メンタルヘルスコラム

【精神科医専門医解説】ボルノレキサント(ボルズィ)の効果・半減期・副作用|作用機序と飲み方

  • 更新日:2026.09.20
  • 公開日:2026.09.20

はじめに

ボルズィ(一般名:ボルノレキサント)は、
脳の覚醒を維持するオレキシン神経系を抑えることで睡眠を促す不眠症治療薬です。
オレキシン1(OX1)受容体とオレキシン2(OX2)受容体の両方を遮断する
デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)に分類されます。

2025年8月に国内承認され、同年11月から販売された比較的新しい睡眠薬です。
特に特徴的なのが、健康成人での消失半減期が約2.1時間と短いことです。
速やかに吸収され、翌朝まで高い血中濃度が残り続けにくい薬物動態を持っています。

一方で、「半減期が短い=翌朝に絶対眠くならない」という意味ではありません。
実際には傾眠、浮動性めまい、悪夢、睡眠時麻痺などが報告されており、
服用後の状態を確認しながら使用することが重要です。

この記事のポイント
ボルズィは、オレキシンによる「覚醒を保つ信号」をOX1・OX2受容体で遮断する睡眠薬です。
通常は5mgを就寝直前に服用し、必要に応じて最大10mgまで調整します。
半減期約2.1時間という短い薬物動態が特徴ですが、
5mgで十分な効果が得られる患者さんでは、必ずしも10mgへ増量する必要はありません。

ボルズィ(ボルノレキサント)とは?

ボルズィは、大正製薬で創製されたオレキシン受容体拮抗薬です。
日本では「不眠症」を適応として承認されています。

販売名の「ボルズィ(Vorzzz)」は、
一般名のVornorexantと、
眠りを表す「ZZZ」を組み合わせて命名されています。

不眠障害(不眠症)では、
寝つくまで時間がかかる「入眠困難」、
夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、
希望する時刻より早く目覚めてしまう「早朝覚醒」などがみられます。
ボルズィは臨床試験で、入眠と睡眠維持の双方に対する効果が評価されています。

一般名
ボルノレキサント水和物
代表的商品名
ボルズィ(Vorzzz)
規格
2.5mg・5mg・10mg
薬効分類
デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)
国内承認適応
不眠症
通常用量
5mgを1日1回、就寝直前
最大用量
10mg/日
消失半減期
約2.13時間(健康成人・10mg空腹時単回投与)
最高血中濃度到達時間
中央値 約0.5時間(空腹時)
主な代謝酵素
CYP3A4

ボルズィの作用機序|オレキシンとは何をしているのか

ボルズィの作用を理解するには、
まずオレキシンが「睡眠物質」ではなく「覚醒を維持する神経ペプチド」
であることを理解すると分かりやすくなります。

オレキシンA・Bは主として視床下部のオレキシン神経から放出され、
ノルアドレナリン、ヒスタミン、セロトニンなど複数の覚醒ネットワークへ働きかけます。
その結果、脳が目覚めた状態を安定して維持しやすくなります。

ボルズィ(ボルノレキサント)の作用機序。オレキシンA・Bが覚醒ネットワークを維持し、ボルノレキサントがOX1・OX2受容体を遮断して覚醒シグナルを低下させる
オレキシンA・Bは覚醒ネットワークを活性化して「起きている状態」を維持します。
ボルノレキサントはOX1・OX2受容体を遮断し、この覚醒シグナルを弱めることで睡眠への移行を促します。

① オレキシンは覚醒状態を安定させる

オレキシン神経は視床下部から脳の広い領域へ投射しています。
オレキシンA・BがOX1・OX2受容体へ結合すると、
覚醒に関係する神経ネットワークが活性化され、
「目覚めている状態を維持する」方向へ働きます。

オレキシンA・B放出
→
OX1・OX2受容体刺激
→
覚醒ネットワーク活性化
→
覚醒を維持

② ボルノレキサントはOX1・OX2受容体を遮断する

ボルノレキサントは、
ヒトOX1受容体に対してKi値0.460nmol/L、
OX2受容体に対して0.374nmol/Lの結合親和性を示します。

両方のオレキシン受容体を遮断することで、
オレキシンA・Bによる覚醒シグナルが伝わりにくくなります。

③ 「脳を強く鎮静する」より「覚醒を弱める」

ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、
主としてGABAA受容体を介して中枢神経活動を抑制します。

