休職と復職の判断基準
皆さん、お加減どうですか?
どうも。「いつも診てる院長」の清水です。
精神的な不調が理由で休職をしたり、
また復帰したりするとき、
精神科医の診断書を職場から求められる事があります。
では、精神科医はどのようにその判断をしているのか、
気になりませんか?
今日は、休職、復職の判断基準をお伝えしますね。
休職の判断
大前提として、精神医学的な「病気と判断されなければ休職の診断書は出せない」という認識があると思います。
しかし、厳密な意味ではこれは異なると思います。
というか大部分はむしろ、世間でいうところの「病気」とは異なる、
「適応障害」という診断で、診断書は発行されることが多いのです。
ここは、最も誤解を生むところではありますが・・・・
確かに精神医学のカテゴリーでは適応障害も病名ではあります。
適応障害は
「元来のストレス耐性よりもストレスが上回った時、情緒、行動、自律神経系の異常によって
日常生活に支障をきたした状態」
を意味しますので、
仕事に行けない状態であれば「日常生活に支障がある」ため、十分診断基準を満たしてしまうのです。
ということは、仕事にいきたくなさすぎて、実際に行けない状態となれば適応障害と判断されてしまい、
世間でいうところの「甘え」とか「怠け」でも、
診断書が発行されてしまうことになるのです。
いやいや・・・
そしたらどんな人でも診断書出てしまうやないかい!
というご指摘。その通りです。
走るのが遅い人もいれば、走るのが速い人がいるように、
ストレス耐性が高い人もいれば、低い人もいますね。
一見「甘え」「怠け」に相当する人も、
その人のストレス耐性を超える負荷を課されて、
「なんで皆できることが私はできないんだ」と考えたりして、
その人なりに苦しいはずなんです。
そのような人たちを援助なく放置すると、
いよいよ、「ストレス環境がなくなっても改善しない」
あるいは、「改善しても、後遺症が残る」ような、いわゆる「病気」というフェーズへ進行することもあるのです。
なので我々は、それを防ぐためにも診断書を発行しています。
なので、「こんな状態で診断書が出るのだろうか、仕事を休めるのだろうか」と
心配せず、安心して医療機関を受診して下さいね。
復職の判断
その一方、復職可能の診断は、どのようにしているのでしょうか。
もし「もう大丈夫だ!仕事をしたい!」と思った人全員が復職できたら、
精神科医は不要になりますね。
私たち精神科医は、復帰後に症状が再燃するリスクが高い人を復職させないことで、
病状が増悪することを防いでいます。
では、復職の判断はどのようにしているのでしょうか。
こちらは、いくつか基準があります。
基準 | 具体的な内容 |
睡眠覚醒リズム | 日中起床し、夜間眠るという基本的な生活リズムが確立しているか? |
食事 | 規則正しく、栄養バランスのとれた食生活を営めているか? 例:お菓子ばかり食べている、などがないか? |
課題遂行能力 | 日中の集中力や意欲が病前のレベルまで回復し、家事や読書など簡単な作業を1日こなすことができるか? |
健康管理能力 | 通院や服薬の遵守ぶり、日中の心身症状の有無はどうか? 例:医師の指示を守り、頭痛や吐き気など身体症状がないか? |
再発予防策 | 発症機転の振り返りができているか?復帰先の環境が良化している、ストレスに対処できるなど、再発防止策があるか? |
ちなみに・・・・
これらの基準を完全にクリアしても、
復職を問題なく達成できるのは、約6-7割程度と言われます。
思ったより、復職は簡単じゃないんですね・・・。
休職を繰り返せば繰り返すほど、
さらに復職率は低下してしまうので、
できるだけ確実に復職したいところですね。
最後に
いかがでしたか?
本記事で、休職、復職の判断をどのようにしているか、
その基準をご紹介しました。
これを機に、客観的に自身の状態を評価できる患者さんが増えると嬉しいです!
(自信満々に「復帰したいから診断書下さい!」という患者さんをお断りするのは、
できるだけ避けたいので・・・・)
それでは皆さん、お大事に。
更新:2024.4.28
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医