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【専門医解説】クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)とは?効果・副作用・依存性・減薬法

  • 更新日:2026.09.18
  • 公開日:2026.09.18

はじめに

クロナゼパム(商品名:リボトリール、ランドセン)は、
ベンゾジアゼピン系に分類される抗てんかん薬です。
脳内の抑制性神経伝達を担うGABAの作用を増強し、
過剰な神経活動を抑えることで強い抗けいれん作用を示します。

日本で承認されている適応は、ミオクロニー発作、失立発作、点頭てんかん、
精神運動発作、自律神経発作などのてんかん発作です。[1]
一方、精神科・睡眠医療では、その抗不安作用・鎮静作用・筋弛緩作用と比較的長い作用時間を利用して、
パニック症などの不安症状、
レム睡眠行動障害(RBD)などに使用されることがあります。

ただし、これらの多くは国内では適応外使用です。
また、眠気・ふらつきだけでなく、長期使用に伴う身体依存や離脱症状にも注意が必要です。
「長く効くから使いやすい」という長所と、
「長く残るため副作用や依存管理が必要」という短所の両方を理解することが重要です。

クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)とは

一般名
クロナゼパム(Clonazepam)
商品名
リボトリール/ランドセン
薬効分類
抗てんかん薬/ベンゾジアゼピン系薬
効能・効果
ミオクロニー発作、失立発作、点頭てんかん、精神運動発作、自律神経発作など
半減期
約27時間(健康成人1mg単回投与)[1]
剤形
錠剤0.5mg/1mg/2mg、細粒0.1%/0.5%
重要なポイントクロナゼパムは精神科でも使われる薬ですが、
日本の添付文書上の承認適応はてんかん発作です。
不安症、レム睡眠行動障害(RBD)、レストレスレッグス症候群(RLS)、
双極性障害などへの使用は、原則として適応外使用として位置づけを理解する必要があります。

クロナゼパムの作用機序

クロナゼパムは、神経細胞のGABAA受容体に存在する
ベンゾジアゼピン結合部位に結合します。

GABAA受容体そのものを直接活性化するのではなく、
GABAの作用を増強する正のアロステリック調節薬
(positive allosteric modulator)
として働きます。

クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)のGABA-A受容体を介した作用機序
クロナゼパムはGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、
GABAによる抑制性神経伝達を増強します。

GABAがGABAA受容体に結合するとCl−チャネルが開き、
神経細胞内へCl−が流入します。
クロナゼパムはこの反応を増強し、
Cl−チャネルの開口頻度を高める方向に作用します。

その結果、神経細胞膜は過分極し、
活動電位が発生しにくい状態になります。
過剰な神経発火が抑制されることが、
抗けいれん作用、抗不安作用、鎮静作用などにつながると考えられています。[1][2]

クロナゼパムの薬物動態

項目 特徴 臨床上の意味
最高血中濃度到達時間 約2時間 服用後、比較的ゆっくり血中濃度が上昇します。
半減期 約27時間 比較的長時間作用し、血中濃度の変化が緩やかです。
蛋白結合率 約95% 血清蛋白と高率に結合します。
排泄 代謝後、尿・便中へ排泄 肝機能・腎機能低下時には慎重な観察が必要です。

クロナゼパムは比較的半減期が長いため、
短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬と比較すると血中濃度が急激に低下しにくい特徴があります。

一方、高齢者や肝・腎機能が低下している方では、
眠気やふらつきなどの作用が長く続く可能性にも注意します。

日本で承認されている適応

クロナゼパムの国内添付文書上の効能・効果は、
以下のてんかん発作です。[1]

  • ミオクロニー発作
  • 失立(無動)発作
  • 点頭てんかん(幼児けい縮発作、BNSけいれんなど)
  • 精神運動発作
  • 自律神経発作

成人・小児では通常、1日0.5~1mgから開始し、
症状を確認しながら徐々に増量します。
添付文書上の通常維持量は1日2~6mgを1~3回に分けて服用します。[1]

