【精神科専門医監修】夏バテとメンタルヘルスのつながりと改善法とは?

はじめに
「夏バテ」と聞くと、食欲不振や倦怠感などの身体的な不調を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、精神科専門医の視点から見ると、夏バテは単なる身体の不調にとどまらず、メンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
特に、うつ病や不安障害、さらには双極性障害の症状を悪化させる「引き金」となることもあります。
この記事では、夏バテが心に与える影響、その背景にある医学的メカニズム、そして実際に活用できる対策法について、エビデンスと臨床知見を交えて解説します。
夏バテとは?メンタルヘルスとの関係について
夏バテは医学的な正式名称ではありませんが、以下のような症状がよくみられます。
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倦怠感
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食欲不振
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睡眠の質の低下
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集中力の低下
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頭痛やめまい
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胃腸障害(下痢・便秘)
これらの多くは自律神経の乱れに起因します。
高温多湿の気候では交感神経が過剰に働き、心身に持続的なストレスがかかるのです。
夏バテとメンタルヘルスの関係
1. 睡眠不足と気分の変動
熱帯夜の影響で深い睡眠が得られないと、感情制御を担う前頭前野の機能が低下し、イライラや抑うつ気分が出現します。研究でも、睡眠不足はうつ病や不安障害の悪化因子とされています (Flaskerud, 2012)。
2. 栄養不足と神経伝達物質の低下
夏バテによる食欲不振で糖質中心の偏った食事が続くと、セロトニンやドーパミンなど、気分に関与する神経伝達物質の合成に必要な栄養素が不足します。これは抑うつや意欲低下に直結します (Scherber et al., 2014)。
3. 自律神経とメンタルヘルスの悪循環
暑さによる交感神経の過剰な刺激は、不安感や焦燥感を高めます。一方で副交感神経の働きが弱くなると、休息がとれず慢性ストレス状態が続きます。これがパニック発作や睡眠障害の一因にもなります (Burkauskas et al., 2018)。
4. 孤独感と社会的ストレス
夏はレジャーやイベントの機会が多い一方、体調不良や抑うつ感によって参加を避けると、「取り残された感覚(FOMO)」が強まり、孤独感や自己否定感が増すことがあります。
夏季に悪化しやすいメンタルリスク
● うつ病
夏型季節性うつ(Summer-SAD)では、高温や長い日照時間によってうつ症状が悪化するケースも報告されています (Flaskerud, 2012)。
● 双極性障害
双極性障害は、夏季に軽躁エピソードが増加する傾向があります。季節によって感情の波が現れやすい「季節パターン(Seasonal Pattern)」の一部であり、春夏に軽躁、秋冬に抑うつが出やすいタイプも存在します (Roecklein et al., 2010)。
● アルコール依存
夏場の寝酒による入眠行動は、依存症へのリスクを高める可能性があります。特に気分変動を伴う双極性障害の患者では注意が必要です。
精神科専門医が勧める夏バテ対策
夏の熱気がメンタルヘルスに与える懸念点について、ご理解いただいたところで、その対策・・・気になりますよね。以下の方法が一般的なので、是非お試しください。
1. 睡眠環境の最適化
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エアコンで28℃前後をキープ
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寝る前のぬるめのシャワー
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遮光カーテン、アイマスク、耳栓の活用
2. 栄養補給の工夫
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セロトニン生成に必要なトリプトファンやビタミンB群を含む食品(卵、豆腐、豚肉)
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麦茶や経口補水液で水分とミネラル補給
3. 自律神経を整える行動
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朝の散歩で日光浴
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軽い運動(ヨガ、ストレッチ)
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呼吸法(4-7-8呼吸)
4. メンタルセルフケア
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日記やアプリで体調と気分のログを取る
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CBT(認知行動療法)で「何もできない」思考の修正
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信頼できる人への「ひとこと連絡」を習慣に
まとめ:夏バテは「脳のアラート」
皆さんに残念なお知らせがあります。
夏に気持ちがダウンする方は、冬にも気持ちがダウンしやすいです・・・!
つまり、夏にメンタルがダウンしやすい人というのは、夏だけ気をつけていればいいというものではないということですね。
そういう意味では、夏バテは脳のアラートと考えることができます。
睡眠・栄養・ストレス耐性の問題が顕在化するこの時期を「メンタルの健康診断」として活用することが、セルフケアの第一歩になるのです。
夏バテは身体だけでなく、心の健康にも大きな影響を及ぼします。
特にうつ病や双極性障害のような気分障害を抱える人にとっては、症状を悪化させるリスク要因となるため、生活習慣の工夫やセルフケアの重要性が高まります。
症状が長期化する場合は、早めに専門医へ相談することが何より大切です。
もう9月なので、涼しくなるまでもう少しです!
皆さん、お体とこころに気をつけて。。。
それでは皆さん、お大事に。

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長
清水聖童(Seido shimizu)
精神保健指定医/日本精神神経医学会認定専門医/認知症サポート医/コンサータ処方登録医/
【引用・参考文献】
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Flaskerud, J. (2012). Seasonal Affective Disorders. Issues in Mental Health Nursing, 33, 266–268.
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Roecklein, K., Rohan, K., & Postolache, T. (2010). Is seasonal affective disorder a bipolar variant?. Current Psychiatry, 9(2), 42–54.
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Scherber, R., Senyak, Z., Dueck, A., et al. (2014). High Prevalence of Mood Disorders in MPNs and Their Possible Role in MPN Related Fatigue. Blood, 124(21), 3173.
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Burkauskas, J., Fineberg, N., Gecaite, J., et al. (2018). Obsessive Compulsive Personality and Fatigue in Patients with Anxiety and Mood Disorders. European Neuropsychopharmacology, 28, 781–782.
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