ブロモクリプチン(パーロデル)の効果・作用機序・副作用・注意点を徹底解説

目次
はじめに
ブロモクリプチン(商品名:パーロデルなど)は、ドパミン受容体を直接刺激する麦角系ドパミン受容体作動薬(ドパミンアゴニスト)です。
1970年代から使用されてきた歴史の長い薬剤で、現在もパーキンソン症候群、高プロラクチン血症に伴う排卵障害や乳汁漏出、高プロラクチン血性下垂体腺腫、末端肥大症などに使用されています。[1]
一方、パーキンソン病治療では心臓弁膜症や線維症など麦角系薬剤特有の問題があるため、現在はプラミペキソールやロピニロールなどの非麦角系ドパミンアゴニストが選択されることが多くなっています。
精神科領域ではもう一つ重要な側面があります。ブロモクリプチンはD2受容体刺激作用を持つため、抗精神病薬などによるドパミン遮断が関与すると考えられる悪性症候群(NMS:Neuroleptic Malignant Syndrome)に対して、適応外で使用が検討されることがあります。
本記事では、ブロモクリプチンの作用機序、適応症、飲み方、副作用に加え、精神科臨床で重要な悪性症候群との関係についても解説します。
この記事のポイント
- ブロモクリプチンはD2受容体を直接刺激する麦角系ドパミンアゴニスト
- パーキンソン症候群では黒質―線条体系のドパミン作用を補う
- 下垂体ではプロラクチン分泌を抑制する
- 精神科では悪性症候群に対する適応外治療として使用されることがある
- 長期投与では心臓弁膜症や線維化関連副作用に注意が必要
ブロモクリプチン(パーロデル)とは?
ブロモクリプチンは、麦角アルカロイドを基本骨格とするドパミン受容体作動薬です。
基本情報
日本で承認されている主な効能・効果は、パーキンソン症候群、乳汁漏出症、産褥性乳汁分泌抑制、高プロラクチン血性排卵障害、高プロラクチン血性下垂体腺腫、末端肥大症、下垂体性巨人症です。[1]
ブロモクリプチンの作用機序

ブロモクリプチンの薬理作用の中心は、ドパミンD2受容体の刺激です。ただし、作用する部位によって臨床効果が異なります。
① 黒質―線条体系のD2受容体を刺激する
パーキンソン病では、中脳黒質のドパミン神経細胞が減少し、線条体に届くドパミンが不足します。
ブロモクリプチンは、残っているドパミンの放出を増やすのではなく、線条体のドパミン受容体を直接刺激することでドパミン作用を補います。
その結果、次のようなパーキンソン症状の改善が期待されます。
- 動作が遅くなる「無動・寡動」
- 筋肉がこわばる「筋強剛」
- 手足の震え「振戦」
レボドパが「脳内でドパミンに変換されて作用する薬」であるのに対し、ブロモクリプチンはドパミン受容体を直接刺激する薬である点が大きな違いです。[1]
② 下垂体前葉でプロラクチン分泌を抑える
プロラクチンは、下垂体前葉のラクトトロフと呼ばれる細胞から分泌されます。
生理的には、視床下部から分泌されるドパミンがD2受容体を刺激することで、プロラクチン分泌には常に「ブレーキ」がかかっています。
この作用によって、乳汁漏出、排卵障害、月経異常などが改善します。また、プロラクチン産生下垂体腺腫では腫瘍そのものが縮小することもあります。[1]
プロラクチノーマ治療での位置づけ
現在のプロラクチノーマ治療では、効果、忍容性、作用持続時間などの面からカベルゴリンが第一選択となることが一般的です。ブロモクリプチンは現在も治療選択肢の一つですが、以前とは位置づけが変化しています。[2]
③ 末端肥大症では成長ホルモン分泌を抑える
ブロモクリプチンには、末端肥大症において異常に増加した成長ホルモン(GH)の分泌を抑える作用もあります。
健康成人では必ずしも同様の反応を示さず、末端肥大症という病的状態においてGH分泌を抑制する点が特徴です。[1]
パーキンソン病治療での現在の位置づけ
ブロモクリプチンは、臨床に導入された初期のドパミンアゴニストの一つです。
