アンガー・マネジメント
皆さん。お加減どうですか?
どうも。いつも診る院長の清水です。
ところで皆さん。
怒ってばかりで自分が嫌になる瞬間、ありませんか?
トラブルばかりで、疲れる人もいるかもしれません。
当然、怒りは人間の自然な感情です。
しかし、それが過ぎることで、損してしまうこと。ありますよね・・・
もし、「怒らない人間になりたい」と感じる方がいたら、
この記事が役に立つかもしれません。
怒りとは何か
怒りとは何か
先述の通りですが、「怒り」は自然な感情です。
人間のみならず、生物に備わった本能的な反応であり、
大脳辺縁系と言われる脳領域が怒りに関係が深いと言われます。
確かに、怒った結果問題になる事も多いですが、
全くなくなるのも困りものです。
私たちは、困難に立ち向かったり、目標を達成する時に、
「何くそ!」と怒りのエネルギーを使って、
何かを成し遂げる事もあります。
ですので、アンガーマネジメントでは、怒りを否定するものではありません。
湧き上がる怒りに気づき、
それを他人にぶつけることをコントロールする方法なのです。
人が怒ってしまう理由
人が怒る時理由は様々ですが、
共通点があります。それは、
その人が「こうあるべきだ」というルールが破られた時です。
そのルールが強固であればあるほど、怒りも大きくなります。
・・・しかし、現実的には、絶対的なルールはありません。
1−2時間の遅刻は、日本では非常識でも海外では普通。
「人を殺めるのはいけない」といった普遍的なルールでさえも、戦時下ではくつがえります。
人同士でルールが微妙に異なるため、
違うルールのもとに怒りをぶつけられても、
「はあ?」と反発心が生まれる事が多いのです。
また、「役割意識」も怒りを生む原因となります。
有名な心理学実験に、ミルグラム実験というものがあります。
これは、被験者に「教師」という役割を与え、
生徒役が問題を間違えると電気ショックを流すよう指示されるという実験でした。
教師役は電気ショックの強さを選択できる立場にありましたが、
多くの教師は最強のレベルの電気ショックを選んだとのことです。
このように、人は相手を指導できる立場に置かれれば、
役割意識にとらわれて怒りっぽくなってしまう、ということなのです。
皆さんも、
他人には怒らないけども、
自分の子供や部下には怒ることがあるということは、ないでしょうか?
怒る必要性について
先ほど、「怒りが全くなくなるのは、困りもの」と述べましたが、
あくまでこれは、何くそという気持ちをパワーに変えて、
何かを成し遂げるための「内なる怒り」であって、
他者に怒りをぶつける「外なる怒り」は不要かもしれません。
「怒った方が得をする」
「怒ってみないと人は動かない」
「時には怒らないといけない、これも◯◯のため」
と、外なる怒りを正当化する考えはあります。
しかし、
「怒りをぶつけることで、良い結果になった」とする客観的なデータは、
実は・・・ないのです。
そして、逆に
「怒りをぶつけたことで、良くない結果になる」という
データは、あるのです…!
怒られて育つ子供は、親の前では素直になっても、
下の立場の者への暴力行為が増えたり、
怒られる環境が多い職場では、全体の業績が下がることの方が多い事が
わかっています。
しかも、怒って他人をコントロールしようとすると、
どんどん怒りっぽくなってしまいます。
ここは以前お話しした【ロールアクト】の原理ですね。
怒りに備える方法
怒りを感じてから怒りをコントロールするよりも、
そもそも怒りを感じないでいられたら、
我慢の必要がありませんよね。
しかしそうなるためには、準備が必要となります。
怒りを指標化する
これまで感じた怒りをリスト化し、
それを点数化してみましょう。
100はこれまで感じた最大の怒りを、
0は怒りが皆無で、心地よきそよ風でも吹いている状態として、
例のように記載してみます。
点数 | 怒りを感じた出来事 |
100 | 恋人に浮気されていて、その相手が親友だと思っていた人だった |
80 | 電車の中で、マナーのことで知らないおじさんと口論になった |
60 | 上司に呼び出され、理不尽なことで説教をされた |
40 | 部下が仕事に30分遅刻してきたが、悪びれる様子がなかった |
20 | 乗車時、信号無視をして突っ込んでくる車がいて、危うく事故になるところだった |
0 | ハワイに行った時、ビーチを見ながらくつろいでいた |
その上で、「何点以上だと、その怒りを他人にぶつけてしまうか」検討するのです。
そうすれば、その状況に陥らないように、
行動を変化させて対処もできるかもしれません。
その方にとって、怒りには幅があることを理解し、
放置できない怒りが何点以上なのか知る事が、
怒りに備える第一歩です。
怒らない日を作る
【ロールアクト】の原理を思い出してみましょう。
1日だけでいいので、気合いです。
どんな腹立たしいことがあっても、我慢です。
しかし、毎日何かで怒っている人にとっては、
大きな変化なのです。
その実績が自分への自信になり、より怒らない日を作れる可能性が高まります。
スモールステップでも、怒らない日を作っていると、
いつか本当に、怒らない人になれる可能性もあります。
怒りの背景にある思考に気づき、対処する
これまで認知行動療法の記事をご覧いただいた方なら、
「自動思考」という言葉は、理解できるかと思います。
自動思考は、「自動的、反射的に生じる考え」のことでした。
ところで、怒りの背景にも、自動思考がないでしょうか?
例えば私は今、キレそうなのですが。
その背景には、
「こんなに時間と労力をかけて記事を書いているのに、
アクセスがない!報われるべきなのに!」
という思考が隠れているとします。
ここで、認知行動療法の原則を思い出して下さい。
認知(思考)は行動と密接に関わっていましたよね?
