診断されたことを妹さんに伝えたら、妹さんに嫌な顔をされることを
イメージしてしまったんですね?

 

Gさん
はい。妹は私のことを世間の恥だと思っていますから・・・

 

いつも診る院長

それで、そのとおりだと?

 

Gさん
はい。

 

いつも診る院長

そんな時こそ、昔体得したスキルがありましたね。
さあ、「私は世間の恥だ」と考える根拠はなんですか?
また、その考えに反論できるとしたら、その根拠は無いでしょうか?
……バランスのとれた考えは、導けるでしょうか?

 

Gさん
はい。これは認知再構成法ですね?

 

いつも診る院長

そのとおり。違うアプローチもありますよ。
あなたのイメージは本当に正しいのか、確認してみましょう。
例えば、実際に妹さんに病院での出来事を話して、予想通り嫌な顔をするのかどうか、
試してみることは出来ますか?

 

Gさん
うーん、ちょっと怖いです。

 

いつも診る院長

どのような結果になるのが怖いのですか?

 

Gさん
嫌な顔をされて、「お姉ちゃんは家族に迷惑かけてばっかりだよね」と文句を言われます。

 

いつも診る院長

それでは、そのようになった時にどう行動するのか、考えておくと不安は和らぐと思いませんか?
もしくは、そうならないようにする為には?

 

Gさん
ああ思い出した。これは問題解決法ですね。

 

いつも診る院長

そのとおり。

イメージを反復する

イメージ反復法は、イメージの内容が現実離れして悲観的、

破局的な場合に役立つことが多いです。

何度も繰り返しイメージし続けるだけ。簡単ですね。

イメージ反復を開始する前と後で、

苦痛がどのように変わったのか確認していきます。


いつも診る院長

さて、Gさん。あなたのイメージはこうですね?
友達とランチをしていると、急に気分が悪くなって吐いてしまう。それを見た友達は「大丈夫?」と言って店員さんを呼ぶ。
店員さんに勧められて、あなたはお手洗いに行き、吐き気がするままに吐く・・・。
ようやくスッキリしてお手洗いから出たが、テーブルに友達の姿はなく、その後お詫びの連絡をしようとしたら、友達から「人前で吐くとか、マジ無理だから」とLINEが来ていた。
あなたはこう思う、「また、嫌われてしまった・・・」。

 

Gさん
そうです。

 

いつも診る院長

もう一度イメージできますか?同じように始めて、どのようになるか見てみましょう。

 

Gさん
(目を閉じながら)はい。やってみます・・・。

 


(10分経過後)

 

いつも診る院長

どうですか?できましたか?

 

Gさん
やっぱり、吐き終わると友達はいなくて、連絡しても友達から返信がなく、絶望的な気分になりました。

 

いつも診る院長

あれ?今回は、友達から「まじ無理だから」とLINEは来てなかった訳ですね?

 

Gさん
そうですね。返信がなかっただけです。

 

 

いつも診る院長

いいですね、では、もう一度繰り返してみましょう。

 

 

Gさんの場合は、4回ほどイメージを繰りかえしてみましたが、

最終的には、『後日友達から「ちょっとびっくりしちゃって」とLINEが返ってきた』

という結末に変化させることができ、絶望感は改善しました。

このように、何度もイメージを反復すると、

現実離れしたイメージに自ら気付いて、

不快感の少ない現実的なイメージに変化させることができる場合があります。

それでは、次は怒りをコントロールする、

アンガー・マネジメントスキルで、

お会いしましょう!

その時まで、お大事に。

 

【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社

更新:2024.1.25

 

執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

 

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