ドパミンアゴニストはレボドパと比較すると運動症状改善作用は弱いものの、初期治療として使用した場合には、レボドパ開始群と比較してジスキネジアなどの運動合併症が少ないことが報告されています。[3][4]
「受容体のダウンレギュレーションを防ぐから運動合併症が減る」と単純化しない
ドパミンアゴニストで運動合併症が少なくなる理由を、単純に「D2受容体のダウンレギュレーションを防ぐため」と説明することは適切ではありません。レボドパ曝露量やドパミン刺激の時間的パターンなど、複数の要因が関係すると考えられています。
現在では、患者の年齢、認知機能、精神症状、運動症状、衝動制御障害のリスクなどを踏まえて、レボドパとドパミンアゴニストを使い分けます。
さらにブロモクリプチンは麦角系ドパミンアゴニストであり、心臓弁膜症や線維化関連副作用の問題があるため、ドパミンアゴニストを使用する場合でも一般的には非麦角系薬剤が優先されます。[3][4]
精神科で重要な「悪性症候群」への使用
精神科臨床では重要な適応外使用です
ブロモクリプチンは悪性症候群に対して国内で承認された薬剤ではありませんが、D2受容体刺激作用を利用し、中等症~重症の悪性症候群で補助的に使用が検討されることがあります。[5][6]
ブロモクリプチンは悪性症候群に使われることがある
悪性症候群(Neuroleptic Malignant Syndrome:NMS)は、抗精神病薬などによる強いドパミン受容体遮断などを背景として発症する、まれですが重篤な病態です。
典型的には次のような症状・検査異常がみられます。
- 高熱
- 強い筋強剛
- 意識障害
- 発汗、頻脈、血圧変動などの自律神経症状
- CK上昇
- 横紋筋融解
治療の基本は、原因薬の中止と全身管理です。
輸液、体温管理、電解質・腎機能・CKの評価、呼吸循環管理などが最優先となり、重症例では集中治療を必要とします。
そのうえで、中等症~重症例では薬物療法の一つとしてブロモクリプチンが検討されることがあります。[5][6]
なぜ悪性症候群に効くと考えられているのか?
抗精神病薬によるD2受容体遮断によって中枢ドパミン機能が急激に低下することが、悪性症候群の病態の一部と考えられています。
D2受容体作動薬であるブロモクリプチンを投与することで、低下した中枢ドパミン機能を薬理学的に補うことを狙います。
悪性症候群での実際の使用法
悪性症候群に対するブロモクリプチンの使用は日本では適応外使用です。
報告で用いられることのある投与例
2.5mgを1日2~3回から開始し、全身状態や臨床反応を確認しながら増量します。症例報告・レビューでは、重症例でより高用量まで使用された報告があります。[6]
経口摂取が困難な場合には、経鼻胃管を介して投与された報告もあります。
悪性症候群は外来で治療する病態ではありません
悪性症候群は生命を脅かす可能性があり、ブロモクリプチンの投与以前に、原因薬の中止と適切な全身管理が必要です。重症度に応じて救急診療・集中治療管理を検討します。
また、ブロモクリプチンによって幻覚・妄想などの精神症状が悪化する可能性があります。統合失調症などを背景とした悪性症候群では、精神症状への影響も考慮しながら使用を判断します。
エビデンスは限定的
悪性症候群に対するブロモクリプチンの有効性を示唆する症例報告・症例集積は多数ありますが、大規模なランダム化比較試験はありません。
日本の「統合失調症薬物治療ガイドライン2022」では治療選択肢として扱われており、British Association for Psychopharmacologyのガイドラインでも、中等症~重症NMSでブロモクリプチンまたはアマンタジンを検討するとされています。[5][6]
一方、支持療法単独と比較した明確な優越性が確立しているわけではありません。そのため、支持療法に代わる治療ではなく、必要に応じて追加する補助的治療と理解するのが適切です。
「治療薬なのに悪性症候群を起こす」こともある
ブロモクリプチンと悪性症候群の関係で重要なのが、この一見矛盾した現象です。
