【精神科専門医解説】テグレトール(カルバマゼピン)の効果・副作用|双極症での使い方・血中濃度・相互作用

目次
- はじめに
- テグレトール(カルバマゼピン)とは?
- 作用機序|Na⁺チャネルの不活性化を安定化する
- 双極症ではどのようなときに使う?
- 気分安定薬4剤の臨床的な使い分け
- 執筆者の臨床的見解|「効くが、薬理学的コストが高い薬」
- 認知症のBPSDに使うことはある?
- 用法・用量|200~400mg/日から開始
- 自己誘導|テグレトール最大の薬物動態上の特徴
- 血中濃度(TDM)|4~12µg/mLをどう読むか
- 活性代謝物|カルバマゼピン-10,11-エポキシド
- 薬物相互作用|最大の処方ピットフォール
- 副作用|ふらつき・眠気・めまいが比較的多い
- 重症薬疹|開始後3か月は特に注意
- HLA-A*31:01|日本人で重要な薬理遺伝学
- 低ナトリウム血症・SIADH
- 血液障害・肝障害
- 執筆者の実務案|導入時は「薬疹・Na・自己誘導」を追う
- 妊娠を考える場合
- よくある質問
- まとめ
- 引用・参考文献
はじめに
テグレトール(一般名:カルバマゼピン)は、
抗てんかん薬として長い歴史を持つ一方、
精神科では躁病・双極症の躁状態に用いられる気分安定薬です。
リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、
第二世代抗精神病薬など治療選択肢が増えた現在では、
以前ほど最初から選ばれる薬ではありません。
しかし、混合性の特徴を伴う躁状態や、
他の気分安定薬だけでは十分に安定しない症例などで、
現在でも重要な選択肢になることがあります。
一方、テグレトールには
自己誘導、多数の薬物相互作用、重症薬疹、低ナトリウム血症、血液障害
という独特の処方上の難しさがあります。
「効くかどうか」だけでなく、
薬物動態まで理解して使うことが重要な薬です。
躁状態に有効性を持つ気分安定薬ですが、
現在の臨床では
「何mg処方するか」以上に、血中濃度・自己誘導・併用薬・副作用をどう管理するか
が重要です。
テグレトール(カルバマゼピン)とは?
カルバマゼピン
テグレトール
抗てんかん薬・気分安定薬
躁病・躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態
200~400mg/日から開始し、通常600mg/日。症状により1,200mg/日まで
単回投与:約36時間
反復投与:約16~24時間
主にCYP3A4
自己誘導・強い薬物代謝酵素誘導
国内では現在、
テグレトール錠100mg、錠200mg、細粒50%
が使用されています。
てんかんや三叉神経痛にも使用されますが、
本記事では主として
双極症を中心とした精神科臨床
について解説します。
作用機序|Na⁺チャネルの不活性化を安定化する
カルバマゼピンの中心的な薬理作用は、
神経細胞膜に存在する
電位依存性Na⁺チャネルの不活性化状態を安定化すること
です。
神経細胞が活動電位を発生すると、
Na⁺チャネルが開いてNa⁺が細胞内へ流入します。
その後チャネルは一時的に「不活性化状態」となり、
すぐには再び開けなくなります。
カルバマゼピンはこの状態を安定化させることで、
神経細胞が短時間に何度も活動電位を発生する
高頻度反復発火を抑制すると考えられています。
→
Na⁺流入を抑制
→
反復発火を抑制
→
神経の過剰興奮を抑える

高頻度の反復発火を抑制します。
「状態依存性」という特徴
カルバマゼピンは、
チャネルの状態によって結合しやすさが変わる
state-dependent / use-dependentなNa⁺チャネル抑制
を示します。
そのため、
高頻度に発火している神経細胞ほど影響を受けやすく、
過剰な反復発火を抑制しやすいことが薬理学的特徴です。
正常な神経伝達には全く作用しない」
という意味ではありません。
実際には眠気、めまい、複視、運動失調なども起こり得ます。
高頻度発火に対して相対的に作用しやすい
と理解する方が薬理学的には正確です。
双極症ではどのようなときに使う?
