メンタルヘルスコラム

アマンタジン(シンメトレル)の効果・作用機序・副作用|薬剤性パーキンソニズムや意欲低下への使い方

  • 更新日:2026.09.17
  • 公開日:2026.09.17

はじめに

「薬を飲み始めてから動作が遅くなった」「体がこわばって歩きにくい」「脳梗塞のあとから何事にも意欲が湧かなくなった」――こうした症状に対して使用されることがある薬の一つが、アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル)です。

アマンタジンは少し特殊な薬で、パーキンソン症候群の治療薬、脳梗塞後の意欲・自発性低下に対する精神活動改善薬、A型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬という複数の作用を持っています。

精神科領域では、抗精神病薬などによって生じる薬剤性パーキンソニズムを考える際にも知っておきたい薬です。一方で、腎機能が低下すると体内に蓄積しやすく、幻覚・せん妄・ミオクローヌス・意識障害などを起こすことがあります。

この記事では、アマンタジンの効果や作用機序、飲み方、副作用に加えて、精神科診療で特に重要となる薬剤性パーキンソニズム、腎機能低下時の注意点、急な中止によるリスクについて詳しく解説します。

この記事のポイント

  • アマンタジンは、ドパミン神経伝達を高める作用とNMDA受容体拮抗作用を持つ
  • パーキンソン症候群だけでなく、脳梗塞後の意欲・自発性低下にも適応がある
  • 腎機能が低下すると蓄積し、幻覚・せん妄・ミオクローヌスなどを起こすことがある
  • 急激な減量・中止では、パーキンソニズム悪化や悪性症候群などに注意する

アマンタジン(シンメトレル)とは?

アマンタジンは、中枢神経系のドパミン神経に作用する薬剤です。日本では精神活動改善剤・パーキンソン症候群治療剤・抗A型インフルエンザウイルス剤として使用されています。

一般名
アマンタジン塩酸塩
商品名
シンメトレル錠50mg/100mg
販売開始
1975年12月
薬効
精神活動改善剤・パーキンソン症候群治療剤・抗A型インフルエンザウイルス剤
主な適応
パーキンソン症候群、脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下、A型インフルエンザ
半減期
健康成人で約10~12時間
主な排泄経路
腎排泄
特徴
ドパミン神経作用+NMDA受容体拮抗作用

アマンタジンの半減期

健康成人への単回投与では、アマンタジンの血中半減期は50mg投与時で約12.3時間、100mg投与時で約10.3時間とされています。

半減期だけで判断しないことが重要ですアマンタジンは主に腎臓から排泄されるため、高齢者や腎機能が低下している方では排泄が遅れ、血中濃度が長時間高い状態になることがあります。

アマンタジンはどのように効く?作用機序

アマンタジン(シンメトレル)の作用機序
アマンタジンは、ドパミン神経伝達を高める作用とNMDA受容体拮抗作用を持ちます。

アマンタジンの薬理作用は一つではありません。特に重要なのが、ドパミン神経系への作用NMDA受容体への作用です。

① ドパミンの放出を促し、再取り込みを抑える

パーキンソン症候群では、脳の黒質-線条体系を中心としたドパミン機能の低下が、動作緩慢、筋強剛、振戦などの運動症状に関係します。

アマンタジンはドパミン作動性神経終末に作用し、ドパミンの遊離を促進するとともに、放出されたドパミンの再取り込みを抑制することで、シナプス間隙におけるドパミン作用を高めると考えられています。

アマンタジン

ドパミン遊離促進・再取り込み抑制

線条体のドパミン作用増強

無動・寡動、筋強剛、振戦の改善

② NMDA受容体を抑える

アマンタジンには、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体に対する弱い非競合的拮抗作用もあります。

グルタミン酸は脳の代表的な興奮性神経伝達物質です。アマンタジンによるNMDA受容体拮抗作用は、特にパーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジアの改善作用を考えるうえで重要とされています。

アルツハイマー型認知症治療薬のメマンチン(メマリー)も、アマンタジンと同じアダマンタン系の構造を持つNMDA受容体拮抗薬です。

脳梗塞後の意欲低下への作用機序脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下に対する効果については、作用機序の詳細が十分に解明されているわけではありません。「NMDA受容体を遮断するため意欲が改善する」と単純化することはできません。

アマンタジンはどのような症状に使われる?

