メンタルヘルスを向上させる生活習慣
どうも。皆さんお加減どうですか?
いつも診る院長の清水です。
よく患者さんから聞かれるんですよ。
「どんなことをしたら、うつ病がよくなりますか?」
「どんなことをしたら、パニック障害がよくなりますか?」
いや、すいません。
これだけやっていて下さい!
というのは、残念ながらないんです・・・
メンタルヘルスを向上させる生活習慣というのは、
実際めちゃめちゃ多いんですよ。
「これだけやっとけば・・・」というものはなく、
一つ一つは有効性は乏しくても、
これらの積み重ねで効果を出すようなものなのです。
メンタルヘルスは1日にしてならず。
さあ、現在精神医学の中で応用できそうな知識を、
ここでひけらかしてしまいますので、
気合いがある方は、是非参考にしてみて下さい!
運動
運動した日によく眠れたことはありませんか?
運動は、血液循環を改善し、睡眠を深くし、脳にとって、
良い作用をもたらします。
運動は、年齢、うつ病か否か、健康かどうかなど、対象を選ばすメンタルヘルスに
貢献するようです。うつ病、不安その他精神的な苦痛全般的に強力なエビデンスの蓄積があります。
有酸素運動
運動の系統として、
有効性が高いものの一つに、
ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動が挙げられています。
エクササイズでも効果があるようで、その差は
改善率3〜9%程度にとどまります。
できれば40〜50分の運動ができれば効果が最大化されるのですが、
30分の運動介入でも効果に差があったとする報告があります。
頻度は、週に3日程度あると良いそうです。
ヨガ
今や心理療法ではメジャーになってきつつある「マインドフルネス」は、
ヨガの考え方に影響を受けているんです。
運動の種類別にメンタルヘルスへの効果を検証した大規模な研究によると、
ヨガは筋力トレーニングと並び、うつ病に対する効果が大きかったそうです。
ヨガは疲労感が少なく、身体全身が引き締まることから、
女性にも人気のある運動です。この機会にぜひ、始めてみてはいかがでしょうか。
座っている時間を減らす
抑うつ症状を有する人は、そうでない人と比べて
座っている時間が有意に長く、身体活動も少なかったとする報告があります。
こちらの報告だけでは
うつ状態だから座っている時間が長いだけ、の可能性が残りましたが
これまでの研究から身体活動により抗うつ効果があることが
わかっていることから、
あまり座らないようにすることがメンタルに良い作用をもたらすかもしれません。
運動する時間
これまでご紹介したように、
メンタルヘルスにとって様々なメリットがある運動ですが、
寝る前の運動は避けたほうがよさそうです。
寝る前に激しい運動すると、不眠を惹起させるという
研究成果があります(ゆるい運動なら良いかもしれませんが)。
できれば、日中に済ませておくことが得策ですね。
筋トレ
今や著名なインフルエンサーも指摘していますよね。
「何してんのお前?
変わりたいならジム行けって。悲しいならジム行けって。
モテないって。(by ジョージ・メンズコーチ)」
実は、筋力がある人は、不安や抑うつの程度が低いことが分かっています。
これは、複数の研究をメタ解析して上で導かれた結論であり、
かなり信頼性が高い情報と言えます。
筋力増強により、生物学的にはドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質が分泌され、
男性の場合テストステロンが分泌され自信がつきます。
外見が改善されることなど、他にも心理社会的な要因が複数あり、
メンタルヘルスに貢献しそうですよね。
睡眠
睡眠が健康に与える影響は、これまで様々な医療分野で検証されています。
睡眠がうまくいかないと、認知症やうつ病、双極性障害、認知症などの
様々な精神疾患の発症、増悪リスクになるばかりか、
高血圧や糖尿病、心臓疾患などの
身体疾患の発症、増悪リスクを高めてしまい、
肥満のリスクを高め、健康寿命が縮むということが報告されています。
睡眠時間は短いばかりか、長すぎても良くないとされていて、
青年期においては6から8時間程度が良好な睡眠をされています。
では、良質な睡眠をとるには、どのようなことが推奨されているでしょうか?