ブロモクリプチンはドパミン遮断によって生じた悪性症候群の治療に使用されることがありますが、反対に、ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬を急激に減量・中止すると、悪性症候群様の病態を誘発することがあります。
パーロデルの添付文書にも、急激な減量または中止によって悪性症候群を誘発する可能性が記載されています。[1]
D2刺激薬は原則として急に中止しない
長期間使用している場合は、病状や併用薬を確認しながら慎重に減量します。自己判断による突然の中止は避ける必要があります。
ブロモクリプチンの飲み方
ブロモクリプチンは、悪心や血圧低下などの副作用を抑えるため、少量から開始して徐々に増量することが基本です。
パーキンソン症候群
| 段階 | 用量の目安 |
|---|---|
| 開始 | 1.25mgまたは2.5mgを1日1回、朝食直後 |
| 増量 | 1~2週間ごとに1日量を2.5mgずつ増量 |
| 標準維持量 | 15~22.5mg/日 |
5mg/日の場合は朝・夕食直後、7.5mg/日以上では毎食直後に分けて服用します。[1]
高プロラクチン血症など
通常は2.5mgを1日1回、夕食直後から開始し、効果をみながら5~7.5mg/日まで増量し、2~3回に分けて食直後に服用します。[1]
末端肥大症・下垂体性巨人症
通常は2.5~7.5mg/日を2~3回に分けて食直後に服用します。[1]
用量は疾患によって大きく異なります
ブロモクリプチンは複数の疾患に使用されますが、開始量・維持量・増量方法は適応によって異なります。処方された用法・用量に従って服用することが重要です。
主な副作用
悪心・嘔吐
ブロモクリプチンで比較的起こりやすい副作用です。
特に開始直後や増量時に起こりやすいため、少量から開始し、食直後に服用することが重要です。
なお、吐き気止めの中にはドパミンD2受容体を遮断する薬があります。
ドンペリドンやメトクロプラミドはブロモクリプチンと薬理学的に拮抗する可能性があるため、併用する場合には薬剤選択を含めた医学的判断が必要です。[1]
血圧低下・起立性低血圧
投与初期には血圧が低下し、立ちくらみ、めまい、失神などが生じることがあります。
特に高齢者や降圧薬を使用している方では注意が必要です。
幻覚・妄想・せん妄
ドパミン作用を強めるため、幻覚、妄想、錯乱などの精神症状が現れることがあります。
精神病またはその既往がある患者では、精神症状が悪化する可能性があります。
衝動制御障害
ドパミンアゴニストでは、次のような衝動制御障害がみられることがあります。
- 病的賭博
- 性欲亢進
- 強迫的な買い物
- 過食
本人が異常を自覚しにくいこともあるため、家族など周囲からの情報が重要になる場合があります。
突発的睡眠・傾眠
前兆なく突然眠り込む突発的睡眠や、強い眠気が報告されています。
自動車の運転などは避ける必要があります
服用中は、自動車の運転、高所作業、危険を伴う機械の操作を行わないよう注意が必要です。
麦角系ドパミンアゴニスト特有の重要な副作用
ブロモクリプチンを長期間使用するときに特に重要なのが、心臓弁膜症や線維化関連副作用です。
心臓弁膜症
心臓弁の肥厚や可動性低下、弁閉鎖不全などの心臓弁膜症が報告されています。
特に高用量・長期間の使用では注意が必要です。
心臓弁膜病変がある場合は要注意
心エコー検査によって心臓弁膜病変が確認されている患者や、その既往がある患者では使用できない場合があります。[1]
胸膜・肺・心膜の線維化
まれですが、次のような線維化関連病変が報告されています。
- 胸膜炎
- 胸膜線維症
- 肺線維症
- 心膜炎
- 胸水・心膜液貯留
息切れ、咳、胸痛などが新たに出現した場合には評価が必要です。
後腹膜線維症
後腹膜に線維化が生じ、尿管閉塞や腎機能障害につながることがあります。
背部痛、下肢浮腫、腎機能悪化などが手掛かりとなります。
心エコー検査は必要?