一方、ボルズィは
覚醒維持系であるオレキシン神経の働きを弱めることで睡眠へ移行させます。
作用する神経系そのものが従来型睡眠薬とは異なります。


「自然な睡眠」という表現には注意が必要です
オレキシン受容体拮抗薬は、生理的な睡眠・覚醒調節系に作用するという特徴があります。
ただし、薬剤によって誘導された睡眠が「自然睡眠と完全に同じ」と証明されているわけではありません。
患者さん向けには、「脳全体を強く抑えるというより、覚醒を保つ信号を弱める薬」と理解するとよいでしょう。

ボルズィ最大の特徴|半減期が約2.1時間と短い

健康成人男性に10mgを空腹時単回投与した試験では、
最高血中濃度到達時間(Tmax)の中央値は0.5時間、
消失半減期は2.13時間でした。

さらに10mgを7日間反復投与した試験でも、
1日目の半減期は約2.04時間、7日目は約2.03時間であり、
明らかな蓄積は認められていません。


「短い半減期」はボルズィを理解する重要なキーワードです
ボルノレキサントは速やかに吸収され、その後比較的速やかに血中から消失します。
この薬物動態から、翌朝まで高い薬物濃度が持続することによる
持ち越しを減らせる可能性が期待されています。


ただし「半減期2時間=2時間で効果が切れる」ではありません
血中濃度の半減期と、脳内受容体への作用時間や臨床的な睡眠効果は完全には一致しません。
実際、臨床試験では入眠だけでなく睡眠維持の改善も認められています。

臨床試験ではどの程度眠りやすくなった?

国内第III相試験

国内第III相試験では、不眠症患者590例に
ボルズィ5mg、10mgまたはプラセボを14日間投与しました。

主要評価項目である主観的睡眠潜時(眠りにつくまでの時間)は、
5mg・10mgの双方でプラセボより有意に短縮しました。

主観的睡眠潜時 プラセボ 5mg 10mg
開始時 58.9分 57.0分 58.6分
2週後 50.2分 38.4分 39.7分
開始時からの変化量 −8.6分 −19.2分 −18.7分
プラセボとの差 ― −10.6分 −10.1分

また、睡眠時間に対して実際に眠っていた割合を示す
主観的睡眠効率(sSE)も、
5mg・10mgともプラセボより有意に改善しました。

5mgと10mgは「10mgの方が必ず強い」わけではありません

上記試験では、主観的睡眠潜時のプラセボとの差は
5mgで−10.6分、10mgで−10.1分でした。

5mgと10mgを直接比較して優劣を決めた試験ではないため、
この数値だけから「5mgの方が強い」と判断することはできません。
しかし少なくとも、
10mgへ増量すれば入眠効果が比例して大きくなるという結果ではありません。


5mgで効いているなら、10mgへ増量する理由は乏しい
電子添文でも通常用量は5mgです。
10mgへ増量すると傾眠などの副作用が増える可能性があるため、
効果と副作用のバランスを確認して増量します。

長期投与ではどうですか?

国内長期投与試験では、不眠症患者367例を対象として、
5mgまたは10mgが最大52週間投与されました。

この試験では長期間にわたって治療が継続されましたが、
副作用としての傾眠は
5mg群で3.8%、10mg群で11.5%に認められました。


10mgでは傾眠が増える点に注意
「半減期が短い薬だから10mgでも朝残らない」とは考えない方が安全です。
5mgで十分な効果が得られている場合には、
より高い用量を使用する必要性はありません。

翌朝への持ち越しは少ない?

ボルズィでは、翌朝の精神運動機能について複数の試験が行われています。

自動車運転シミュレーター試験

健康成人61例を対象とした試験では、
10mgまたは20mgを就寝前に投与し、
投与9時間後の自動車運転技能が評価されました。

承認最大用量である10mgでは、
主要指標である車線維持能力について、
事前に設定された運転能力低下の基準を集団平均では超えませんでした。

健康高齢者での翌朝機能

健康高齢者16例を対象に5mgまたは10mgを就寝前に投与した試験でも、
プラセボと比較して翌朝の
平衡機能、認知機能、記憶力の有意な低下は認められませんでした。


「翌朝の運転に影響しない」と断定することはできません
臨床試験は集団としての平均的な結果であり、個人差があります。
電子添文でも、眠気、注意力・集中力、反射運動能力などが低下する可能性があるため、
患者さんの状態を確認したうえで、自動車運転など危険を伴う作業の適否を慎重に判断するとされています。

