認知行動療法ー認知の偏りを理解するー
皆さん、お加減どうですか?
いつも診る院長の、清水です。
これまで、自分でできる認知行動療法の
基本となるスキルを、いくつかお話してきました。
どれでも、勝手に出てくる考え=自動思考に気づく事が大切でした。
メンタルに不調を抱える方の多くは、
役に立たない自動思考に悩まされている方が多いのですが、
あらかじめ、そのような役に立たない自動思考を知っておくと、
ご自身の考えがどのような特性を持っているのか、
理解が深まります。
今日は、メンタル不調になりやすい、
役に立たない自動思考を御紹介しますね。
役に立たない認知の偏り10選
「私も、もしかしてあてはまるかしら?」という目で
ご覧いただければ幸いです。
では、どうぞ!
①「全か無か」思考(白黒思考)
状況を、たった二つの極端なカテゴリーで捉えようとする。
例:「私は100点を取らなければ、価値がない」
②破局視(結論への飛躍)
現実的な可能性を考慮せず、未来を悲観的に予言する
例:「私は今こんなにうろたえている。今後、私にとって上手くいくことは無いだろう」
③過大解釈と過小評価
否定的側面を不合理に重視し、肯定的側面を不合理に軽視する
例:「志望校がB判定だった。私は落第するに違いない」
「計画は成功したが、それは単に運が良かったのだ」
④感情的理由づけ
自分の感情を優先するあまり、それに反する根拠を低く見積もる
「彼のことは嫌いだ。いかに仕事が早いからといって、どうせ雑に仕事をしているんだろう」
⑤「~べき」思考
他人や自分の振る舞い方に、厳密で固定的な理想を要求し、それが実現しないことを最悪視する
例:「緊急事態宣言中なのに、外出するなどありえない。周りの人たちを殺すつもりなのか」
⑥過度の一般化
現状をはるかに超えた、大雑把で否定的な結論を出す
例:「大学のサークルで居心地が悪かった。私には友達ができないということだ」
⑦心のフィルター
全体像をみるかわりに、一部の要素だけに過度に着目する
例「数学の得点が低かったので、私の勉強はすべて無駄だった、ということだろう」
⑧マイナス化思考
状況に対して否定的な側面しか見ない
例:「息子の担任教師は何一つちゃんとしていない。彼は批判的で鈍感で、考え方も下手だ」
⑨読心術
他の現実的な可能性を検討せず、他者が考えている内容を、自分が分かっていると思い込む
例:「彼はこのプレジェクトのポイントを、私が分かっていないと思っているだろう」
⑩レッテル貼り
合理的な根拠を考慮せず、自分や他者に対して固定的・包括的なレッテルを貼り、否定的な結論を出す
例:「彼は何をしようと悪人だ」
いかがでしょうか?
これから暫くは、これまでで得たスキルを使って、
ご自身の不快な自動思考を
検討し続けることをお勧めします。
その際に、その自動思考がどの偏りのパターンに陥っているのか、
気にしながら検討していくと、
さらにご自身の思考のパターンを理解できるようになります。
いくらかの自動思考の偏りは、
オーバーラップしているものもありますので、
無理やりどれかにあてはめようとしなくても
結構ですよ。
そもそも、自動思考が偏っていない可能性も
あるわけですから。
次のスキル【認知的連続表】を身につけるまで、
しばし、これまでのスキルを練習して、
自動思考のパターンを捉えられるようになって下さい。
それでは、お大事に。
【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社
更新:2024.1.23
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医