躁病・躁状態
日本では、
躁病および躁うつ病の躁状態
に対して正式な適応があります。
易刺激性、多弁、活動性亢進、
睡眠欲求の減少、衝動性、興奮などを伴う
躁状態に使用されます。
ただし現在では、
第二世代抗精神病薬、
リチウム、バルプロ酸なども有力な選択肢であり、
カルバマゼピンをすべての躁状態で
最初に選択するわけではありません。
混合性の特徴を伴う躁状態
カルバマゼピンが現在でも特に興味深いのが、
混合性の特徴を伴う躁病エピソードです。
躁的な活動性亢進や易刺激性がありながら、
同時に抑うつ、焦燥、不安などが強く混在する状態です。
日本うつ病学会「双極性障害(双極症)2023」では、
混合性の特徴を伴う躁病エピソードに対し、
バルプロ酸またはカルバマゼピンと
抗精神病薬の併用療法が治療選択肢として提案されています。
rapid cyclingでは?
rapid cycling(急速交代型)や
非典型的な躁状態でカルバマゼピンが使用されてきた
長い臨床的歴史があります。
ただし、
「rapid cyclingならカルバマゼピン」
あるいは「リチウムより明らかに優れる」
と一般化できるほど現在のエビデンスは強くありません。
病相の極性、過去の薬剤反応、
併存疾患、妊娠可能性、相互作用などを含めて選択します。
維持療法
カルバマゼピンには維持療法としての使用経験もありますが、
現在の双極症長期治療では、
リチウム、ラモトリギン、
一部の第二世代抗精神病薬などが
より前面に出ることが多くなっています。
これはカルバマゼピンに気分安定作用がないからではなく、
相互作用と安全性管理の複雑さ
も薬剤選択に大きく影響するためです。
気分安定薬4剤の臨床的な使い分け
| 薬剤 | 臨床的に選択しやすい場面 | 主な弱点・注意点 |
|---|---|---|
| カルバマゼピン (テグレトール) |
躁状態、混合性の特徴が目立つ場合。 他の気分安定薬で十分な反応が得られない場合にも検討 |
自己誘導、多数の相互作用、 重症薬疹、低Na血症、血液障害 |
| 炭酸リチウム (リーマス) |
典型的な躁状態、明瞭な病相を反復する経過、 長期再発予防を重視する場合 |
治療域が比較的狭く、 腎機能、甲状腺機能、脱水、相互作用への注意が必要 |
| バルプロ酸 (デパケン) |
躁状態、易刺激性、興奮、 混合性の特徴が目立つ場合 |
体重増加、振戦、血小板減少、 高アンモニア血症、妊娠関連リスク |
| ラモトリギン (ラミクタール) |
抑うつ病相を繰り返す経過、 特に抑うつエピソードの再発予防を重視する場合 |
急性躁状態の治療には向かず、 重症薬疹を避けるため緩徐な増量が必要 |
執筆者の臨床的見解|「効くが、薬理学的コストが高い薬」
精神科臨床での処方感
私自身はテグレトールを、
「古いから使わなくなった薬」ではなく、
「有効性はあるが、処方すると周囲の薬まで動かす薬」
と捉えています。
混合性や易刺激性が目立つ躁状態、
あるいはリチウムやバルプロ酸などで
十分な安定が得られない症例で、
テグレトールが非常によく効くことは実臨床で経験します。
一方、多剤併用が一般的になった現在では、
カルバマゼピンを追加することで
抗精神病薬、抗てんかん薬、
身体疾患治療薬まで血中濃度が変化し得ます。
したがって、
「テグレトールを1剤追加する」というより、
「処方全体の薬物動態を組み替える」
くらいの感覚を持って導入した方が安全です。
逆に、
テグレトール単剤またはシンプルな処方で
長期間非常に安定している患者を、
「古い薬だから」という理由だけで変更する必要もないと考えます。
認知症のBPSDに使うことはある?