眠気やふらつきがある場合には運転を避けてください。

ボルズィの用法・用量

通常成人
ボルノレキサントとして5mgを1日1回、就寝直前に服用します。
症状に応じて増減できますが、
1日10mgを超えて使用しません。

基本は5mgから

通常用量は5mgです。
症状が十分改善せず、副作用上の問題がない場合に10mgへの増量を検討します。

症状が改善した場合には、
漫然と高用量を続けず減量を検討します。

2.5mgを使うケースがあります

ボルズィには2.5mg錠があります。
これは単なる微調整用ではなく、
特定の患者さんでは電子添文上2.5mg投与が規定されています。


中程度のCYP3A阻害薬を併用する場合
フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミルなど
中程度のCYP3A阻害薬と併用する場合は、
1日1回2.5mgとします。


中等度肝機能障害(Child-Pugh B)
中等度肝機能障害ではボルノレキサントの曝露量が上昇するため、
1日1回2.5mgとします。

肝機能障害では半減期そのものが延長します

ボルズィの半減期は健康成人では約2時間ですが、
肝機能障害では消失が遅くなります。

肝機能 平均半減期 臨床上の対応
健康成人 約1.90~2.33時間 通常5mg
軽度
Child-Pugh A
約3.07時間 血中濃度上昇に注意
中等度
Child-Pugh B
約4.92時間 2.5mg
重度
Child-Pugh C
未検討 禁忌
「ボルズィの半減期は2時間」とだけ覚えないことが重要です。
中等度肝機能障害では半減期が約5時間まで延長し、
非結合型AUCも健康成人より上昇します。
肝機能は用量設計に直接関係します。

CYP3A4による薬物相互作用

ボルノレキサントは主として
CYP3A4によって代謝されます。
そのためCYP3A阻害薬・誘導薬との相互作用が重要です。

強いCYP3A阻害薬は併用禁忌


併用できない薬があります
イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、
クラリスロマイシン、リトナビル含有製剤、
エンシトレルビル、コビシスタット含有製剤、
セリチニブなどとの併用は禁忌です。

イトラコナゾールとの併用試験では、
ボルノレキサントのCmaxは約2.2倍、
AUCは約12.2倍まで上昇しました。

グレープフルーツジュースにも注意

グレープフルーツジュースはCYP3Aを阻害し、
ボルノレキサントの血中濃度を上昇させる可能性があります。
服用中は避けます。

CYP3A誘導薬では逆に効果が弱くなる可能性

リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトインなどは
CYP3Aを誘導するため、
ボルノレキサントの血中濃度を低下させる可能性があります。

食後すぐに飲まない理由

ボルズィは食事と同時または食直後の服用を避けます。

健康成人で10mgを投与した試験では、
食後投与によって最高血中濃度到達時間(Tmax)が
約1時間遅延しました。

一方、Cmaxが大きく低下したわけではなく、
AUCはむしろ空腹時よりやや増加しました。


食事の問題は「吸収されなくなる」ことではありません
重要なのは、食直後では血中濃度の立ち上がりが遅くなり、
寝つきに対する効果の発現が遅れる可能性があることです。
そのため「就寝直前、かつ食事と同時・食直後を避ける」という服用方法になります。

ボルズィの主な副作用

傾眠

最も重要な副作用の一つが傾眠です。
短期第III相試験では、
5mg群3.1%、10mg群3.6%に認められました。

長期試験では5mg群3.8%に対し、
10mg群では11.5%であり、
増量後には特に翌朝の眠気を確認する必要があります。

悪夢・睡眠時麻痺

オレキシン系はREM睡眠と覚醒状態の安定にも関係するため、
オレキシン受容体拮抗薬では
悪夢や睡眠時麻痺、いわゆる「金縛り」が生じることがあります。

浮動性めまい・倦怠感

めまいや倦怠感がみられることがあります。
特に高齢者では、
夜間のトイレ移動などで転倒につながらないか注意します。

血中LDH増加

電子添文では検査値異常として
血中乳酸脱水素酵素(LDH)増加が記載されています。


「尿中LDH増加」ではなく、電子添文上は「血中LDH増加」です
LDH上昇にはさまざまな原因があります。
検査値が上昇した場合には、
ボルズィだけを原因と決めつけず、
肝臓、筋肉、溶血などを含め臨床状況と合わせて評価します。

依存性・耐性・反跳性不眠について

オレキシン受容体拮抗薬は、
GABAA受容体を介して作用する
ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは薬理機序が異なります。