用量について上記はてんかんに対する国内承認用量です。
不安症や睡眠関連疾患などの適応外使用に、
そのまま同じ用量を当てはめるものではありません。

精神科・睡眠医療で使われることがある場面

クロナゼパムは抗てんかん薬ですが、
GABA神経系を増強する作用から、
精神科や睡眠医療でも補助的に使用されることがあります。

ただし、疾患によって現在のエビデンスや推奨度は大きく異なります。

疾患・症状 位置づけ 臨床上のポイント
てんかん 国内承認適応 ミオクロニー発作などに抗けいれん作用を示します。
長期使用では耐性にも注意します。
パニック症・強い不安 国内適応外 抗不安作用は比較的速やかですが、
長期治療ではSSRI・SNRIや認知行動療法などが中心となります。
ベンゾジアゼピン系薬を漫然と長期使用しないことが重要です。[7]
全般性不安症 国内適応外 強い不安が一時的に高まっている場面などで
補助的に検討されることがありますが、
維持治療の中心となる薬ではありません。
レム睡眠行動障害(RBD) 国内適応外 夢に関連した異常行動を抑える目的で使用されます。
AASMガイドラインでも成人RBDへの使用が条件付きで推奨されています。[5]
レストレスレッグス症候群(RLS) 国内適応外 過去には睡眠改善を目的に使用されてきましたが、
現在のAASMガイドラインでは有効性のエビデンスと
鎮静・認知機能・依存リスクを考慮し、
routineな使用は推奨されていません。[6]
双極性障害の焦燥・興奮 国内適応外・補助的 急性期の強い焦燥、不眠、興奮などに
短期間補助的に使用されることがあります。
クロナゼパムそのものを気分安定薬として
維持療法の中心に置く薬ではありません。
アルコール離脱症状 ベンゾジアゼピン系薬として関連 アルコール離脱治療ではベンゾジアゼピン系薬が中心となりますが、
一般にはジアゼパム、ロラゼパム、
クロルジアゼポキシドなどの使用経験が豊富であり、
クロナゼパムを標準的な第一選択薬とするわけではありません。[8]

パニック症や不安症に使う場合

クロナゼパムには比較的速やかな抗不安作用があり、
強い不安、緊張、パニック発作などを軽減することがあります。

しかし、
パニック症や
全般性不安症の
長期治療では、SSRI・SNRIなどの抗うつ薬や
心理療法・認知行動療法などの治療
が中心となります。

「効く」と「長期治療に向く」は別の問題ですベンゾジアゼピン系薬は不安を比較的速やかに軽減できる一方、
長期使用では耐性、身体依存、認知機能への影響、転倒などが問題となります。
症状が改善した後も漫然と継続するのではなく、
定期的に治療上の必要性を再評価します。

レム睡眠行動障害(RBD)への使用

レム睡眠行動障害では、
本来REM睡眠中に生じるはずの筋活動抑制が不十分となり、
夢の内容に合わせて叫ぶ、殴る、蹴る、
ベッドから落ちるなどの行動がみられることがあります。

クロナゼパムはRBDの異常行動を減少させる目的で古くから使用されており、
AASMガイドラインでも成人RBDに対する治療選択肢として
条件付きで推奨されています。[5]

一方、RBDは高齢者に多く、
クロナゼパムによる眠気、ふらつき、転倒、
認知機能への影響が問題になりやすい疾患でもあります。

睡眠時無呼吸症候群を合併している場合には、
呼吸状態への影響にも注意が必要です。

睡眠に関する症状については、
睡眠障害の解説
もご参照ください。

レストレスレッグス症候群(RLS)への使用は?

クロナゼパムはRLSそのものの異常感覚を直接改善するというより、
鎮静作用によって睡眠を取りやすくする目的で
使用されてきた歴史があります。

しかし現在のAASMガイドラインでは、
クロナゼパムについて十分な有効性を示すエビデンスが乏しく、
眠気、認知機能への影響、身体依存などの不利益を考慮して、
成人RLSへの使用を条件付きで推奨しないとしています。[6]

現在は鉄欠乏の評価・補正に加え、
ガバペンチン、プレガバリン、
ガバペンチン エナカルビル(レグナイト)
などを含めて治療を検討します。

アルコール離脱症状との関係

アルコール使用障害では、
飲酒を急に中止すると、
振戦、発汗、頻脈、不眠、不安、幻覚、
けいれん、せん妄などの離脱症状が生じることがあります。

中等度以上のアルコール離脱では、
ベンゾジアゼピン系薬が治療の中心となります。[8]