カルバマゼピンは過去に、
認知症に伴う焦燥や攻撃性に対して
複数の臨床試験が行われています。
一部の試験では改善が報告されていますが、
研究数は少なく、
近年の系統的レビューでも
有効性を支持するエビデンスは限定的です。
また、高齢者では相互作用、ふらつき、
低Na血症などの問題も大きくなります。
非薬物的対応や原因評価を行ったうえで、
他の選択肢が使いにくい難治例などに
限定的に検討されることがある、という位置づけが妥当です。
用法・用量|200~400mg/日から開始
カルバマゼピンとして通常、
200~400mg/日を1~2回に分けて開始し、
効果と忍容性をみながら徐々に増量します。
通常は600mg/日前後、
症状により1,200mg/日まで増量できます。
添付文書でも、
眠気、悪心・嘔吐、めまい、複視、運動失調などは
過量の徴候となることがあるため、
低用量から開始することが推奨されています。
自己誘導|テグレトール最大の薬物動態上の特徴
カルバマゼピンの処方で
必ず理解しておきたいのが
自己誘導(autoinduction)です。
カルバマゼピンは主にCYP3A4によって代謝されますが、
同時にCYP3A4をはじめとした
薬物代謝酵素の働きを誘導します。
つまり、
服用を続けることで、自分自身の代謝まで速くなる
という特徴があります。
→
代謝酵素を誘導
→
クリアランス増加
→
血中濃度が低下し得る
約36時間
自己誘導前
約16~24時間
自己誘導後
したがって、
開始直後にちょうどよい濃度だったからといって、
そのままずっと同じ濃度が続くとは限りません。
そのため、
開始直後の1回の採血だけで投与量を固定しない
ことが重要です。
臨床症状、忍容性、
服薬状況、併用薬と合わせて、
数週間という時間軸で再評価します。
血中濃度(TDM)|4~12µg/mLをどう読むか
カルバマゼピンでは、
治療薬物モニタリング(TDM)が
処方設計に役立ちます。
4~12 µg/mL
主に抗てんかん薬TDMで用いられる範囲
2週以降
抗てんかん薬TDMの実務的目安
1週以降
必要に応じ数週間後にも再評価
TDMでは、
服薬直前のトラフ値を
同じ条件で比較するのが基本です。
ただし、
4~12µg/mLという値は
主としててんかん領域で確立された参考域です。
双極症において
「この濃度なら必ず効く」
「12µg/mLを超えたら必ず中毒になる」
という絶対的な閾値ではありません。
血中濃度だけでなく、
治療反応と
眠気、めまい、複視、運動失調などの
臨床症状を合わせて評価します。
複視・ふらつき・運動失調は重要なサイン
カルバマゼピン濃度が過度に高くなると、
眠気、悪心、めまい、
複視や運動失調
がみられることがあります。
「最近ものが二重に見える」
「まっすぐ歩きにくい」
「急にふらつくようになった」
という訴えは、
精神科診察でも見逃したくないサインです。
活性代謝物|カルバマゼピン-10,11-エポキシド
カルバマゼピンは代謝される過程で、
カルバマゼピン-10,11-エポキシド
という薬理活性を持つ代謝物を生じます。
通常のTDMではカルバマゼピン本体を測定するため、
併用薬によっては
血中濃度だけでは臨床症状を完全に説明できないことがあります。
バルプロ酸はカルバマゼピン代謝物の代謝を阻害します。
そのため両剤を併用すると薬物動態が複雑になります。
カルバマゼピン本体の濃度だけでは説明しにくい
眠気、複視、ふらつきなどがある場合には、
活性代謝物の影響も念頭に置きます。
薬物相互作用|最大の処方ピットフォール
カルバマゼピンは、
自身が多くの薬剤によって影響を受けるだけでなく、
他の薬の代謝を促進して効きにくくする
という特徴があります。
| 薬剤・薬剤群 | 臨床上のポイント |
|---|---|
| クエチアピン | カルバマゼピンの酵素誘導により クエチアピン濃度が低下することがあります。 一方、クエチアピンによりカルバマゼピン濃度が上昇する可能性もあります。 |