ボルノレキサントの臨床試験では、
投与終了後に臨床的に問題となる離脱症状や反跳性不眠は確認されませんでした。

これはボルズィの重要な特徴の一つですが、
「依存が絶対に起こらない薬」と言い切ることは適切ではありません。


ボルズィは現在「習慣性医薬品」に指定されています
臨床試験で明確な離脱症状や反跳性不眠が認められなかったことと、
依存・習慣性リスクが完全にゼロであることは同義ではありません。
症状が改善した後は、治療を継続する必要性を定期的に評価します。

呼吸機能・睡眠時無呼吸症候群への影響

軽度の閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸患者46例を対象に
10mgを投与した試験では、
無呼吸低呼吸指数(AHI)はプラセボと同程度で、
臨床的に意義のある呼吸機能への影響は認められませんでした。


中等症・重症の睡眠時無呼吸まで安全性が確立したわけではありません
軽度以外の閉塞性睡眠時無呼吸症候群や、
その他の呼吸機能障害を有する患者を対象とした十分な臨床試験はありません。
強いいびき、無呼吸、日中の眠気などがある場合には、
睡眠薬の変更だけでなく睡眠時無呼吸そのものの評価が必要です。

当院では
睡眠障害・いびき専門外来
で、不眠だけでなく、いびき、無呼吸、日中の眠気、睡眠リズムなども含めて評価しています。

ナルコレプシー・カタプレキシーでは慎重に

ナルコレプシーでは、
オレキシン神経系の機能低下が病態に深く関与します。

電子添文でも、ナルコレプシーまたはカタプレキシーのある患者では
症状を悪化させる可能性があるため注意するよう記載されています。

他の睡眠薬とボルズィの位置づけ

睡眠薬には大きく分けて、
ベンゾジアゼピン系、
非ベンゾジアゼピン系、
メラトニン受容体作動薬、
オレキシン受容体拮抗薬などがあります。

分類 主な作用 特徴
ベンゾジアゼピン系 GABAA受容体作用を増強 鎮静・筋弛緩・抗不安作用など
非ベンゾジアゼピン系 GABAA受容体作用を増強 主に睡眠作用を利用
メラトニン受容体作動薬 概日リズム・睡眠促進系へ作用 睡眠・覚醒リズムを整える方向
オレキシン受容体拮抗薬 覚醒維持系を抑制 覚醒から睡眠への移行を促す
ボルズィ OX1・OX2受容体遮断 半減期約2.1時間と短い
半減期だけで睡眠薬の優劣を決めることはできません。
寝つきの悪さ、中途覚醒、起床時刻、翌朝の眠気、年齢、
肝機能、併用薬、生活リズムなどを総合して薬剤を選択します。

睡眠薬だけで不眠症を治療しないことも重要です

慢性不眠では、
「眠れないから睡眠薬を増やす」という対応だけでは不十分なことがあります。

就床時間が長すぎる、
昼寝が長い、
起床時間が不規則、
寝床で長時間スマートフォンを見る、
「今日も眠れないのではないか」という予期不安などが、
不眠を維持していることがあります。

不眠障害(不眠症)では、
睡眠習慣の調整や
不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)も重要な治療になります。

当院の
精神科・心療内科の治療・支援
では、薬物療法だけでなく、
睡眠に対するデジタル治療などの選択肢についても案内しています。

不眠以外の睡眠・覚醒障害については
疾患・特性から探す
もご覧ください。

ボルズィのよくある質問

Q. ボルズィはどのくらいで効き始めますか?

健康成人での最高血中濃度到達時間は、
空腹時で中央値約0.5時間です。
比較的速く吸収されますが、
服用後必ず30分以内に眠れるという意味ではありません。
就寝直前に服用してください。

Q. 半減期が約2時間なら、夜中に薬が切れませんか?

半減期と睡眠作用の持続時間は完全には一致しません。
臨床試験では主観的睡眠潜時だけでなく、
睡眠効率など睡眠維持に関連する指標も改善しています。
そのため「半減期が短い=入眠にしか効かない」とは言えません。

Q. 5mgと10mgなら10mgの方がよく眠れますか?

必ずしもそうとは限りません。
第III相試験では5mg・10mgとも有効でしたが、
入眠潜時について10mgが5mgより明確に大きな効果を示したわけではありません。
一方、長期試験では10mgで傾眠が多く認められています。
通常は5mgから使用し、必要性を確認して増量します。