ただし、実際の離脱治療では
ジアゼパム、ロラゼパム、クロルジアゼポキシドなどの
使用経験が豊富であり、
クロナゼパムを第一選択薬として routinely 使用するわけではありません。

重症離脱は外来だけで無理に管理しないことが重要です過去に離脱けいれん・振戦せん妄がある場合や、
意識障害、幻覚、著しい振戦、自律神経症状などがある場合には、
入院環境を含めた治療が必要になることがあります。

主な副作用

クロナゼパムでは、眠気やふらつきが比較的よくみられます。
特に開始時や増量時、高齢者、
他の鎮静作用を持つ薬を併用している場合には注意が必要です。[1]

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比較的みられやすい副作用


眠気

ふらつき

めまい・運動失調

脱力・筋緊張低下

添付文書では眠気24.7%、ふらつき15.6%と報告されています。[1]

特に注意したい症状

呼吸抑制呼吸が浅い、強い傾眠、意識がはっきりしないなど。

刺激興奮・錯乱まれに、逆に興奮、攻撃性、混乱などが現れることがあります。

依存・離脱症状急な減量や中止により、
不安、不眠、振戦、幻覚、せん妄、けいれんなどが
現れることがあります。

肝機能障害・黄疸AST・ALT・γ-GTP上昇などを伴う
肝障害が報告されています。

意識障害、呼吸抑制、強い混乱、
けいれんなどがみられる場合には、
速やかな医療評価が必要です。

服用中に確認したいこと



眠気や反応速度低下があるため、
自動車運転や危険な機械操作は行いません。


アルコールとの併用では中枢神経抑制が増強されるため、
飲酒は避けることが基本です。


睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬など
他の中枢神経抑制薬との併用時は、
鎮静が強くなることがあります。


高齢者ではふらつき・運動失調・転倒に
特に注意します。

禁忌・慎重に使用する状態

国内添付文書では、以下の患者には
クロナゼパムを投与しないこととされています。[1]

禁忌

  • クロナゼパムの成分に対する過敏症の既往がある方
  • 急性閉塞隅角緑内障の方
  • 重症筋無力症の方

また、呼吸機能低下、心疾患、脳器質性疾患、
肝機能障害、腎機能障害、高齢者などでは
作用が強く現れる可能性があり、慎重な投与が必要です。[1]

連用中は添付文書上、
定期的な肝機能・腎機能・血液検査を行うことが望ましい
とされています。[1]

アルコールとの併用は避ける

クロナゼパムとアルコールはいずれも
中枢神経を抑制する作用があります。

両者を併用すると、
眠気やふらつきだけでなく、
意識障害や呼吸抑制などが強く現れる可能性があります。

服用中の飲酒には注意が必要です添付文書でも、
アルコールとの併用によって中枢神経抑制作用が
増強する可能性があるため、
併用しないことが望ましいとされています。[1]

依存と離脱症状

ベンゾジアゼピン系薬を一定期間継続すると、
処方通り服用していても身体依存が
形成されることがあります。

身体依存は「依存症」と同じ意味ではありません。
身体が薬の存在に適応した結果、
急激に減量・中止すると離脱症状が出る状態を指します。

急な中止で起こりうる症状

  • 強い不安・焦燥
  • 反跳性不眠
  • 振戦
  • 発汗・動悸
  • 知覚過敏
  • 幻覚・妄想
  • せん妄・混乱
  • けいれん発作

特にてんかん治療中の患者では、
急激な減量・中止によって
発作増悪やてんかん重積状態に
つながる可能性があります。[1]

クロナゼパムの減薬方法

クロナゼパムの減薬に、
すべての患者に当てはまる固定された減量速度はありません。

服用期間、1日量、年齢、原疾患、
過去の離脱症状、併用薬などによって
適切な速度は大きく異なります。

ベンゾジアゼピン減薬に関する臨床ガイドラインでは、
長期間使用している患者では、
総1日量の5~10%程度を2~4週間ごとに減量する
ような緩徐な方法から開始し、
離脱症状に応じて速度を調整する方法が提案されています。[9]

STEP 1
現在の1日量・服用期間・原疾患を確認
STEP 2
小さな幅で減量する
STEP 3
不眠・不安・振戦などの離脱症状を確認
STEP 4
症状が強ければ減量幅を小さくする、または一時的に維持する