運動する
人は、頭と体を程よく疲れさせると、
深い睡眠が得られます。
これは昔から知られている伝統的な不眠への対処の一つです。
私が言わなくても、すでに経験的にご存じの方も多いですよね。
朝日を浴びる
午前中の日光暴露は、睡眠覚醒を司るホルモンであるメラトニンの調整を介して、
概日リズムを整えます。また、紫外線は皮膚のビタミンDの合成を促し、
発達中の脳に影響を与えます。
紫外線の暴露は、気分が上下する双極性障害という病気の
発症率を下げたり、
うつ相の再発予防に有効であるとのエビデンスもあります。
日光は、ちゃんと網膜に入れるイメージで、できれば1時間以上浴びるのが効果的です。
必ずしも日光でなくても良く、
室内灯でも効果があります。
今は「光目覚まし」なるものも売られているので、
購入を検討されてみては如何でしょうか。
夜間のスマホ時間を制限する
夜間、長期間スマホをいじっていると、不眠症のリスクとなることが分かっています。
また、睡眠が不安定になると、気分の波が激しく出現する双極性障害の再発リスクがあがる、
または認知症の発症リスクが上がるのではという報告もあります。
昼寝を避ける
昼間に何時間も寝てしまうと、夜間の良眠の妨げになることは
皆さんも経験がおありかと思います。
精神医学でも、昼寝はあまりよい結果を報告していません。
眠気に襲われるナルコレプシーと呼ばれる病気では、
計画的な昼寝は有効とされていますが、
うつ病にとってはリスク因子となり、
また寿命も縮めてしまう可能性があると言います。
光を避ける
通常、寝る時は暗くして寝るのが一般的だと思いますが、
なかには、
「明るい部屋じゃないと眠れない」という人が一定数いるようです。
しかし、約3000人のデータから、
明るい部屋で寝る人には、
肥満、脂質異常、全身性炎症、うつ症状、睡眠障害が多いという結果が報告されており、
また統計的にも不眠に至りやすいようです。
動物実験のレベルでは、脳内炎症を惹起するという報告もあります。
気をつけましょう・・・。
時間を気にしない
不眠をきたす人の一部は、
「ああ、明日は大事な仕事なのに・・・」
「明日の試験でパフォーマンスが発揮できなかったらどうしよう・・・」
など、不眠による悪影響を心配することが原因になって、
余計に眠れなくなる方がいます。
こうした方には、アラームをセットし、時計を見ないようにする、という対応がとられます。
ベッドを寝るためだけに使う(刺激制御法)
人間というものは面白いもので、
ベッドで眠れない体験を繰り返すほどに眠れなくなり、
逆にベッドで良好な睡眠をとる体験を繰り返していると、
さらに良い睡眠が得られます。
ですので、ベッドで寝転がりながら作業をしたり、
夜間眠れないのにベッドでまんじりとしているのは避けましょう。
夜間眠れない時は、思い切って体を起こし、別室で頭を疲れさせたり、
リラックスする音楽を音量をしぼって聴いたり、
お気に入りのアロマでもたいてリラックスしてみましょう。
眠くなったら、再度ベッドに向かえばよいのです。
睡眠時間を制限する(睡眠制限法)
人には「概日リズム」と呼ばれる機構が備わっており、
眠くなる時間と起きる時間がプログラムされています。
しかし、夜更かしをしたり朝寝坊を繰り返していると、
そのリズムが少しずつ狂ってきます。
そうならないために、
入床時間と起床時間を決めて、
不必要に長く寝床にいるのを避け、
睡眠効率を高めようとするのが睡眠制限法です。
もし就寝時間前に眠くなっても、決して寝床に入らず、耐え忍びます。
眠気を溜めることで、より深い睡眠が得られることが期待できます。
寝入りが改善し、朝の目覚めが良くなったら、
入床時間を30分早め、さらに良い睡眠になるか試してください。
これを繰り返し、ベストな睡眠リズムを構築していきます。
嗜好品を避ける
寝る前のタバコ、アルコール、カフェインは、
熟眠を妨げることが知られています。
カフェインは就寝前4時間は避けましょう。
また、喫煙も寝る1時間前からは避けたほうが良いされています。
アルコールは眠気を誘い、
寝るために飲んでいるんだ、という方もいますが、
実は睡眠深度を浅くします。
そもそも、アルコールを摂取しないと寝れないくらいなら、
睡眠薬のほうが毒性がなく安全です。精神科や心療内科を受診しましょう。
布団を重くする
重い布団は、睡眠を改善することが示されました。
研究報告によれば、金属製のチェーンが入った、
チェーンブランケットを使用したグループで不眠が改善したそうです。
しかし、人によって重すぎると感じる布団だと逆効果だと思われるので、
4kgから14kgの範囲で、自分にあった布団の重さを見つけると
良いでしょう。
バイノーラルビートミュージック
みなさん、BBMって知ってますか?