| アリピプラゾール | CYP3A4誘導により アリピプラゾール濃度が低下することがあります。 |
| リスペリドン/パリペリドン | 血中濃度が低下し、 臨床効果が弱くなる可能性があります。 |
| ラモトリギン | ラモトリギンの代謝が促進され、 血中濃度が低下することがあります。 |
| バルプロ酸 | バルプロ酸濃度低下に加え、 カルバマゼピン本体・活性代謝物の濃度も変化し得ます。 |
| 炭酸リチウム | 錯乱、粗大振戦、失見当識などの 精神神経症状が報告されており注意が必要です。 |
| マクロライド系抗菌薬 | カルバマゼピン代謝を阻害し、 血中濃度が上昇して中毒症状につながることがあります。 |
| ホルモン製剤など | カルバマゼピンによる酵素誘導で 一部薬剤の効果が低下する可能性があります。 |
中止するときにも相互作用が起こる
併用薬の代謝が促進されていることがあります。
カルバマゼピンを減量・中止すると
酵素誘導作用が徐々に失われ、
それまで代謝されやすかった併用薬の
血中濃度が上昇することがあります。
したがって、
開始・増量・減量・中止のすべてで
併用薬まで見直す
必要があります。
副作用|ふらつき・眠気・めまいが比較的多い
副作用は、
日常的にみられるものと
緊急性の高いものを分けて理解することが重要です。
次回診察まで待たず医療機関へ相談してください。
重症薬疹|開始後3か月は特に注意
カルバマゼピンでは、
Stevens-Johnson症候群(SJS)、
中毒性表皮壊死融解症(TEN)、
薬剤性過敏症症候群(DIHS/DRESS)などの
重篤な皮膚障害が起こることがあります。
国内添付文書では、
重篤な皮膚症状の多くが
投与開始後3か月以内
に発症すると記載されています。
発熱、眼の充血、顔面腫脹、
口唇・口腔・陰部のびらん、
水疱、咽頭痛、強い倦怠感などがある場合には、
重症薬疹を疑います。
HLA-A*31:01|日本人で重要な薬理遺伝学
カルバマゼピンによる重症薬疹には、
HLA遺伝子型との関連が知られています。
日本人を対象とした解析では、
重症薬疹を発症した症例の
58%がHLA-A*31:01を保有していたのに対し、
重症薬疹を発症しなかった集団では13%でした。
一方、
漢民族などでは
HLA-B*15:02と
SJS/TENとの強い関連が知られています。
日本人ではHLA-B*15:02の頻度は非常に低く、
明確な関連は示されていません。
保有していれば必ず薬疹を起こすわけでも、
非保有なら薬疹が起こらないわけでもありません。
現行の国内添付文書も、
全患者に対する投与前HLA検査を必須とはしていません。
低ナトリウム血症・SIADH
カルバマゼピンでは
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が起こり、
低ナトリウム血症
を生じることがあります。
軽度では症状がないこともありますが、
Naが大きく低下すると、
頭痛、悪心、強い倦怠感、
ふらつき、意識障害、けいれんなどを起こすことがあります。
特に高齢者や、
もともとNaが低い患者、
低Na血症を起こしやすい薬剤を併用している患者では
注意が必要です。
血液障害・肝障害
頻度は高くありませんが、
再生不良性貧血、
汎血球減少、
白血球減少、
無顆粒球症、
血小板減少などの
重大な血液障害が報告されています。
また肝機能障害や黄疸、
腎障害も重大な副作用として記載されています。
国内添付文書でも、
連用中は肝機能、腎機能、血液検査を定期的に行うことが望ましい
とされています。
執筆者の実務案|導入時は「薬疹・Na・自己誘導」を追う
| 時期 | 確認したいこと |
|---|---|
| 導入前 | 血算、肝機能、腎機能、Naなどの電解質、 併用薬と相互作用、妊娠可能性などを確認 |
| 導入初期 | 薬疹、発熱、眠気、ふらつき、複視などを確認。 リスクに応じ血算・Na・肝機能を再評価 |
| 2~4週前後 | 臨床効果と副作用、 服薬状況、トラフ血中濃度を確認。 自己誘導による濃度変化も考慮 |
| 安定後 | 血算、肝腎機能、Na、必要に応じ血中濃度を定期評価。 併用薬変更時には再度相互作用を確認 |
投与量、併用薬、副作用リスクによって変わります。
導入初期や処方変更時には密に確認し、
安定後は個別に間隔を調整するという考え方が実践的です。
妊娠を考える場合
カルバマゼピンは
胎児の先天異常リスクとの関連が知られています。
日本うつ病学会の双極症診療ガイドライン2023では、
妊娠中の双極症に対してカルバマゼピンを使用しないことを弱く推奨