日本で販売されているリボトリール・ランドセンには、
錠剤のほか細粒0.1%・0.5%があります。
ごく少量ずつ調整する必要がある場合には、
細粒製剤を利用することで細かな用量調整がしやすくなることがあります。

自己判断で急に中止しないでください「依存が心配だから今日から飲まない」という中止方法は、
かえって離脱症状やけいれんの危険を高めます。
減薬が必要な場合は、
処方医と計画を立てて段階的に進めます。

高齢者で特に注意すること

高齢者ではクロナゼパムの鎮静作用や運動失調が強く現れやすく、
夜間のトイレ移動などで転倒・骨折につながる可能性があります。

  • 日中も強く眠そうにしていないか
  • 歩行が以前より不安定になっていないか
  • 夜間に転倒していないか
  • 会話や反応が鈍くなっていないか
  • 他の睡眠薬・抗不安薬が重複していないか

特にRBDなどで高齢者に使用する場合には、
症状改善だけでなく、
転倒、認知機能、睡眠時呼吸障害などを含めて
継続的に評価することが重要です。

よくある質問

クロナゼパムは抗不安薬ですか?

抗不安作用はありますが、
日本では抗不安薬として承認された薬ではなく、
添付文書上は抗てんかん薬です。
パニック症などに使用される場合は
適応外使用となります。

リボトリールとランドセンは違う薬ですか?

いずれも有効成分はクロナゼパムです。
商品名と製造販売会社は異なりますが、
同じ有効成分を含む製剤です。

長時間作用型なら依存しにくいですか?

長い半減期によって血中濃度が急激に上下しにくい特徴はありますが、
身体依存が起こらないという意味ではありません。

長期間連用した場合には、
減量・中止時の離脱症状に注意が必要です。

眠気やふらつきが出たらどうすればよいですか?

転倒を避けるため無理に歩き回らず、
強い眠気やふらつきが続く場合には処方医へ相談してください。
自己判断で急に薬を中止することは避けます。

お酒を飲んでも大丈夫ですか?

原則として避けてください。
アルコールによってクロナゼパムの鎮静作用が増強され、
強い眠気、ふらつき、意識障害、
呼吸抑制などにつながる可能性があります。

クロナゼパムはRLSにも効きますか?

過去には使用されてきましたが、
現在のAASMガイドラインでは有効性のエビデンスが乏しく、
鎮静や認知機能への影響、依存リスクを考慮して、
成人RLSへの使用は条件付きで推奨されていません。[6]

まとめ

クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)は、
GABAA受容体を介する抑制性神経伝達を増強し、
神経細胞の過剰な興奮を抑える
ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬です。

日本で承認されている主な適応は、
ミオクロニー発作、失立発作、点頭てんかん、
精神運動発作、自律神経発作などです。
半減期は約27時間と比較的長く、
持続的な作用を特徴とします。

精神科・睡眠医療では、
パニック症などの不安症状、
RBD、焦燥・興奮などに適応外で使用されることがあります。
一方、RLSに対しては現在のガイドラインでは推奨度が低下しており、
疾患ごとにクロナゼパムの位置づけは異なります。

また、眠気・ふらつき・転倒だけでなく、
長期使用による身体依存と離脱症状が重要な薬剤です。
使用する場合は必要性を定期的に評価し、
中止するときは自己判断で急に止めず、
症状を確認しながら段階的に減量することが重要です。

執筆者
執筆者プロフィール

医療法人社団燈心会 理事長
ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医

引用・参考文献

・[1]独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). リボトリール錠0.5mg/1mg/2mg・細粒0.1%/0.5% 添付文書.
・[2]井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・[3]樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・[4]姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
・[5]Howell M, Avidan AY, Foldvary-Schaefer N, et al. Management of REM sleep behavior disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2023;19(4):759-768.
・[6]Winkelman JW, Berkowski JA, DelRosso LM, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2025;21(1):137-152.
・[7]National Institute for Health and Care Excellence. Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management. Clinical Guideline CG113.
・[8]American Society of Addiction Medicine. The ASAM Clinical Practice Guideline on Alcohol Withdrawal Management. 2020.
・[9]American Society of Addiction Medicine, et al. Joint Clinical Practice Guideline on Benzodiazepine Tapering: Considerations When Benzodiazepine Risks Outweigh Benefits. 2025.
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