tDCSで学業成績が良くなる?認知症にもよい?
はじめに
皆さん、お加減いかがでしょうか。
どうも。いつも診る院長、清水です。
本日は、当院で導入しているtDCS(経頭蓋直流刺激療法)について、少しお話したいと思います。
「本当に効くの?」
「うさんくさいんじゃないの?」
といろいろ突かれることの多い、それがtDCS。
でも私わかってますよ。
みんな、気になるからつつきたくなるんだよね・・・?
気になるあの子と、一緒だよね?!?!?!
tDCSの脳機能向上作用
tDCSは、頭皮上から非常に弱い電流を流し、脳機能へアプローチする治療法です。
海外では以前から研究が進められており、うつ症状だけでなく、注意機能や作業記憶、学習効率などへの影響についても検討されてきました。
当院では主に、うつ状態や意欲低下、思考力低下を伴う患者さんに対して、補助的治療として活用しています。
さあ、ここで、
「おっ?ということは、効くってことおおおーーーーー??!!!!!!」
と思われた方。
・・・まあ、ゴボウ茶でも飲んで、落ち着きたまえ。
医者が「効く!」と言うのは、
まっことに覚悟のいることでしてね・・・・。
効果というのは、グラデーションになってまして、
「効果量」と「信頼性」、そして「妥当性」の側面から効果を考えなくてはならないのです。
・・・・あ〜医者ってめんどくさいね。
めんどくさい、医者って。
効果量、信頼性、妥当性
とある治療薬Aがあったとします。
これは血圧を下げる薬で、平均的に10ほど降圧効果があったとしましょう。
そして、治療薬Bは平均20ほど降圧効果があったとします。
この場合、治療薬Bのほうが治療薬Aよりも「効果量」が高いと表現します。
いわずもがな、効果量が多い薬は、効く薬だというのが直感的にわかりますね。
しかし、ここで問題があります。
その根拠となるデータが、たった4人のデータだったらどうでしょう・・・・。
その先1000人のデータをとったら、平均的な効果量が変わるかもしれませんよね。
それに、その降圧薬を試す環境が、被験者にとってブレブレで、気温は±10℃ほどかわる環境だったり、
食事が人それぞれ違ったり、待機時間に漫画を読んでリラックスしている人もいれば
緊張しながら仕事をして待機しているような、まるで条件の統制がなってない研究だったらどうでしょうか。
本当に薬の効果で血圧が落ちたのか、わからないですよね。
このように、研究そのものの量や質のことを、「信頼性」といいます。
最後に、「妥当性」ですが、これは、「どの条件で効くのか」ということです。
ちょっとわかりにくいので説明しましょう。
例えば、効果量10の降圧剤の研究が、その量も質も十分あったとします。
つまり効果量も信頼性も担保されている状態ですね。
しかし、その薬を子供に向けて使うとしたら・・・・?
妥当性は一気に疑わしくなります。
なぜなら、治療薬Aの研究が、子供に対してやってなかったからです。
大人に対して試していた薬が、子供だと効かない可能性がある。
あるいは、とある病気の患者だと効かない可能性がある。
このように、使用する対象まで統制されていると、「妥当性が高い」薬となるのです。
医者は、それらが担保されてはじめて、
「治療の効果がある」「効く」と表現するのですね。
・・・・ああ面倒くさい。
tDCSは果たして効く?どれくらい?
精神科での標準的な保険診療(薬物療法+支持的精神療法)を効くとし、10段階評価で10とするなら、おおよそtDCSは以下のようにご理解ください。
| 効果量 | 4〜6 / 10 |
| 信頼性・エビデンスの質 | 4〜5 / 10 |
| 外的妥当性 | 3〜5 / 10
|
およそ、すべての指標で半分以下ですね。
・・・皆さんはどうお考えでしょうか?
私としては、確かに標準治療よりも劣ってはいるけども、
薬物療法や心理療法ができない人には悪くない選択肢にみえるんですよね。
なぜなら、tDCSのコストは人件費がかからず圧倒的に低く、
治療モチベーションが高いときに集中的に治療できれば、
その後(暫くは)治療の必要がなくなることが期待できるからです。
・・・・もちろん、これがめっちゃ高額治療だったら別ですが・・・。
実臨床では一定の手応えを感じていて、
例えば、これまで定期的なmECT(修正型電気けいれん療法)が必要で、入退院を繰り返していた方が、
tDCS導入後は外来通院のみで比較的安定して経過できているケースもみられています。
また、継続的に再診している患者さんの中でも、
- 「頭の回転が戻ってきた感じがする」
- 「集中しやすくなった」
- 「以前より考えがまとまりやすい」
といった変化を自覚される方は一定数おられます。
最近では、
「子どもの集中力や学習効率に役立ちますか?」
「最近物忘れが増えてきたのですが、認知機能維持に使えますか?」
といったご相談も増えてきました。
結論から申し上げると、“一定の可能性は示唆されているが、まだ発展途上の領域”というのが現時点での正直なところです。
実際、近年のシステマティックレビューやメタアナリシスでは、高齢者や軽度認知障害(MCI)に対して、tDCSが認知機能改善に寄与する可能性が報告されています。
特に、認知トレーニングと組み合わせた場合、作業記憶や注意機能の改善が比較的安定して認められるという報告も増えてきています。
一方で、
- 効果量には個人差があること
- 効果が永続するわけではないこと
- 研究条件によって結果にばらつきがあること
などから、「成績が劇的に上がる」「認知症を予防できる」と断定できる段階では、まだありません。
ただ、比較的侵襲性が低く、適切に使用すれば今後さらに可能性が広がる領域だとも感じています。
当院としては、保険診療を軸にしながらも、
「病気」と「健康」の間にある困りごとにも、できる限り丁寧に向き合っていきたいと考えています。
ご興味のある方は、診察時にお気軽にご相談ください。
それでは皆さん、お大事に。

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長
清水聖童(Seido shimizu)
精神保健指定医/日本精神神経医学会認定専門医/認知症サポート医/コンサータ処方登録医/
【引用・参考文献】
・Feltman K, et al.Viability of tDCS in Military Environments for Performance Enhancement: A Systematic Review.Military Medicine. 2019.
・Liu Y, et al.Effects of transcranial electrical stimulation on working memory in patients with schizophrenia: A systematic review and meta-analysis.Psychiatry Research. 2020.
・Stonsaovapak S, et al.Effect of Anodal Transcranial Direct Current Stimulation at the Right Dorsolateral Prefrontal Cortex on Cognitive Function in Patients With Mild Cognitive Impairment: A Randomized Double-Blind Controlled Trial.Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2020.
・Lv Y, et al.A meta-analysis of the effects of transcranial direct current stimulation combined with cognitive training on working memory in healthy older adults.Frontiers in Aging Neuroscience. 2024.
・Prathum T, et al.A systematic review and meta-analysis of the impact of transcranial direct current stimulation on cognitive function in older adults with cognitive impairments.Alzheimer’s Research & Therapy. 2025.
・Ben Izhak S, et al.Enhanced cognitive performance in older adults through combined cognitive training and transcranial direct current stimulation.Scientific Reports. 2025.
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