認知行動療法ー行動活性化ー
みなさん、お加減どうですか?
いつも診る院長の、清水です。
今日は、自分で試せる認知行動療法(CBT)のスキル「行動活性化(BA)」について解説します。
そもそもCBTって?という方は、是非、以前のコラムを見て下さいね!
単純かつ、有効性が高いスキル
行動活性化(BA)は、behavioural activationの略です。
「コストも要せず、簡便で、訓練を受けた専門家でなくてもできる」事がメリットです。
行動活性化は、広い意味でCBTの中の1つのスキルという位置付けでありながら、
とある信頼のある文献によると、うつ病に対する効果は、
・抗うつ薬と効果が同等
・複数のセッションを必要とする、ベーシックなCBTと比較して有意差ない
という報告もあるくらいです。
簡便かつ、有効性が高いという方法ということですね。
さて、そんなBAですが、どんな内容かというと・・・
簡潔に言うと
活動量を増やしましょう!ウェェエイ!!
という精神療法の一つですね。
いや待ってくれ、
できるわけないやんけ、
できていたら苦労はしていないんだよ、と。
「うつ病は休んだほうがいいのでは?」
と疑問を持った方。
それ、大正解です。
確かに、急性期は休んだほうがいいと言われています。
しかし
ずっと休んだままでいてくださいね、
という意味ではないのです。
「嫌なことは避けて、休んでください」
という意味であって
「何もしないでください。好きなこともやらないでください」
という意味ではないのです。
うつ状態では、意欲も低下してしまうので、中々好きなこともやれなくなってしまうのですが
逆説的に、「疲れない範囲で好きなことをやってください」 というのが
行動活性化(BA)の考え方なのです。
よくよく考えたら、うつ病と診断されたサラリーマンが
すっと休職してしまったら、どうやって復職するのか?と不安になりますよね。
それではこれから、行動活性化の理屈と、その具体的なやり方について説明していきますね。
行動を変えて感情や思考、身体反応に対応することを重視
さて、認知行動療法の考え方としては
思考、感情、行動、身体反応
の4つの軸が互いに影響している、と考えるんでしたね。
ここで以前投稿したコラム、認知行動療法(CBTとは?)で使用した
会社員Aさんの例えを思い出してください。
Aさんは、多忙な業務で疲弊し、会社でのミスが増えうつ状態が悪化し
病院で「うつ病」と診断されていました。
Aさんは、倦怠感と意欲の低下がひどく、趣味のランニングもできない状態でした。
Aさんの中で起きていた悪循環は、以下のように考えられます。
感情:抑うつ気分、意欲低下
↓
思考:「ランニングなんかしても、どうせ楽しめないだろう」
↓
行動:自宅で引きこもっている
↓
思考:「楽しいことがない」
↓
感情:抑うつ気分、意欲低下が悪化
あるいは、
身体反応:不眠、倦怠感
↓
思考:「体がだるくて、動けない」
↓
行動:自宅で引きこもっている
↓
思考:「楽しいことがない」
↓
感情:抑うつ気分、意欲低下が悪化
このような負の連鎖が起きている可能性があると思いませんか?
うつの症状であるうつ気分や倦怠感によって
さらにうつを助長する行動をとってしまっているんです。
さて、不快な感情や、身体反応、
つまり意欲低下や倦怠感を軌道修正させるには、思考か行動を変えるしかない
という認知行動療法(CBT)の考え方でした。
行動活性化(BA)は、このうち行動を変えることを重視します。
認知行動療法【行動活性化(BA)】の具体的な方法
では、どのように行動を変えるのでしょうか?
「行動する」と言っても、気分が下がったり、倦怠感が強まるような行動では本末転倒です。
「自分が何をしているときに気分が上がるか」
ということを把握しておく必要があります。
具体的な方法として、「行動記録表」があります。
「ジャーナリング」とも言いますね。
最近では、スマホアプリですることもできます。
ダウンロードや検索していただければわかるのですが、
結構めんどくさそうですね…?
何時にどのような活動を行ったのか記録をしないといけません。
こんなの面倒でできない!というアナタ
完璧に記録を行う必要はありません。
書いてみるということにも意味があります。
行動記録表を何度か書いていくと・・・
・気分が時間でどのように変わっていくのか
・行動や出来事によって気分が左右されているのか
一定の傾向が見えてくることがあると思います。
そうすると、気分を上げるのに役立つ行動がわかったり、
楽しくもなければ重要でもない活動にどのくらい時間を費やしているのか
ということがわかってくるかもしれません。
お作法的には、数週間ほど行動記録をつけ観察した後、新たな活動の計画に着手します。
その際に、「最終的には何をしたいのか」「現実的には何ができるのか」をすり合わせて
ゴールを設定した上で、
有意義で楽しめる活動を、少しずつ自分に合ったペースで増やしていきます。
・行動によって気分がどれくらいマシになったのか
・気分がマシになったことで、活動量がどのくらい変化したのか
について、自分でフィードバックすることが大切です。
無理をして本末転倒にならないよう
少しずつでも、有意義で楽しい行動を増やしていくことで気分が上がり
意欲低下や抑うつ気分が改善し、さらに行動できるようになる
という理想的な循環が回るといいですね。
あ、もちろん行動記録表を書かなくでも、気分を上げることができるという方は
それでも大丈夫です。
大事なことは、この行動活性化(BA)によって
気分が変わるんだということを実感してほしいということです。
BAは、ほかのスキルと理解するためのより基本的な技法なので、ぜひマスターして
次のスキル【認知再構成法】を習得するための準備をしておいてください!
それでは皆さん、お大事に
【引用・参考文献】
・David A Richards,et al. Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): a randomised, controlled, non-inferiority trial.
Lancet (London, England). 2016 Aug 27;388(10047);871-80. doi: 10.1016/S0140-6736(16)31140-0
・Lee David 10分でできる認知行動療法入