エンタカポン(コムタン)の効果・作用機序・副作用|精神科で知っておきたい使い方

目次
はじめに
パーキンソン病の基本的な治療薬であるレボドパ(L-ドパ)を長期間使用していると、次の服薬時間を待たずに薬の効果が切れ、動きにくさや筋肉のこわばりなどが再び強くなることがあります。
このように、レボドパの効果が次の服薬まで持続しなくなる状態をウェアリング・オフ(wearing-off)現象と呼びます。
エンタカポン(商品名:コムタン)は、レボドパの末梢での代謝を抑えることで、その作用時間を延長する末梢COMT阻害薬です。
精神科で単独して使用する機会が多い薬ではありませんが、パーキンソン病を併存する患者さんの診療では、幻覚・妄想・衝動制御障害・ジスキネジアなど精神科とも関係の深い症状に注意する必要があります。
この記事では、エンタカポンの作用機序や効果、飲み方、副作用に加えて、精神科診療で特に知っておきたいポイントまで解説します。
- エンタカポンは、レボドパの効果が切れるwearing-off現象に使用する薬です
- 末梢のCOMTを阻害し、レボドパの血中濃度が保たれる時間を延長します
- 単独では使用せず、レボドパ・DDC阻害薬と必ず併用します
- 精神科では、幻覚・妄想・衝動制御障害などドパミン作動性の精神症状に注意します
- 薬剤性パーキンソニズムそのものを治療する目的で使用する薬ではありません
エンタカポン(コムタン)とは?
エンタカポンは、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)という酵素を阻害するパーキンソン病治療薬です。
COMT阻害薬の中でも、主として末梢組織のCOMTを阻害することから、末梢COMT阻害薬に分類されます。
エンタカポン(Entacapone)
1錠中 エンタカポン100mg
コムタン錠100mg
末梢COMT阻害剤
パーキンソン病におけるwearing-off現象の改善
約0.8時間
日本人のパーキンソン病患者に100mgを単回投与した試験では、エンタカポンの血中半減期は約0.85時間でした。比較的短い半減期を持つ薬剤です。
エンタカポンはどのように効く?作用機序

COMTは何をしている酵素?
COMTはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼの略で、カテコール構造を持つ物質をメチル化して代謝する酵素です。
ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンの代謝に関わるほか、パーキンソン病治療で使用するレボドパもCOMTによって代謝されます。
レボドパは脳に届く前にも代謝される
レボドパは、脳内へ移行したあとドパミンへ変換され、パーキンソン病で不足しているドパミンを補います。
しかし、服用したレボドパの一部は脳へ到達する前に末梢組織で代謝されます。その代表的な代謝経路が、DDC(ドパ脱炭酸酵素)とCOMTです。
DDC阻害薬だけではCOMTによる代謝が残る
現在のレボドパ治療では、カルビドパやベンセラジドなどのDDC阻害薬を組み合わせることで、末梢でレボドパがドパミンへ変換されることを抑えています。
一方、DDCによる代謝を抑えても、COMTによってレボドパが3-O-メチルドパ(3-OMD)へ代謝される経路は残ります。
エンタカポンが末梢COMTを阻害する
→
DDCによる末梢代謝を抑制
→
エンタカポンでCOMTも阻害
→
レボドパのAUC・半減期が増加
→
レボドパ作用時間を延長
エンタカポンは主として十二指腸や肝臓などの末梢COMTを阻害し、レボドパから3-OMDへの代謝を抑えます。
その結果、レボドパの生物学的利用率が高まり、血中レボドパのAUC(薬物への総曝露量)と半減期が増加します。
どのようなときにエンタカポンを使う?
エンタカポンの承認された対象は、wearing-off現象が認められるパーキンソン病です。
電子添文では、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩による治療を行っており、少なくともレボドパとして1日300mgを使用しても十分な効果が得られず、wearing-offが認められる患者さんに使用することとされています。
wearing-offとは?