パーキンソン症候群

アマンタジンは、パーキンソン症候群にみられる無動・寡動、筋強剛、振戦などの運動症状を改善する目的で使用されます。

レボドパ製剤やドパミンアゴニストとは異なる作用を持つため、患者さんの症状や治療経過に応じて、単独または他の抗パーキンソン薬と組み合わせて使用されます。

精神科で重要な「薬剤性パーキンソニズム」

精神科診療では、抗精神病薬によって生じる薬剤性パーキンソニズムとの関係が重要です。

抗精神病薬は主としてドパミンD2受容体を遮断することで効果を発揮します。一方、黒質-線条体系のD2受容体まで強く遮断されると、ドパミン作用が低下し、パーキンソン症状が出現することがあります。

抗精神病薬

黒質-線条体系D2受容体遮断

線条体ドパミン作用低下

動作緩慢・筋強剛・振戦

薬剤性パーキンソニズムは、原因薬の開始・増量後などに出現します。特に高齢者では症状が目立ちやすく、転倒やADL低下につながることもあります。

まず原因となった薬の調整を検討する

薬剤性パーキンソニズムが生じた場合、単純に抗パーキンソン薬を追加するだけではありません。

  • 原因となっている抗精神病薬を減量できないか検討する
  • 薬剤性パーキンソニズムを起こしにくい薬へ変更できないか検討する
  • 原因薬の調整が難しい場合や症状が強い場合に対症療法を検討する

アマンタジンは、こうした対応だけでは十分でない場合の治療選択肢の一つとして検討されることがあります。

アーテンなどの抗コリン薬との違い

薬剤性パーキンソニズムには、トリヘキシフェニジル(商品名:アーテン)などの抗コリン薬が使用されることもあります。

抗コリン作用
口渇・便秘
排尿困難などにも注意
認知機能
影響あり
特に高齢者では注意
精神症状
せん妄
錯乱を生じることもある

アマンタジンには抗コリン薬のような強い直接的抗コリン作用がないため、抗コリン薬を使いにくい場合に選択肢となることがあります。

高齢者なら安全、という意味ではありませんアマンタジン自体にも幻覚・錯乱・せん妄などの中枢神経系副作用があり、特に腎機能が低下している場合には注意が必要です。

脳梗塞後の意欲・自発性低下にも使われる

アマンタジンの日本で特徴的な適応の一つが、「脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善」です。

脳梗塞後には、麻痺や言語障害だけでなく、次のような変化がみられることがあります。

  • 以前なら行っていたことを自分から始めなくなった
  • 一日中ぼんやり過ごすことが増えた
  • 周囲から促されないと行動しない
  • リハビリに自分から取り組まなくなった

こうした意欲・自発性の低下は、臨床的にはアパシー(apathy)として理解されることがあります。

アパシーとうつ病は同じではない

アパシーとうつ病は、一見すると似て見えることがありますが、必ずしも同じ状態ではありません。

状態 目立ちやすい特徴
アパシー 自分から行動を始めない、関心が乏しい、動機づけが低下している
うつ病 抑うつ気分、悲観、自責感、希死念慮などを伴うことがある

両者は併存することもあるため、単に「やる気がない」と判断せず、背景にある病態を評価することが重要です。

12週間で効果を評価します脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下に使用する場合、12週間投与しても効果が認められない場合には投与を中止することが添付文書で定められています。