え?もちろんバイノーラルビートミュージックの略ですよ。
知らない?・・・私も知りませんでした。
BBMは、人の脳に影響を与える低い周波数を、
特別な方法を使って聞こえるようにしたものだそうです。
脳波をコントロールし、集中力や睡眠の質向上への効果が期待されています。
睡眠の質が低下した高齢者に対する試験によれば、
2週間の介入により、統計的に有意に心拍変動数の正常化、抑うつ気分の低減とともに、
睡眠の質が向上したそうです。寝る前のヒーリングミュージックを試している方は、
今、メンタルヘルス界隈でアツいBBMに変えてみるのも良いのではないでしょうか。
食事
その人はこれまでの食事で出来ている、
と言われているように、
医学的にも栄養は全身の免疫機能や全身性炎症の素因となり、
うつ病を始めとした精神疾患と密接な関係があります。
当然、メンタルヘルスにも影響しそうですよね。
抗炎症食
ビタミンB12、C、Eやフラボノイド、食物繊維が豊富な食材は、抗炎症食と言われます。
これらをよく摂取すると、うつ病の発症リスクが下がり、
逆に炎症誘発食(単純糖質や飽和脂肪酸が豊富な食材)をとると、
うつ病の発症リスクが上がることが知られています。
タンパク質の一部を豆類でとり、ケール、ほうれん草、アボカドなどの野菜や
柑橘系の果物を意識するとよいでしょう。
豆乳は主として脳血管性認知症のリスクを低下させるらしく、おすすめです。
また、小麦粉よりも全粒粉のパンを使ったり、米を玄米に変えたり、
糖質をさつまいもに変えてみるのも良いと思います。
コーヒー・紅茶・カフェイン
コーヒーを1日3杯程度の飲む人は、
うつ病や不安障害、認知症のリスクが低いことが先行研究で示されていたのですが、
2023年の新しい報告は面白い結果となりました。
早朝以外の時間帯にコーヒーを飲む人はなんと、
うつ病のリスクが10%程度上がることを報告したのです。
早朝に飲む人は、15%程度リスクが下がる結果でした。
ううむ。朝のブレンディ〜タイムをお届けする余裕があれば、
病気にもなりにくそうですね。
紅茶に関しても、まだ確実性は十分とは言えないものの、
メンタルヘルスに保護的な効果を期待できるようです。
ただし、双極性障害に対しては、治療薬である
炭酸リチウムの濃度の上昇を抑制したり、
睡眠覚醒を不安定にして、
自殺のリスクが上がる可能性があり、まだ慎重な解釈が
必要のようです。
肉
肉類を好む人は、うつ病や不安障害のリスクが低いという面白い研究があります。
ビーガンと肉を消費する群を比較すると、
研究が厳格であればあるほど、うつ病リスクや不安障害のリスクが低かったという結論でした。
交絡因子の検討がされていないので、
直接的に肉の摂取がメンタルヘルスに良好なのか、分かりませんが。
他にも、ベジタリアンと非ベジタリアンでは、
ベジタリアンでうつ病のリスクが高かったとする研究が多いので
お肉はメンタルヘルス一定の効果があるのでしょう。
うつの予防に鉄分や亜鉛、ビタミンB12が重要な役割をすると言われていますが、
お肉はこれらを補えるのが良いのかも知れません。
ただし、注意すべきは、ここで非ベジタリアンや肉を消費する群というのは、
何も「肉ばかり食べているわけではない」ということです。
そもそも、前述のように野菜は抗うつ効果が高い食材なので、
「そればかりに偏っている」ことが問題なのだと思います。
同様に、肉しか食べない群とそうでない群を比較すれば、
肉しか食べない群で、きっとメンタルが悪化するでしょうね。
卵
日本人568人を対象とした研究で、
卵の摂取量とうつ病の発症には量的相関関係がある事が判明しました。
卵の摂取量が少なければ少ないほど、
性別を問わず、うつ病の発症リスクが上がる可能性がある、と考察されています。
卵に多く含まれる、トリプトファンは“幸せホルモン”であるセロトニン合成に関わっており、
そのお陰ではないかとも言われますが、同様にトリプトファンが多く含まれる魚介類では
統計的な差が出なかったのは、興味深いです。
貧血の改善
貧血だと68%不眠症のリスクが上昇するそうです。
貧血とは、血液中の酸素を運ぶ有効なヘモグロビンが少ないことを指すのですが、
貧血をきたす様々な原因のうち、鉄分を補うことで解決可能な
「鉄欠乏性貧血」という病態があります。
肉類は鉄分が多いので、肉を食べると睡眠に良いのも
その点も一因かと思います。
