認知行動療法をセルフで⑪【暴露反応妨害法】。

認知行動療法【暴露反応妨害法】とは

みなさんお加減どうですか?

どうも。いつも診る院長の、清水です。

 

ところで皆さん、怖いものってありますか?

 

どうせ、大体の男性は嫁、

大体の女性は体重計が怖いのでしょう。

わかります。

 

今日は、そんな怖がりのあなたに、

お勧めの技法【暴露反応妨害法(エクスポージャー)】をご紹介しますね。

うつや不安が強いと、回避行動を取りがち

うつや不安による回避行動のイメージ

抑うつあるいは不安が強いと、

抑うつや不安をもたらす状況を避ける行動を取る事が多い、と言われています。

例えば、通学路にいる大型犬が怖い小学生、

D君がいたとしましょうか。

D君は、自宅から50メートル先にいる大型犬が怖くて怖くて、

学校まで10分遠回りをして通学していました。

 

この遠回りのことを、回避行動といいます。

回避行動は、一時的に不安を減らす事に役立っていますが、

実は長期的には不安を改善させないばかりか、

むしろ悪化する方向に

進むらしいのです。

 

例えば、D君の思考と感情、行動の流れを

以下に示すとこうなります。

 

大型犬が怖い(感情)

大型犬を避ける為に遠回りする(回避行動)

恐怖感が一時的に減り、安堵する(感情)

安堵を得るには、遠回りをしなければならない(自動思考)


大型犬を避ける為にさらに遠回りする(回避行動)

大型犬がさらに怖くなる(感情)

 

この流れをみると、

D君は結局、大型犬は怖いという思考を訂正できず、

むしろ犬が怖いという思考が強化され続けてしまう可能性があります。

回避行動が、根本的な解決にならないという理由はまさにそこにあります。

 

 

じゃあ、どうするか。

 

立ち向かうしかないんです。

 

・・・・え?

どうしました?

そんな絶望的な顔して。

 

大丈夫です!

ちゃんとした方法がありますから!

 

D君の場合、遠回りせずに通学すること、

大型犬に遭遇しても、安全だと確信することが、ゴールとなります。

 

しかし、

それができないから遠回りしているんじゃないか!

というツッコミが入るでしょう。

それはごもっともです。

いきなり大型犬と遭遇する事は、到底無理。

 

実は、この暴露反応妨害法、

そうした方のために

ちょっとしたコツがあるんです。

 

不安階層表を使って行動計画を立てる

回避行動の対象例

ところで皆さん。

跳び箱飛んだこと、ありますか?

 

よく思い出して下さい。

最初から、跳び箱6段跳べた人って、

いたんでしょうか?

 

大多数の方が、低い段数から、

次第に高い段数に挑戦して、

跳べるようになってきたはずです。

 

低い段数で成功を続けると、不安や恐怖感が弱まるから、

高い段数にチャレンジできるんです。

 

それを思い出して下さい。

 

大型犬が怖いDくんも、

同じ原理で恐怖を克服することになりました。

この方法が、エクスポージャーです。

その為には、不安階層表を使うことが一般的です。

Dくんの場合は、下記のようなものを作成します。

 

不安階層表         (不安度)
最短の通学路を1人で通り、大型犬に遭遇する 100
最短の通学路を友達と通り、大型犬に遭遇する 80
友達が飼っている中型犬に触れてみる     60
友だちが飼っている中型犬を遠くからみる   40
ペットショップにいる犬をみる        20
犬の吠える声を聴く             10
小型犬の写真をみる             5

不安度が大きい事から小さい事まで、

100から0のものを作成し、紙にメモしておく。

これだけで結構です。

不安度が低~中程度のアクションから実行していく

実際に自分でやろうと思ったら、不安度が

50未満からはじめる事が一般的です。

 

恐怖を感じるアクションが出来たら、

不安・恐怖度を振り返り、

当初自身が心配していた事が起ったのかそうでなかったのか。

また、

不安や恐怖度が減少していかないか、

その都度フィードバックして下さい。

 

上手くいけば、・・・何度も繰り返していくうち、

「自分が想像していたような最悪の結末は、起こらなかっただろう」

という考えが強化されていき、

恐怖度は減少していくと思います。

 

もし恐怖度が減少していったら、

よりハイレベルな恐怖度のものに

チャレンジしていきます。

 

この要領で、恐怖度100のものにチャレンジできるよう

次第に負荷を増やします。

 

どうですか?

原理は跳び箱と一緒でしょ?

 

もし、不安が強くてアクションが試せなくても、

さらに軽い不安度のものにチャレンジすれば

よいだけです。

 

これもある種行動実験だと考えて、

失敗したときの行動もあらかじめ考えておいてから

チャレンジしたり、

実際に恐怖に襲われたときに使うことができる、

呼吸法、マインドフルネス法などの

リラクゼーション法をあらかじめトレーニングしておいてから、

取り組むと、さらに暴露前の不安が減らせることができます。

 

認知行動療法(暴露反応妨害法)の事例

Dくんは一時的に薬の併用もしたものの、

初診から3カ月程度で、

D君は無事、通学路を最短にして

犬にほえられても動じなくなりました。

 

もしあなたが不安や恐怖で困っているのなら、

このスキルを試してみてはいかがでしょうか?

 

無理する必要はないです!

できない事を無理にやると、

悪化の恐れもあるので、

マイペースにやっていきましょう。

 

それでは次回のスキルk【スモールステップ化】でまた、

お会いしましょう。

そのときまで、お大事に。

 

【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社

更新:2024.1.24

 

執筆者紹介

清水聖童
ライトメンタルクリニック院長
日本精神神経学会認定専門医/精神保健指定医/薬物療法研修会修了/認知症サポート医

 

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