行動や思考が変わると、
感情や身体反応は変化するのでした。
私の例であれば、
まず時間と労力をそこまでかけないでブログを書く=行動を変えれば、
「報われるべきだ」という考えも弱まり、
しかもそれほど結果も変わらなければ、
これからブログの記載もそれほど怒りを伴わなくなるかもしれません。
また、「時間と労力をかければ、報われるべき」という考えから、
「時間と労力をかければ、必ず報われるわけではないが、いつか報われる可能性が上がる」
という思考になったとしたら、=思考が変わったとしたら、
短期的に結果がでなくてもイライラせずに済むかもしれません。
このように、認知行動療法の理屈を使って、怒りに備えることも出来るのです。
周囲に、自分の怒りのポイントを伝えておく
上述の方法で怒りを分析できていると、
自分がどのような場面で怒りやすいか、
もっというならば、
どのような役割を意識しているときに、
どのようなルールを破られた時に、
どのような思考になった時に、
我慢できない怒りが発生するか、共通点が見えてきたかと思います。
その気づきを、自分を取り巻く環境にある人に、
伝えておくのも手です。
「部下が非を認めなかったら、許せないんだよね。だから同僚の君が注意しといてくれないか?」
「夫のあなたの帰りが遅いとイライラしてくるから、事前に遅くなるならメールをくれないかしら」
など、一部解決策を考えて実行できれば、
怒りをぶつける可能性も下がるかもしれませんね。
怒りを抑える方法
本来、怒りを感じないで済むことが理想的ですが、
それでも怒りを抑えられない時はあります!!!クソがあ!!!!
しかし、そうなった時にでも方法がないわけではありません。
他人に怒りをぶつけるのを最小限にする可能性のある方法を3つ、
ご紹介しますね。
6秒待つ
人の爆発的な怒りは、
5秒以上持続しないようです。
その5秒を深呼吸をしたり、別の作業をしたりして、
なんとかやり過ごすことができれば、
怒りを他人にぶつける最悪の事態は、回避できるかもしれません。
その場を立ち去る
怒りを誘発する刺激から、
強制的に遠ざかる方法です。
怒りを誘発しそうな刺激から、
常に逃げ惑うわけにもいきませんが、そういう時は、
トイレにいけば良いのです。
「ちょっとお腹が痛いので・・・」
と言われて、それを止めようとする人はほとんどいないですし、
5分程度だったら大抵の人は待ってくれるでしょう。
その間に状況が改善している可能性も、期待できます。
「アイ・メッセージ」を意識する
どうですか?この怒気に満ちたやりとり。
見てられませんね・・・。
ここで注目してほしいのは、
その主語です。
「何で(あなたは)そんなに帰りが遅いの!」
「(お前は)何を言ってんだ!」
というふうに・・・「あなた(YOU)」になっていますよね。
これを、「私は(が)」に変えることを、「アイ・メッセージ」と言います。
すると、どうでしょうか。
飲み会で遅いのかと思ったら、私は悔しい気がするわ!
でも、これをやらないと評価に関わるんだよね
若干冷静なやりとりになりませんか?
こちらは、【アサーション】の記事でやりましたね。
怒りを発散する方法
ストレス発散の方法を試す
人それぞれ、ストレス解消法ってありますよね。
自撮りをしたり、
ジム行って運動したかと思ったら、
自撮りをしたり・・・
美味しいもの食べに行き、
美味しいものを撮ったと見せかけて、
自撮りをしたり・・・。
個人的には、
暴力的な衝動を昇華させるものがお勧めです。
患者さんには、物を壊したり、キックボクシングなどを勧めていますね。
そうでなくても運動には、
イライラを落ち着かせる効果があるので、
運動の習慣を作ってみてはいかがでしょうか。
アンガーマネジメントを諦めない
怒りは完全にはコントロールできない
しかし、これだけ色々アンガーマネジメントスキルをトレーニングをしても、
やっぱり怒る時はおこっちゃいます。
一生懸命スキルを使って自分をコントロールしても、
自分を怒らせるような刺激がいつ、
どれほど起こるかは、コントロールできませんから。
でも。
どうせ、アンガーマネジメントなんてやっても、無駄なんだ・・・
最後に
ここで、皆さんに重大発表。
セルフで出来るCBT講座は、
今回で最後になります!
いやあ・・・皆さんここまでよ~く頑張りました。
これをご覧いただいている方のなかには、
今現在うつ状態真っ盛りな方もいるわけで・・・
この、難解な文章を紐解き、
18回見てこられた方には盛大な拍手を送りたいです。
この文章を読んでも「良くわかんなかったな~」とか、
「どうせ理解力がないからだ・・・」と考えた方!
良く分からない文章でも、
「良くなりたい!」という気持ちで
ここまで読んでこられたんですよ!
やりたくないことでも立ち向かえた。
無駄だと思っても諦めなかった。
この事実に気がついて下さい。
あなたは、めちゃめちゃ強い信念を持った人間です!
これからの困難には、あなた自身の意思が、あなたの支えになります!
自宅でできる対処法としては、私が教えることは、
もう、何もありません・・・
あなたは、もはや気分が動かざること山の如しです・・・。
もし不調になっても、このコラムをみて、
いつでもスキルを思い出すことができますね。
ただ、実は認知行動療法はこれで終わりではなく、
「どうせ私は、人から好かれない・・・」
「私は、無能なんだ・・・」
「私は、とにかくダメなんだ・・・」
という考えから脱却するまでのプロセスが用意されています。
もしご興味・疑問点がある方は、当院での認知行動療法で、
さらなるステップを目指してみて下さい。
私もまだまだ色々な精神療法を勉強していくので、
もし、有用なスキルが分かった日には、
またこのシリーズを再開したいと思います。
それでは、その時まで。
お大事に。
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医