
皆さんお加減どうですか。
どうも。いつも診る院長の清水です。
この記事にたどり着いたってことは、読者のあなたも抗うつ薬、のんじゃってますよね。
うん、そうに決まっているのです。
では、こう思っていませんか?
「出された薬は、ベストなんだろうか・・・」
ですよね?わかります。
あんな適当な主治医が話を聞いただけで出した薬、不安になるのはよ〜く理解できます。
抗うつ薬がどのように選ばれるのか。
実際のところは効果よりも副作用で選ばれるのですが(こちらの記事参照)、
本記事では男の子のロマン、
「最強」
をテーマに、腕に覚えのある抗うつ薬たちに
ぶつかりあっていただくこととしましょう。
最強を決める舞台。天下一抗うつ武闘会、開幕!
ここは、抗うつ薬たちが“最強”の称号をかけて激突する伝説の舞台──天下一抗うつ武道会。
この闘いは単なる強さだけでは語れません。
「効き目」「副作用の少なさ」「患者からの評価」「特殊スキル」── それぞれの種目の王者が、最後は“総合格闘技”の舞台で決着をつけます。
さあ、栄冠を手にするのは誰か?
解説は私、いつも診る院長が務めさせていただきます。

【エントリーNo.1:抗うつ効果代表・アミトリプチリン】
「一撃の強さなら俺しかねえだろ?・・・当たれば必ず全員をハッピーのマットに沈めてやれるぜ・・・!!」
「破壊王」アミトリプチリン、圧倒的なオッズ比 2.13のパンチ力で全てをなぎ倒す!
だが、そのパンチはどこに当たるかわからない、命中率の低さが副作用としてどうでるか?


【エントリーNo.2:安全性(忍容性)代表・ボルチオキセチン】
「私の仕事はムダなく的確です。副作用?それは仕事が荒いやつのすることですね」
“静かなる受け流し”を極めた武術家・ボルチオキセチン。 副作用をかわしつつ、ジワリと効果を与えるその戦い方に、長期戦の強さが光る。


【エントリーNo.3:即効性代表・ミルタザピン】
「2週間もあれば十分ですよ。でも若い子には嫌われちゃうけど・・・太るから?」
不眠・食欲低下に即効で立ち向かう“夜の剣士”ミルタザピン! 眠れぬ夜に一閃、初動の速さで相手を先制KO。


【エントリーNo.4:思春期代表・セルトラリン】
古くからうつと戦ってきた、子どもたちのヒーロー。高い効果値と長期データで信頼の安定感。
エスシタロプラムも上位に食い込むが、思春期への親和性と保護者・医師の安心感で、僅差の勝利はセルトラリン!
「おいらの武器は信頼性。だってそれがなきゃ、続けられないでしょ?」

強者(つわもの)たちが一堂に会した、最強を決める究極のリング。
試合は総合ルール。患者をハッピーにする、総合的な力が求められます!!!
ミルタザピンの先制攻撃、アミトリプチリンの破壊力、ボルチオキセチンの耐久性、セルトラリンの信頼性・・・
さあ、勝利は誰の手に?
いざ尋常にッ・・・・FIGHTッ!!!!

誰だこいつぅーーーー!!!!
そう──最後に立っていたのは、すべてを「中庸」で制する者。これまでの部門で、惜しくも敗れてきた、
ドラゴンボールの孫悟空を彷彿とさせる男、
エスシタロプラム(レクサプロ)!!!!!
有効性、忍容性、年齢適応、長期継続性、そして多様なガイドラインでの推奨。 全ステージで「上位安定」を誇った者こそ、真の“天下一”。
ここでようやく、TOP絵の伏線が回収されるわけですね。
めでたし、めでたし。
終わりに:あなたにとっての最強は?
いかがでしたでしょうか。
今回の大会では、
バランスのエスシタロプラムが優勝となりましたが。
もう、わかりましたよね。
最強の抗うつ薬は、
患者の状況や考え方に依存する
ということ。
太ることが非常にデメリットになるのなら、
SNRIが最強になるかもしれないし、
難治性で困っている患者にとっては、三環系抗うつ薬が最強かもしれません。
あなたは一体、どのような考え方で、どのような状況なのでしょうか。
それをしっかり担当医に伝えることが、
あなたにとって最強の薬に出会うヒントになるでしょう。
それでは、みなさん。
今大会はこれにて閉幕。お大事に。
【参考文献】
・Cipriani, A., Furukawa, T. A., Salanti, G., et al. (2018). Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. The Lancet, 391(10128), 1357–1366. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32802-7
・Stone, M. B., Yaseen, Z. S., Miller, B. J., et al. (2022). Response to acute monotherapy for major depressive disorder in randomized, placebo-controlled trials submitted to the US FDA: individual participant data analysis. BMJ, 378, e067606. https://doi.org/10.1136/bmj-2021-067606
・Wu, T., Song, F., Cao, W., Liu, C., & Jia, S. (2025). Comparative efficacy of antidepressant medication for adolescent depression: a network meta-analysis and systematic review. BMC Psychiatry, 25, 471. https://doi.org/10.1186/s12888-025-06941-x
・Kessing, L. V., Ziersen, S. C., Andersen, F. M., et al. (2024). Comparative responses to 17 different antidepressants in major depressive disorder: Results from a 2-year long-term nation-wide population-based study. Acta Psychiatrica Scandinavica, 149(5), 378–388. https://doi.org/10.1111/acps.13673
・Camino, S., Strejilevich, S. A., Godoy, A., et al. (2023). Are all antidepressants the same? The consumer has a point. Psychological Medicine, 53(9), 4004–4011. https://doi.org/10.1017/S0033291722000678
・Eugene, A. R. (2024). Country-specific psychopharmacological risk of reporting suicidality comparing 38 antidepressants and lithium from the FDA Adverse Event Reporting System, 2017–2023. Frontiers in Psychiatry, 15, 1442490. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2024.1442490
・Saelens, J., Gramser, A., Watzal, V., et al. (2025). Relative effectiveness of antidepressant treatments in treatment-resistant depression: a systematic review and network meta-analysis. Neuropsychopharmacology, 50, 913–919. https://doi.org/10.1038/s41386-024-02044-5