特に女性は月経や子宮内膜症、子宮筋腫などで血液が失われやすく、
貧血に至っている可能性が男性と比べて高いので、不眠がある女性は
病院で調べてもらうと良いかもしれません。
ビタミンD・オメガ脂肪酸
ビタミンDやオメガ脂肪酸は、
うつ病の治療にも使われる栄養素・サプリメントです。
これまで散々「効果がある」「いや、ない」論争があり、
うつ病を予防できるというエビデンスは、大規模な解析でも否定されてしまいました。
しかし、ビタミンDが消耗されがちな妊娠女性や授乳中の産後女性などでは、
不足するとうつ病リスクが増大する報告などが目立つことから、
これらが不足することは避けたほうが望ましいと思われます。
葉酸
葉酸は、妊婦さんにとっては
有名な栄養素ですよね。
葉酸は、細胞分裂のために必須の補酵素であり、
赤ちゃんの奇形率を下げるのに貢献しています。
当然、欠乏するとメンタルヘルスの悪化に繋がります。
抑うつ気分は、葉酸摂取量と相関するという報告は
古くからなされています。
しかも、双極性障害の治療にも葉酸の有効性が
一貫して支持されています。
双極性障害の非薬物療法で
有効性が支持されているものは少ないので、
貴重ですね。
トリプトファン
うつ病の原因の1つとして、
セロトニン欠乏が挙げられています。
セロトニンは、ヒトの睡眠、幸福感、抑うつ緩和に役立つ
脳内の神経伝達物質です。
アミノ酸であるトリプトファンは、ビタミンB6誘導体の影響化で、
体内でセロトニンの元になります。
トリプトファンは、豆腐・納豆・味噌・しょうゆなどの大豆製品、
チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、穀類に
多く含まれています。
N-アセチルシステイン(NAC)
N-アセチル-L−システインは、AMAZONや楽天でも手に入る、神経保護作用を持つ抗酸化物質です。
少し、食事とは違うかもしれませんが・・・手軽に手に入るので、こちらに紹介しました。
これがなんと、種々の精神疾患に対してプラスに働くという報告が相次いでいます。
現時点で有効性がある程度確立しているのは、
・自閉症スペクトラム障害の社交性向上、攻撃性低下、自傷行為の減少
・統合失調症の陰性症状(自閉的になったり、感情が鈍麻する症状)
・強迫性障害(効果は小さい)
・双極性障害の躁状態、うつ状態
・うつ病のうつ状態(効果は小)
まだデータが少ないものの、認知症の予防や依存症への効果も示唆されています。
ほぼリスクがなく、しかも効果量も大きく標準治療の補助として使えるので、
余裕がある方や、「病院には行くまでもないか・・・」と思う人は、
1日2g以上で、4から5ヶ月間試して効果をみてください。
カカオ製品
カカオ製品がメンタルヘルスの向上に役立つとする、
複数の研究があります。
長ければ1週間程度、
感情をポジティブにし、不安や抑うつを和らげるようです。
エフェクトサイズは中程度となかなかでした。
疲れた時に、ココアやチョコレートなどを摂取するのは、悪くなさそうです。
発酵食品
腸は神経を介して脳と繋がっており、
腸内環境が悪化すると、脳にも悪影響を及ぼします。
これは腸脳相関と呼ばれます。
ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は腸内環境を改善し、
うつ病に対して効果があるようです。
軽症から中等症のうつ病患者において、改善が示唆されています。
また、納豆、酒粕、青カビチーズ、ホエイなどの発酵食品に含まれる含まれる
LHジペプチドと呼ばれる成分は、
脳内炎症に関わる脳内のミクログリアの活性を抑制し、
うつ病予防の可能性を示唆されています。
特に有害事象のない介入として、
民間でも広がっている治療法です。
ポリフェノール
30件を超える観察研究、実証研究から、
ポリフェノールはうつ症状の経験に役立つことが
示されました。ポリフェノールが多い食事スタイルとして
「地中海式の食事」が有名です。好きな方は、やってみましょう。
清涼飲料水を控える
7回以上/週のソフトドリンク摂取、
または25g以上/日の糖分をソフトドリンクから摂取している学生は、
不安およびうつ病が有意に高レベルだったとする報告があり
その差はおよそ20〜25%程度でした。
「非定型うつ」と呼ばれる病態の患者は、
甘いものをよく好むようになるということは比較的知られており、
