認知行動療法【暴露反応妨害法】とは

 

皆さん、お加減いかがですか?

どうも。いつも診る院長の清水です。

 

突然ですが皆さん、怖いものってありますか?

 

 

どうせ、大体の男性は妻とか彼女とか女性が怖くて
大体の女性は体重計が怖いんでしょう?
分かります。

 

今日は、そんな怖がりのあなたに

お勧めの技法【暴露反応妨害法(エクスポージャー)】をご紹介しますね。

うつや不安が強いと、回避行動をとりがち

抑うつあるいは不安が強いと、

抑うつや不安をもたらす状況を避ける行動をとることが多い、とされています。

 

 

曝露反応妨害法

 

じゃあ例えば、通学路に建つ一軒の家の庭で飼われている大型犬が怖い

D君がいたとしましょう。

 

お庭には柵がありますが、その大型犬は人が通ると、

柵の近くに寄っていきます。

その道は車が一台通れるほどの広さしかなく、犬に気づかれないように通ることはできません。

 

D君は、じたくから50メートル先にいる大型犬が怖くて怖くて

学校まで10分遠回りをして通学しました。

 

この遠回りすることを、「回避行動」と言います。

 

回避行動は、一時的に不安を減らすことに役立っていますが、

実は長期的には不安を改善できないだけでなく、むしろ悪い方向に進むらしいのです・・・・

 

例えば、D君の思考と感情、行動の流れを示すとこうなります

 

大型犬が怖い(感情)
大型犬を避けるために遠回りする(回避行動)
恐怖感が一時的に減り、安堵する(感情)
安堵を得るためには、遠回りをしなければならない(自動思考)
大型犬を避けるために、さらに遠回りをする(回避行動)
大型犬がさらに怖くなる

 

 

この流れを見ると、

D君は結局、大型犬は怖いという思考を訂正できず

むしろ「犬が怖い」という思考が強化され続けてしまう可能性があります。

 

回避行動が、根本的な解決にならない

という理由はそこにあるんです。

 

じゃあどうしたらいいの?って思いますよね。

 

 

立ち向かうしかないんです。

 

 

・・・・・

 

・・・・・・・・・え?

 

どうしたんですか?

 

そんな眉間にしわ寄せて

 

そんな絶望的な顔をして

 

大丈夫です!

ちゃんとした方法がありますから!

 

・D君の場合は、遠回りをせずに通学すること
・大型犬に遭遇しても、安全だと確信すること

この二つがゴールとなります。

 

いやいや、それができないから遠回りしてるんだ!!

とツッコミが入るでしょう。

そうなんです。

いきなり怖いと思っている大型犬と遭遇することは、到底無理なんです。

 

実は、この暴露反応妨害法

そうした方のために、ちょっとしたコツがあるんです。

 

不安階層表を使って行動計画を立てる

曝露反応妨害法

 

ところで皆さん

跳び箱って、やったことありますか?

 

その時のことをよく思い出してください。

 

最初から、6段飛べた人います?

多分ほとんどの人が、1段とか2段などの低い段数から跳んだと思います。

 

低い段数を何度も成功してから、次第に高い段数に挑戦したはずです。

 

最初は「6段高いな、跳べるかな…」と不安や恐怖を感じてたとしても、

4段成功した時くらいから「これ4段飛べたから、6出来そうだな」と気持ちが変わっていたかもしれません。

低い段数で成功を続けると、不安や恐怖感が弱まるから
高い段数にチャレンジできるんです。

それを思い出してください。

 

大型犬が怖いD君も

同じ原理で恐怖を克服することになりました。

この方法がエクスポージャーです。

 

そのためには

不安階層表

を使うことが一般的です。

 

 

D君の場合は次のようなものを作成します。

 

不安階層表                  (不安度)

 最短の通学路を一人で通り、大型犬に遭遇する   100

 最短の通学路を友人と通り、大型犬に遭遇する   80

 友達が飼っている中型犬に触れてみる       60

 友達が飼っている中型犬を遠くから見る      40

 ペットショップにいる犬を見る          20

 犬の吠える声を聴く               10

 小型犬の写真を眺める               5

 

このように、不安度が大きいものから小さいものまで

100から0のものを作成し紙にメモしておく。

 

これだけで大丈夫です。 

不安度が低~中程度のアクションから実行していく

実際に自分でやろうと思ったら、不安度が50未満から始めることが一般的です。

 

恐怖を感じるアクションができたら、不安・恐怖度を振り返り

当初、自分が心配していたことが起こったのか、そうでないのか

逆に、不安や恐怖度が減少していないか

その都度、フィードバックをしてくださいね。

 

上手くいけば、何回も繰り返していくと

「自分が想像していたような最悪な結末は、起こらなかっただろう」

という考えが強化されていき、恐怖度は減少していくと思います。

 

もし恐怖感が減っていたら、より上の恐怖度のものにチャレンジしていきます。

この要領で、最終的には恐怖度100のものにチャレンジできるよう

次第に負荷を増やしていきます。

 

どうですか?

さっき話した、跳び箱の原理と同じでしょう?

 

もし、不安が強くてアクションが試せなくても、

さらに軽い不安度のものにチャレンジすればいいんです。

無理にアクションを試すのではなく、できそうなアクションを試せばいいんです。

 

これもある種、行動実験だと考えて

しっぱいしたときのこうどうもあらかじめ考えておいてからチャレンジしたり、

実際に恐怖に襲われたときに使うことができる

呼吸法」「マインドフルネス法などのリラクセーション法を

あらかじめトレーニングしてから取り組むと、さらに暴露前の不安えお減らすことができます。

曝露反応妨害法

 

D君は、一時的に薬の併用はしたものの

初めて来院した時から3か月程度で、無事通学路を最短にして通学でき

犬に吠えられても動じなくなりました。

 

 

もしあなたが不安や恐怖で困っているのなら、

このスキルを試してみてはいかがでしょうか?

 

無理する必要はないですよ!

できないことを無理にしてしまうと、悪化の恐れがあります。

なので、マイペースに、のーんびりとやっていきましょう。

 

 

それでは、次回のスキル【スモールステップ化】で

またお会いしましょう。

 

 

その時まで、お大事に

 

 

 

【引用・参考文献】
・ジュディス・S・べック 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで第二版 星和書店
・Lee David 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社
・福井至 図解やさしくわかる認知行動療法 ナツメ社