認知行動療法ーイメージ技法ーの続き
みなさんお加減どうですか?
どうも。いつも診る院長の清水です。
今日は、前回のイメージ技法初級編に続き、応用編ですよ。
イメージ技法は、あまりごちゃごちゃ頭を使わない、
直感的な方法ですので、面倒が嫌いな人にはお勧めです。
さあ、いってみましょう!
認知行動療法イメージ技法ー応用編ー
イメージとは、自然と脳裏に浮かんでくる、画像、映像、想像のことでしたね。
全員とまではいきませんが、多くの患者さんは、勝手に浮かんでくるイメージの中で、
自動思考を体験しています。
不快なイメージを頻回に体験している場合には、いくつかのイメージ技法を
繰り返し練習することが役立ちます。
イメージの中で対処する
さあ、前回に引き続き、Gさんに登場していただきます。
Gさんは、虐待、いじめのサバイバーで、
自己肯定感が著しく低い、美しい女性でしたね。
ちなみに、仕事はモデルをやっています。
さあ、イメージ技法の応用編、第一弾です。
それは、思い浮かぶ困難な状況に対して、イメージの中で対処する、
という技法です。
つまり、撮影の後、次の撮影までの待ち時間をイメージして、そこで困ってしまったのですね?
みんな和気藹々と談笑しているのに、自分だけ取り残された気がして?
あれ。またもや、イメージが最悪の時点で止まってしまってますね。
もう一度イメージをやりなおして、問題に対処できないか考えてみませんか?
わかりました。
・・・・撮影が終わると、監督が「はいOK!」と言い、助手さんたちが「オッケーでーす」と声を張るのが聞こえます。
他のモデルさんも、スタッフの皆さんも、「はいお疲れさまでした~」と言って、現場から離れていきます。
いいですね、それから?控え室はどのような様子ですか?
その子も会釈を返してくれます・・・。
その後、相手のほうから「今日暑いですよね~」と話しかけてくれます・・・。
このようにして、イメージの中でうまく対処できるように
治療者は患者さんを誘導します。
自分でこの技法を行う場合は、
これまで身につけた技法をイメージの中で使っていただいて構いませんし、
イメージの中で行動実験を試すのも有効でしょう。
イメージを変える
イメージは、あくまでイメージでしかありません。
イメージの言いなりになる必要はないのです。
イメージは、現実に沿う形で結末を変えたり、
魔法のように別の形に変える事だってできるのです。
Gさん、イメージは変えてもいいんですよ。ちょうど映画監督のように、やりたいようにやってもいいんです。実際にはあり得ないような、魔法みたいな方法でもいいし、現実的な方法でもいい。
やってみると、楽になることもありますよ。
例えば・・・そうですね、じゃあ、周りが談笑している中、
一人ぽっちになっているとき、どのようになったらいいと思いますか?
その後、ランチに誘われたりするともっと楽しいと思います。
なかなかいい結末ですね。もっと非現実的な、ドラマティックなものは?
確かに(笑)これだと一気に楽しくなりそうですね。
そういうイメージをすると、気分はどうなりそうですか?
そうですね。こんなことが起こるわけないし、他のモデルにランチに誘われるかどうかもわかりません。わかるのは、悲しいことをイメージすると、悲しくなることだけです。
それに、どのようにしたらより良いイメージに近づけるのか、検討することができますよ。
例えば、どのようにしたら他のモデルからランチに誘われやすくなるか。
素敵な異性と出会う確率を上げるには、どうしたらよいか。
このケースのように、イメージを変えることによって、
現実の問題解決を含む生産的な話し合いに繋がることもあります。
イメージの現実検討を行う
イメージを、あたかも自動思考を修正するように、
「ソクラテス式質問法」や「行動実験」を使って修正を試みると、
気分が改善することがあります。
それで、そのとおりだと?
そんな時こそ、昔体得したスキルがありましたね。
さあ、「私は世間の恥だ」と考える根拠はなんですか?
また、その考えに反論できるとしたら、その根拠は無いでしょうか?
……バランスのとれた考えは、導けるでしょうか?
そのとおり。違うアプローチもありますよ。
あなたのイメージは本当に正しいのか、確認してみましょう。
例えば、実際に妹さんに病院での出来事を話して、予想通り嫌な顔をするのかどうか、
試してみることは出来ますか?
どのような結果になるのが怖いのですか?
それでは、そのようになった時にどう行動するのか、考えておくと不安は和らぐと思いませんか?
もしくは、そうならないようにする為には?
そのとおり。
イメージを反復する
イメージ反復法は、イメージの内容が現実離れして悲観的、
破局的な場合に役立つことが多いです。
何度も繰り返しイメージし続けるだけ。簡単ですね。
イメージ反復を開始する前と後で、
苦痛がどのように変わったのか確認していきます。
さて、Gさん。あなたのイメージはこうですね?
友達とランチをしていると、急に気分が悪くなって吐いてしまう。それを見た友達は「大丈夫?」と言って店員さんを呼ぶ。
店員さんに勧められて、あなたはお手洗いに行き、吐き気がするままに吐く・・・。
ようやくスッキリしてお手洗いから出たが、テーブルに友達の姿はなく、その後お詫びの連絡をしようとしたら、友達から「人前で吐くとか、マジ無理だから」とLINEが来ていた。
あなたはこう思う、「また、嫌われてしまった・・・」。
もう一度イメージできますか?同じように始めて、どのようになるか見てみましょう。
(10分経過後)
どうですか?できましたか?
あれ?今回は、友達から「まじ無理だから」とLINEは来てなかった訳ですね?
いいですね、では、もう一度繰り返してみましょう。
Gさんの場合は、4回ほどイメージを繰りかえしてみましたが、
最終的には、『後日友達から「ちょっとびっくりしちゃって」とLINEが返ってきた』
という結末に変化させることができ、絶望感は改善しました。
このように、何度もイメージを反復すると、
現実離れしたイメージに自ら気付いて、
不快感の少ない現実的なイメージに変化させることができる場合があります。
お会いしましょう!
その時まで、お大事に。
【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社
更新:2024.1.25
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医