しています。
ただし、
すでにカルバマゼピンによって
重い躁状態や発作が安定している患者で、
妊娠が判明したからといって
自己判断で突然中止することも危険です。
可能であれば妊娠前から
精神科・産婦人科で治療薬を再評価します。
代替薬へ変更するリスクと、
カルバマゼピンを継続するリスクを
個別に比較して治療方針を決定します。
よくある質問
Q. テグレトールは古い薬なので、今はほとんど使わないのですか?
いいえ。
躁状態に対する有効性は現在でもあります。
ただし、相互作用や安全性管理が複雑なため、
現在では他の気分安定薬や第二世代抗精神病薬が
先に選択されることが増えています。
Q. 血中濃度が4~12µg/mLなら必ず適量ですか?
必ずしもそうではありません。
これは主として抗てんかん薬TDMで用いられる参考域です。
双極症では臨床効果と副作用を合わせて判断します。
Q. 飲み始めてから同じ量なのに効き方が変わることがありますか?
あります。
カルバマゼピンには自己誘導があるため、
治療開始後の数週間で自身の代謝が速くなり、
同じ投与量でも血中濃度が変化することがあります。
Q. デパケンと一緒に使えますか?
併用される場合はありますが、
両剤は互いの薬物動態に影響します。
特にカルバマゼピンの活性代謝物も含めて
中毒症状に注意する必要があります。
Q. 飲み忘れた場合は2回分飲んでもよいですか?
2回分をまとめて服用することは避けます。
具体的な対応は次の服薬時刻との間隔によって異なるため、
処方時の指示または医療機関・薬剤師の案内に従ってください。
Q. 発疹が出たら次の診察まで待ってもよいですか?
発疹に発熱、眼の充血、
口腔内や陰部のただれ、水疱、
強い倦怠感などを伴う場合は
重症薬疹の可能性があります。
次回予約を待たず速やかに医療機関へ相談してください。
まとめ
テグレトール(カルバマゼピン)は、
双極症の躁状態に対して
現在でも有効性を持つ気分安定薬です。
特に混合性の特徴を伴う躁状態では、
現在の国内ガイドラインでも治療選択肢として挙げられています。
一方で、
自己誘導、多数の薬物相互作用、
重症薬疹、低Na血症、血液障害
など、
他の気分安定薬にはない処方上の難しさがあります。
血中濃度4~12µg/mLは有用な参考値ですが、
双極症では数字だけで投与量を決めるべきではありません。
臨床効果、副作用、治療開始からの期間、
併用薬まで含めて評価します。
カルバマゼピンは、
「古くて使えない薬」ではなく、
「有効だが、使いこなすために薬理学的理解を要求する薬」
と考えるのが、
現在の精神科臨床には最も近い位置づけだと考えます。

ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長
清水聖童 (Seido Shimizu)
精神保健指定医 /
日本精神神経学会認定専門医 /
認知症サポート医 /
コンサータ処方登録医
引用・参考文献
1. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA).テグレトール錠100mg・200mg/細粒50% 電子添文.2026年3月改訂.
2. 日本うつ病学会.日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
3. 日本TDM学会 編.抗てんかん薬TDM標準化ガイドライン2018.金原出版.
4. Ozeki T, et al. Genome-wide association study identifies HLA-A*3101 allele as a genetic risk factor for carbamazepine-induced cutaneous adverse drug reactions in Japanese population. Hum Mol Genet. 2011;20:1034-1041.
5. Dyer SM, et al. Anticonvulsants in the treatment of behavioral and psychological symptoms in dementia: a systematic review. 2024.
6. 『こころの治療薬ハンドブック 第16版』星和書店,2026.
7. 『今日の精神疾患治療指針 第2版』医学書院,2016.
8. 『精神科の薬がわかる本 第5版』医学書院,2024.
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