アマンタジンの飲み方・用量

アマンタジンは、使用する目的によって用量が異なります。

適応 標準的な用法・用量 主な注意点
パーキンソン症候群 初期量100mg/日。通常1週間後から200mg/日を分割投与 症状・年齢に応じて調整し、300mg/日を上限とする
脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下 100~150mg/日を分割投与 12週間で改善がなければ中止
A型インフルエンザ 通常100mg/日を分割投与 年齢・腎機能などを考慮して調整
投与量は腎機能も含めて調整します
年齢、症状、腎機能、併用薬などを踏まえて投与量を調整します。特に高齢者や腎機能低下がある場合には、通常量でも血中濃度が高くなることがあります。

アマンタジンで特に重要なのは「腎機能」

アマンタジンを安全に使用するうえで特に重要なのが、腎排泄型の薬剤であることです。

アマンタジンは体内で大きく代謝されるのではなく、主として未変化体のまま腎臓から尿中へ排泄されます。

腎機能低下

アマンタジン排泄低下

血中濃度上昇・体内蓄積

幻覚・せん妄・ミオクローヌス

特に注意したいのは、高齢者、慢性腎臓病のある方、脱水状態にある方、低体重の高齢者、腎機能に影響する薬を併用している方です。

「急に幻覚が出た」場合は薬剤の蓄積も考える

アマンタジンの血中濃度が上昇すると、次のような精神・神経症状が出現することがあります。

精神症状
幻覚
妄想・錯乱を伴うこともある
意識状態
せん妄
意識障害にも注意
運動症状
ミオクローヌス
手足の不随意なピクつき
重症例
痙攣
高度蓄積では注意
突然の精神状態変化に注意高齢者がアマンタジンを服用中に「突然、人がいると言い始めた」「夜中に混乱するようになった」「手足がピクピクする」「急に反応が鈍くなった」といった変化を示した場合、認知症や精神疾患の悪化だけでなく、アマンタジンの蓄積も鑑別に入れることが重要です。

重篤な腎障害では使用できない

アマンタジンは血液透析を行っても十分には除去されません。

そのため、透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者では禁忌となっています。

過量投与や高度な薬剤蓄積では、錯乱、幻覚、せん妄、痙攣、ミオクローヌスなどに加え、不整脈や呼吸障害など重篤な状態につながることがあります。

アマンタジンの主な副作用

アマンタジンでは、精神・神経症状から消化器症状までさまざまな副作用がみられることがあります。

精神・神経症状
幻覚・せん妄
不眠、眠気、めまい、妄想、錯乱など
身体症状
悪心・浮腫
食欲低下、口渇、便秘、立ちくらみなど
特徴的な副作用
網状皮斑
ミオクローヌス、痙攣、意識障害にも注意

網状皮斑とは?

アマンタジンに比較的特徴的な副作用の一つとして、網状皮斑(livedo reticularis)があります。

皮膚に紫色から赤紫色の網目状の模様が現れる状態で、特に下肢にみられることがあります。症状が出現した場合には、投与継続の可否を含めて主治医が評価します。

急にやめてはいけない理由

アマンタジンで見落とされやすい重要事項が、急激な減量・中止に伴うリスクです。

パーキンソン症候群や脳梗塞後の意欲・自発性低下に対して使用しているアマンタジンを急激に減量・中止すると、パーキンソン症状の悪化だけでなく、悪性症候群やカタトニアなどが生じることがあります。

悪性症候群に注意悪性症候群では、高熱、強い筋強剛、意識障害、自律神経症状、CK上昇などを伴い、重症化すると生命に関わることがあります。

  • パーキンソン症状の急激な悪化
  • 悪性症候群
  • カタトニア(緊張病)
  • 錯乱
  • 失見当識
  • せん妄

治療を終了する場合には自己判断で突然中止せず、原則として医師の管理のもとで慎重に減量します。

併用に注意する薬

アマンタジンは、薬理作用や腎排泄への影響によって他の薬と相互作用を起こすことがあります。

NMDA受容体拮抗薬
メマンチン
中枢神経系への作用増強に注意
その他のNMDA関連薬
ケタミン等
精神神経症状の増強に注意
腎排泄への影響
一部の利尿薬
血中濃度上昇に注意

高齢者では複数の薬を服用していることも多いため、アマンタジンそのものだけでなく、併用薬まで含めて確認することが重要です。

A型インフルエンザにも使われる?