Q. 食後に飲んではいけませんか?

食事と同時または食直後は避けます。
食後では最高血中濃度に達する時間が約1時間遅れ、
寝つきに対する作用の発現が遅れる可能性があります。
「食べると吸収されなくなる」という意味ではありません。

Q. 翌朝に車を運転できますか?

ボルズィでは翌朝の運転技能への影響を調べた試験がありますが、
個人差があるため「誰でも安全」とは言えません。
眠気、注意力・集中力、反射運動能力などを確認し、
運転等の適否について医師と相談してください。
眠気がある場合には運転してはいけません。

Q. お酒と一緒に飲んでもいいですか?

避けてください。
アルコールとボルズィはいずれも中枢神経機能へ影響するため、
併用によって精神運動機能がさらに低下する可能性があります。

Q. 急にやめても大丈夫ですか?

臨床試験では投与終了後に臨床的に問題となる反跳性不眠や離脱症状は認められていません。
ただし、自己判断で中止すると元々の不眠症が再び表面化することがあります。
治療継続の必要性を医師と相談しながら判断してください。

Q. ボルズィは依存しない睡眠薬ですか?

従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬とは作用機序が異なり、
臨床試験では明確な離脱症状や反跳性不眠は確認されませんでした。
ただし現在、ボルズィは習慣性医薬品に指定されているため、
「依存性が完全にない」と断定することはできません。

Q. 睡眠時無呼吸があっても使えますか?

軽度閉塞性睡眠時無呼吸患者を対象とした試験では、
10mgで臨床的に重要な呼吸機能への影響は認められませんでした。
ただし、中等症・重症の睡眠時無呼吸などについて十分なデータがあるわけではありません。
いびきや無呼吸、強い日中の眠気がある場合には、
睡眠時無呼吸そのものの評価が重要です。

2026年10月末までは14日処方制限があります


2026年9月現在、1回14日分まで
ボルズィは新医薬品のため、
2026年10月末日までは、1回の投薬につき14日分が上限です。

2026年11月以降にこの記事を閲覧される場合には、
この新薬投与日数制限は終了しているため、
最新の保険診療上の取り扱いをご確認ください。

まとめ

ボルズィ(ボルノレキサント)は、
OX1・OX2受容体を遮断して覚醒維持システムを弱め、
覚醒から睡眠への移行を促すオレキシン受容体拮抗薬です。

最大の薬物動態上の特徴は、
消失半減期が約2.13時間と短いことです。
入眠困難だけでなく睡眠効率にも改善が確認されており、
単純な「入眠専用薬」ではありません。

通常は5mgを就寝直前に服用し、
十分な効果が得られない場合に最大10mgまで増量します。
一方、10mgでは傾眠が増えるため、
「効かなければ機械的に10mg」という処方設計は適切ではありません。

また、CYP3A4による薬物相互作用が重要で、
強いCYP3A阻害薬は併用禁忌、
中程度のCYP3A阻害薬との併用時や中等度肝機能障害では2.5mgへ減量します。

ボルズィは短い半減期と翌朝の機能への影響の少なさが期待される薬ですが、
傾眠、悪夢、睡眠時麻痺などが起こる可能性はあります。
睡眠薬の選択では薬の特徴だけでなく、
不眠のタイプ、生活リズム、身体疾患、精神状態、併用薬まで含めて評価することが重要です。

執筆者
執筆者 清水聖童

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 /
日本精神神経学会認定専門医 /
認知症サポート医 /
コンサータ処方登録医

引用・参考文献

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). ボルズィ錠2.5mg/5mg/10mg 電子添文. 2025年11月改訂.

・大正製薬株式会社. ボルズィ錠2.5mg/5mg/10mg 医薬品インタビューフォーム.

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). ボルノレキサント水和物 審査報告書. 2025.

・Uchiyama M, et al. Efficacy and safety of vornorexant in Japanese patients with insomnia: a randomized, placebo-controlled phase 3 pivotal study. 2026.

・Miyazaki Y, Kambe D, Imadera Y, et al. Comparison of next-morning residual effects by bedtime administration of vornorexant and zopiclone in healthy older participants: postural stability, neuropsychological functions, and subjective sleepiness in a randomized clinical study. Psychopharmacology. 2026.

・Uchimura N, et al. Long-term safety and efficacy of vornorexant in Japanese patients with insomnia: A 52-week open-label, randomized trial. Sleep Medicine. 2026.

・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.

・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.

・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.

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