甘いもの好きがうつになるのか、うつになると甘いものが好きになるのか、
今後の研究の蓄積が待たれます。
社会活動
残念ながら、日本人労働者において
仕事のストレスは、
抑うつ症状、不安症状、不眠と関連があるようです。
長時間労働は、抑うつ感情のトリガーになるのは、
常識的にも知られています。
そりゃほとんどの人にとって、
・・・仕事はしたくないですよね。
上司・同僚からのサポート
約1800人のアンケート結果によれば、
同僚や上司からのサポートがあると答えた労働者は、
抑うつの軽減が得られていたそうです。
いざという時にサポートを得るためにも、
普段からの関係性を良いものにしておきたいですね。
スクリーンタイムの制限
一昔前と比べると、スマホの拡大に伴い、
誰でも簡単にインターネットにアクセスできる時代になりました。
テレビだけでなく、スマホ、PCを見る時間が増えていることが
現代人の懸念事項となっています。
スクリーンタイムが伸びるにつれ、うつ病発症のリスクが
上がってしまうようです。
また、インターネット依存の重症度が高まるにつれ、
うつ病、自殺念慮の発生率が高まるという複数の研究もあります。
インターネットゲームやスマホ、SNSなどは中毒性が高く、自制ができるうちに
適切な距離を置くことが大切です。
仕事でPCの画面と向き合うのは、もはや日常となってしまってますが、
ストレスレベルを低下させると言われている、
緑や花など、自然の景色も見て癒されてみましょう。
ブルーライトのカット
夜間のブルーライトは、睡眠や覚醒に影響を与えると言われています。
不眠がある双極性障害患者に、夜の20時からブルーライトカット眼鏡を着用させたところ、
早寝早起きになる側にシフトしたとの報告があります。
また、光過敏を有する偏頭痛の発作予防にも有効だそうです。
今は携帯の保護シートにもブルーライトをカットするものがあるので、
簡単に試せますね。
タッピング
皆さん。人差し指の腹で、
おでこを30秒トントンとタッピングしてみてください。
すると、あら不思議・・・!
何も起こりませんでした!!!!!!!
・・・って思うじゃないですか?
実は、このタッピングは、「エモーショナル・フォーカスド・セラピー」と呼ばれる、
歴とした心理療法の一つなのです。
不安障害やうつ病、PTSDなどに効果があるとされています。
しかも!空腹時にやることで、空腹を紛らわす効果もあるそうですよ。
オフィスでも、小腹が空いて集中できないとき、
試してみる価値があるかもしれません。
姿勢を正す
姿勢とメンタルヘルスの関連性は、
かねてより複数の先行研究で示唆されてきましたが、
その中でもカディ氏がアメリカの講演会「TED」を通して広めた
「パワーポーズ」は有名でしょう。
これは、自身に満ち溢れた「ヒーローのようなポーズ」をとることで、
体内のホルモンにも変化がおこり、自身に満ち溢れた状態になるというものでした。
他にも、スキップをしたり、笑顔を作ると楽しくなる、という研究報告があります。
このように、表情やポージング、動きを変化させると感情や思考が変わるという研究は、
科学的な再現や検証が難しく、
実際パワーポーズの効果については後年になって、
結果はだいぶ怪しくなってしまったのですが、
大事なことは、「タダで、しかも短時間でできる」上に「自信が出る可能性がある」ということです。
メンタルヘルスの悪化防止のため、たまには背伸びをして姿勢を正したり、
自信に満ち溢れたポーズをとってみてはいかがでしょうか。
余暇活動
趣味は、人生を豊かにし、生活満足度を向上させ幸福感や健康感を高めます。
メンタルヘルスにも貢献することが知られており、
抑うつ感情の低減に役立つとされています。
浴槽入浴
シャワーではなく、浴槽に浸かる入浴のことですね。
温熱効果による自律神経調整作用があるとされており、
健康的であるとされていました。
こちらは高齢者に限定した、それほど厳密な研究ではないのですが、
週に7日以上浴槽入浴を行う高齢者は、
そうでない高齢者と比べてうつ病の発症リスクが低かったそうです。
その差は発症率として2から3%程度の差でしたが、
特に冬場に浴槽入浴をすると、違いが明確だったとする報告があります。
ちなみに、良好な睡眠のためには、睡眠の1〜2時間前に、
38°〜41°のお湯で10〜20分程度にしておきましょう。
旅行
皆さん、旅行は好きですか?