麦角系ドパミンアゴニストでは心臓弁膜症が問題となるため、心臓の評価は重要です。
PMDAは過去の安全対策通知において、投与開始時の心エコーに加えて、投与開始後3~6か月以内、その後は6~12か月ごとの心エコー検査を推奨していました。[7]
一方、現在のパーロデル添付文書では検査間隔そのものは明記されておらず、心雑音の発現・増悪などが認められた場合には速やかに胸部X線や心エコーなどを行うこと、高用量・長期投与でリスクが高まる可能性が記載されています。[1]
現在は固定された検査間隔だけで判断しないことが重要です
長期間または高用量で使用する場合には、投与量、投与期間、循環器疾患の既往、聴診所見などを踏まえて、必要に応じて心エコーなどによる定期的な評価を行います。
ブロモクリプチンを急にやめない
ドパミンアゴニストを急激に減量・中止すると、悪性症候群に加えて、ドパミンアゴニスト離脱症候群が問題となることがあります。
離脱時には次のような症状がみられることがあります。
- 無感情
- 不安
- 抑うつ
- 疲労
- 発汗
- 疼痛
そのため、減量・中止する場合には原則として病状を確認しながら徐々に減量します。[1]
まとめ
ブロモクリプチン(パーロデル)は、ドパミンD2受容体を直接刺激する麦角系ドパミンアゴニストです。
黒質―線条体系ではドパミン作用を補うことでパーキンソン症状を改善し、下垂体前葉ではプロラクチン分泌を強力に抑制します。
現在のパーキンソン病治療では、心臓弁膜症や線維症などのリスクから非麦角系ドパミンアゴニストが選択されることが多く、プロラクチノーマでも一般にはカベルゴリンが優先されます。そのため以前ほど使用頻度の高い薬ではありませんが、薬理学的にも臨床的にも重要なドパミン作動薬です。
精神科領域では、悪性症候群に対する適応外治療薬として使用されることがある点も重要です。ただし、悪性症候群治療の基本は原因薬の中止と適切な全身管理であり、ブロモクリプチンは必要に応じて追加される治療選択肢として位置づけられます。
さらに、ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬を急激に減量・中止すると悪性症候群様の病態を誘発することがあります。「D2受容体を刺激することでNMS治療に用いられることがある一方、ドパミン刺激を急激に失わせるとNMSを誘発し得る」という点は、ブロモクリプチンの薬理を理解するうえで重要です。

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長
清水聖童 (Seido Shimizu)
精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医
引用・参考文献
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). パーロデル錠2.5mg 添付文書. 2024年7月改訂.
・Petersenn S, Fleseriu M, Casanueva FF, et al. Diagnosis and management of prolactin-secreting pituitary adenomas: a Pituitary Society international Consensus Statement. Nat Rev Endocrinol. 2023.
・日本神経学会. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院; 2018.
・Pringsheim T, Day GS, Smith DB, et al. Dopaminergic Therapy for Motor Symptoms in Early Parkinson Disease Practice Guideline Summary. Neurology. 2021.
・日本神経精神薬理学会, 日本臨床精神神経薬理学会 編. 統合失調症薬物治療ガイドライン2022.
・Rogers JP, Oldham MA, Fricchione G, et al. Evidence-based consensus guidelines for the management of catatonia: Recommendations from the British Association for Psychopharmacology. J Psychopharmacol. 2023.
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 麦角系ドパミン受容体作動薬に関する使用上の注意改訂情報. 2007.
・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
.png)