レボドパの服用直後には動きやすいものの、次の服薬時間が近づくにつれて、次のような症状が再び現れることがあります。
- 動作が遅くなる
- 体がこわばる
- 歩きにくくなる
- 振戦が強くなる
- 身の回りの動作がしにくくなる
薬が効いて動きやすい時間をON時間、効果が切れて動きにくい時間をOFF時間と呼びます。エンタカポンはレボドパの作用時間を延ばし、OFF時間を減らす目的で使用します。
エンタカポンでどのくらいON時間が延びる?
wearing-offを有する日本人パーキンソン病患者341例を対象とした国内二重盲検試験では、起きている間のON時間は次のように変化しました。
+0.5時間
観察期からの変化量
+1.4時間
プラセボとの差 約0.85時間
+1.4時間
100mgとの有意差なし
100mg群、200mg群のいずれでもプラセボ群と比較してON時間が有意に延長しました。
一方、この試験では100mgと200mgのON時間延長効果には有意差が認められず、副作用発現率は100mg群52.2%に対して200mg群72.8%でした。
エンタカポンの飲み方・用量
症状によって1回200mgまで増量できますが、1日8回を超えず、1日最大1,600mgまでです。
実際にはレボドパ製剤の投与スケジュールに合わせて使用されます。エンタカポンだけを単独で服用しても、パーキンソン病に対する十分な治療効果は期待できません。
エンタカポンを追加するときはレボドパの効き過ぎにも注意する
エンタカポンを追加すると、これまでと同じ量のレボドパを服用していても、身体が受けるレボドパの作用が強くなることがあります。
その結果、次のようなドパミン作動性副作用が目立つことがあります。
- ジスキネジア
- 幻覚・幻視
- 妄想
- 眠気
- 起立性低血圧
その場合には、エンタカポンだけでなく、併用しているレボドパ製剤を含めて投与量を調整することがあります。
精神科でエンタカポンをどう考える?
エンタカポンそのものは精神疾患を治療する薬ではありません。しかし、パーキンソン病では幻覚、妄想、抑うつ、不安、認知機能低下、衝動制御障害などの精神症状がみられることがあり、精神科が診療に関わることがあります。
そのため、精神科医にとっても「どのようにドパミン系へ影響する薬なのか」を理解しておくことが重要です。
薬剤性パーキンソニズムに使う薬ではない
抗精神病薬を服用している患者さんに動作緩慢や筋強剛、振戦などが現れた場合には、まず薬剤性パーキンソニズムを考えます。
一方、高齢者などでは、もともとのパーキンソン病が抗精神病薬投与をきっかけに目立つようになることもあります。
- 抗精神病薬開始・増量後に出現していないか
- 左右差が強くないか
- 安静時振戦などパーキンソン病を示唆する所見がないか
- 抗精神病薬を減量・変更できるか
- もともとレボドパ治療を受けているパーキンソン病患者ではないか
エンタカポンを使用するのは、基本的にはパーキンソン病としてレボドパ治療を受けており、その効果が切れるwearing-offが問題となっている場合です。
幻覚・妄想が出た場合は「精神疾患の悪化」だけで考えない
エンタカポンを追加すると、レボドパの作用が増強されるため、幻覚や妄想などの精神症状が目立つことがあります。
電子添文では、幻覚は5%以上、幻視・幻聴は1~5%未満、妄想も副作用として報告されています。
衝動制御障害にも注意する
レボドパやドパミン受容体作動薬などのドパミン系治療では、まれに衝動制御障害が問題となります。
エンタカポンとレボドパの併用療法でも、次のような症状が報告されています。
- 病的賭博
- 病的な性欲亢進
- 強迫的な買い物
- 過食・暴食
本人が症状を問題と認識していない場合もあるため、診察では本人だけでなく、必要に応じて家族から生活上の変化を確認することも重要です。
エンタカポンの主な副作用
ジスキネジア
エンタカポンで特に重要な副作用がジスキネジアです。
電子添文ではジスキネジアは37.5%と比較的高い頻度で報告されています。ただし、これはエンタカポンそのものが単独で不随意運動を引き起こすというより、レボドパの作用を増強することで既存のジスキネジアが目立ちやすくなるという側面があります。
尿が赤褐色になることがある
エンタカポンまたはその代謝物によって、尿が赤褐色に着色することがあります。電子添文では着色尿が14.4%に報告されています。
便秘・悪心・下痢などの消化器症状
便秘、悪心、腹痛、下痢などの消化器症状がみられることがあります。
下痢が長期間続く場合には体重減少につながることがあり、大腸炎も報告されています。症状が続く場合には投与継続の可否を評価します。
突発的睡眠・傾眠
前兆なく突然眠り込む突発的睡眠や、強い傾眠が現れることがあります。
急に中止してはいけない理由