旅行は、ポピュラーな趣味として浸透していますよね。
実は、旅行は非常にメンタルヘルスに良いとされています。
一年間旅行をしないと、翌年のうつ病のリスクは71%増えるそうです。
音楽
音楽を演奏したり、聴くことは、メンタルヘルスにとって重要です。
音楽の演奏は、
自閉症スペクトラム障害の患者の社会的コミュニケーションを改善させ、
うつ病患者の気分を改善させるようです。
また、音楽を聴くと、
不眠症患者の睡眠の質やストレスを改善させるようです。
禁煙
喫煙者は非喫煙者と比べて、うつ病のリスクが高いようです。
禁煙者は、喫煙者よりもおよそ40%程度有病率が低かったとの
研究があります。
メンタルヘルス的にも、世の中は禁煙の流れなんですね・・・
誰かと住む、標高が低いところに引っ越す
どうやら人間は社交的な生き物のようで、孤独を嫌うようです。
一人暮らしの人はそうでない人と比べて、
うつ病のリスクが1.4倍高かったとする報告があります。
メンタルが落ち込みやすい人は、気のおけない友人や家族、
恋人と一緒に暮らすのも手かもしれませんね。
それがストレスにならないことが前提ではあるでしょうが・・・。
また、900M以上の高地居住に住む人は、
それ以下に住む人と比べてうつ、不安、自殺念慮と優位に相関、
高地住居に居住していると30%ほどリスクが上がるという報告があります。
思い切って環境も変えるのも、有効かもしれません。
お笑い
人は笑うと、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が低下し、
免疫機能も強化されることがわかっています。
お笑いやユーモアは、
実際、うつや不安、睡眠を改善するそうです。
・・・私も、笑いの力はすごいと個人的に感じていて、
精神科専門医芸人としてTIKTOKも頑張っているんですけどね。
私の冗談は笑えないどころかすぐ炎上してしまうので、
最近は普通の動画ばかりあげてます。
青色を取り入れる
青空を見上げると、すこしホッとすることは、皆さんも経験があると思います。
青色はイライラを落ち着かせ、リラックスする効果があるようです。
普段目にするオフィスや自宅に、寒色系のアイテムを取り入れるのも良いかもしれません。
アート・クラフト制作
アーティスティックな活動もまた、メンタルヘルスによい作用をもたらすようです。
英国の文化省が行った調査では、絵画、彫刻、写真撮影や陶芸、
イラスト制作などのアート活動は、人生の主観的な幸福度と関連性が示されていました。
筆頭研究者のKeyes氏は、
「一つの作業に集中し、創造的に頭を働かせるのは素晴らしい体験で、雇用状況や貧困レベルを考慮しても主観的な幸福度に良い影響を与える可能性がある」
と述べています。
まとめ
如何でしたでしょうか。
メンタルヘルスに役立つ情報は様々あり、
一体何をやったらいいかわからない方も多いと思います。
一つに固執するよりは、全体的に幅広く取り入れるのが効果的です。
費用対効果を考えてざっくりおすすめを言うと、
バランスよく食べ、体を動かし、
休みの日は楽しんだり癒されたりする時間にして、
疲れたら無理せず、
ゆっくり寝るのがメンタルヘルスを向上させる秘訣です。
こちらの【メンタルヘルスを悪化させる行動習慣】の記事も併せて、
ご確認いただければ幸いです。
それでは皆さん、お大事に。
更新:2024.9.7
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医
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