認知行動療法ー問題解決法ーとは
皆さんお加減どうですか?
どうも。いつも診る院長の清水です。
今日お伝えしたいスキルは、【問題解決法】というスキルです。
前回、不快な思考に対応するために
ソクラテス式質問法をご紹介しましたが、
悲観的な思考が客観的にも事実だった場合、
うまくいかない事もあります。
問題解決法は、そんな時でも
十分使えるスキルです。
こちらは比較的優しいスキルなので、
ぜひ使えるようになってくださいね。
問題解決法とは
唐突ですが、
あなたがもし、格闘技未経験で
マイクタイソンと試合をしなければならないとしたら、
どう思いますか?
めっちゃ怖いですよね!不安ですよね?
「無理無理!最悪殺されてしまう!」
と思うかも知れません。
残された期間は1週間として、
さあどうするか。
少しでも練習しません?
少なくとも大怪我しないように。
練習したら、
何もしないよりは!!
わずかでも!!
・・・不安が減ると思うんです。
(もちろん、試合で勝てるはずはないのですが…)
もしくは、少しでも安全に負けられるよう、主催者側にルールを交渉するかもしれない。
「やばい!死ぬうぅーーー!」と不安に飲み込まれたまま
何もしない人は少ないと思うのです。
これが、問題解決法の本質です。
不快な思考に対して、どのように行動するべきかを
あらかじめ考え、そして実行することで、不快な感情を減らす方法、
それが問題解決法なのです。
問題解決法の実際のやり方
今回は、2歳の子供がいる、主婦のBさんの例を挙げていきましょう。
Bさんは、昨今のコロナショックで、夫の収入が半減、
今後の生活に不安を抱えています。
不安からか夫を責めては、自己嫌悪に陥っています。
しかしBさんは、過去に
認知行動療法(CBT)を勉強したことがありましたので、
「このまま自粛が続けば、生活ができなくなるだろう」
という自動思考が
不安の原因だと気がつく事ができました。
早速、ソクラテス式質問法を使おうとしましたが、
その自動思考にはなかなか反論できませんでした。
実際、家計は火の車。自動思考は、非情にも現実的です。
「自粛が続いても、生活には困ることはない」
という楽観的な考えには、到底至りませんでした。
そのような時は、
自動思考が正しいと仮定しておいて、その問題に対して
どのようにアプローチするのか考えます。
具体的には、
①そのようにならないために、どう行動するべきか
②もしそうなってしまったら、どう行動するべきか
それぞれ二段構えで、あらかじめ考えておく。
これが、問題解決法です。
Bさんは、CBTを勉強した事を思い出し、
早速、紙とペンを用意しています。
(さあ、みなさんも是非、一緒にやってみましょう!)
①生活が破綻しないために、何ができそうか?
②生活が破綻した後は、具体的に何ができるか?
一見して現実的でない、バカみたいな解決策も、
現実的なアイデアが出る足がかりになったり、
考えを組み合わせる、あるいは改良する事で、
良策につながる事があります。
とにかく、質より量。
多くのアイデアをあげるのがコツです。
(これを、「ブレインストリーミング」といいます)
解決法がなかなか浮かんでこない時は、
下記の問いかけが役に立つかもしれません。
・過去にはどのように問題を解決してきましたか?(過去の実績)
・その問題に直面したのが、自分の友人や家族だったら、なんとアドバイスしてあげますか?(他者の視点)
・直接的でなくとも、間接的に解決できる方法はないですか?(スモールステップ化)
・これまでとは全く別の見方はありますか?
いかがでしたか?
そうこうしているうちに、
Bさんのワークシートが完成したようですね。
①生活が破綻しないために、何ができそうか?・家計簿アプリを使って、支出を抑える
・食費を抑えるために、無料のレシピアプリを購入する
・フリマアプリを使って不用品を転売する
・デリバリーなどのアルバイトを探す
・夫のお小遣いをなくす(笑)
②生活が破綻した後は、具体的に何ができるか?
・国から借りる
・身内に頼る
・ホームレスデビューして自由気ままに生活(笑)
それなりに解決策を思いついたBさん。
当初八方塞がりだと思っていたのですが、
やってみると少しは現実的な解決策も出てきて、
少し不安が減ったようです。
(ついでに肌ツヤがよくなって、目も大きくなったようです)
その後Bさんは、冗談半分で
快適なホームレス生活の記事をネットで見て、
家族で団欒できるようになりました。
いかがでしたか?
思いついた解決策を実行したくなってきますが、
それについては次回のスキルでご紹介しますね。
自動思考の検討をせず、
解決すべき問題点をリスト化してから、
そのうち1つを選んで、解決策を
ブレインストリーミングしていく方法もあります。
Bさんのように、
問題解決法を使って不快な感情が減ると良いですね。
それでは、お大事に。
【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
更新:2024.1.22
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医