アマンタジンは、もともと抗ウイルス作用を持つ薬でもあります。

A型インフルエンザウイルスのM2プロトンチャネルを阻害し、ウイルスの脱殻過程を妨げることで増殖を抑えます。

一方、B型インフルエンザウイルスにはこの作用機序では有効ではありません。

現在のインフルエンザ治療での位置づけ日本では現在もA型インフルエンザウイルス感染症が承認適応です。一方、世界的にはアダマンタン系薬に耐性を示す季節性A型インフルエンザウイルスが広くみられ、現在のインフルエンザ治療における位置づけは限定的です。

よくある質問

アマンタジンはパーキンソン病の薬ですか?

パーキンソン症候群に使用される治療薬の一つです。ドパミンの遊離促進や再取り込み抑制などによって、線条体のドパミン神経伝達を高めます。また、NMDA受容体拮抗作用も持っています。

抗精神病薬によるパーキンソニズムにも使いますか?

選択肢の一つとなることがあります。ただし、まず原因となった抗精神病薬の減量や変更が可能かを検討することが基本です。症状が強い場合や原因薬の調整が難しい場合などに、アマンタジンを含む対症療法が検討されます。

アーテンとの違いは何ですか?

アーテン(トリヘキシフェニジル)は抗コリン薬です。一方、アマンタジンは主としてドパミン神経系やNMDA受容体へ作用します。抗コリン負荷を避けたい場合にアマンタジンが選択肢になることがありますが、アマンタジンにも幻覚やせん妄などの副作用があります。

アマンタジンで幻覚が出ることはありますか?

あります。特に高齢者や腎機能が低下している方では薬剤が蓄積しやすく、幻覚、妄想、錯乱、せん妄などが生じることがあります。

腎機能が悪くても飲めますか?

腎機能の程度に応じて慎重に用量や投与間隔を調整する必要があります。透析を必要とするような重篤な腎障害では使用できません。

脳梗塞後の「やる気の低下」に使う薬ですか?

日本では、脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下に対する適応があります。ただし、うつ病や認知機能低下など別の原因で活動性が低下している場合もあるため、症状の背景を評価することが重要です。

急にやめても大丈夫ですか?

急激な減量・中止は避けます。パーキンソン症状の悪化だけでなく、悪性症候群、カタトニア、錯乱、せん妄などが起こることがあります。

まとめ

アマンタジン(シンメトレル)は、ドパミンの遊離促進・再取り込み抑制を中心とした作用と、NMDA受容体拮抗作用を併せ持つ薬剤です。日本ではパーキンソン症候群だけでなく、脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下やA型インフルエンザウイルス感染症にも適応があります。

精神科領域では、抗精神病薬による薬剤性パーキンソニズムを考える際にも知っておきたい薬です。ただし、薬剤性パーキンソニズムでは原因薬となる抗精神病薬の減量・変更が可能かを検討することが治療の基本となります。

一方、アマンタジンは主として腎臓から排泄されるため、高齢者や腎機能低下患者では薬剤が蓄積し、幻覚・せん妄・意識障害・ミオクローヌスなどを起こすことがあります。

また、急激な減量・中止によってパーキンソン症状の悪化や悪性症候群、カタトニアなどを生じることがあるため、開始時だけでなく、減量・中止時にも注意が必要な薬剤です。

執筆者
執筆者プロフィール

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医

引用・参考文献

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). シンメトレル錠50mg/100mg 添付文書. 2025年7月改訂.
・サンファーマ株式会社. シンメトレル錠50mg/100mg 医薬品インタビューフォーム.
・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
・Vanegas-Arroyave N, Caroff SN, Citrome L, et al. An Evidence-Based Update on Anticholinergic Use for Drug-Induced Movement Disorders. CNS Drugs. 2024;38:239-254.
・Centers for Disease Control and Prevention. Influenza Antiviral Drug Resistance. Updated June 26, 2026.
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