エンタカポンを急激に減量・中止すると、パーキンソン症状が急速に悪化するだけでなく、悪性症候群や横紋筋融解症が生じることがあります。
→
レボドパ作用が急に低下
→
ドパミン神経伝達が急激に変化
→
パーキンソニズム悪化・悪性症候群など
悪性症候群では、高熱、強い筋強剛、意識障害、激越、自律神経症状、CK上昇などがみられ、横紋筋融解症や急性腎障害につながることがあります。
治療を終了するときには自己判断で急に中止せず、患者さんの状態を確認しながら慎重に減量します。必要に応じて、併用するレボドパ製剤の調整も行います。
使用するときに特に注意するケース
肝機能障害
肝機能障害のある患者では、エンタカポンの血中濃度が上昇することがあります。肝硬変患者を対象とした試験では、健康成人と比較してAUCおよびCmaxがおよそ2倍となりました。
そのため、特に1回200mgへの増量は慎重に判断します。
体重40kg未満
体重40kg未満の患者では、1回200mg投与時にジスキネジアが増える可能性があります。
高齢者
高齢者では腎機能・肝機能などの生理機能が低下していることがあります。また、認知機能低下や幻覚、起立性低血圧、転倒などがもともと問題となっている場合もあるため、状態をみながら慎重に使用します。
併用に注意する薬
アドレナリン・ノルアドレナリンなど
アドレナリン、ノルアドレナリン、イソプレナリン、ドパミンなどはCOMTによって代謝されるため、エンタカポンとの併用によって作用が増強し、血圧変動や不整脈などが起こる可能性があります。
セレギリンなどのMAO-B阻害薬
選択的MAO-B阻害薬との併用では血圧上昇などに注意します。セレギリンと併用する場合、電子添文ではセレギリンを1日10mg以下とすることが示されています。
ワルファリン
エンタカポンはR-ワルファリンのAUCを増加させ、INRを上昇させたとの報告があります。併用する場合にはINRなどを確認します。
鉄剤
エンタカポンは消化管内で鉄とキレートを形成することがあります。そのため、鉄剤とは少なくとも2~3時間以上間隔をあけて服用します。
イストラデフィリン
イストラデフィリンとの併用では、ジスキネジアの発現頻度が上昇したとの報告があります。
よくある質問
エンタカポンだけを飲んでも効きますか?
単独では使用しません。エンタカポンはレボドパの末梢代謝を抑える薬であるため、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用が必要です。
エンタカポンは薬剤性パーキンソニズムにも使いますか?
通常、その目的で使用する薬ではありません。エンタカポンの適応は、レボドパ治療中のパーキンソン病でwearing-off現象が認められる場合です。抗精神病薬使用中にパーキンソニズムが出現した場合には、まず原因薬との関係やパーキンソン病の併存を評価します。
コムタンを飲むと幻覚が出ることがありますか?
あります。エンタカポンはレボドパの作用を増強するため、幻覚・幻視・幻聴・妄想などのドパミン作動性副作用が目立つことがあります。精神症状が変化した場合には、エンタカポンだけでなく抗パーキンソン薬全体を確認します。
尿が赤茶色になりましたが大丈夫ですか?
エンタカポンやその代謝物によって尿が赤褐色になることがあります。ただし、赤い尿には血尿など別の原因もあるため、症状や経過によっては確認が必要です。
コムタンは急にやめても大丈夫ですか?
急激な減量・中止は避けます。パーキンソン症状の悪化だけでなく、悪性症候群や横紋筋融解症が起こることがあります。中止するときは医師の管理下で慎重に減量します。
100mgと200mgでは200mgの方がよく効きますか?
必ずしもそうとは限りません。国内比較試験では100mgと200mgはいずれもON時間を延長しましたが、両群の効果に有意差は認められませんでした。一方、200mg群では副作用の発現率が高かったため、増量は症状と副作用をみながら慎重に判断します。
まとめ
エンタカポン(コムタン)は、末梢COMTを阻害してレボドパの代謝を抑え、レボドパの作用時間を延長する薬です。レボドパ治療中のパーキンソン病で、薬の効果が次の服薬まで持続しないwearing-off現象に使用します。
エンタカポン単独では使用せず、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用が必要です。
精神科診療では、薬剤性パーキンソニズムの治療薬ではないことを理解しておくことに加え、レボドパ作用の増強に伴う幻覚・妄想・衝動制御障害・ジスキネジアなどに注意することが重要です。
また、急激な減量・中止では悪性症候群や横紋筋融解症を生じる可能性があるため、開始時だけでなく、用量変更や中止時にも慎重な管理が必要な薬剤です。

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長
清水聖童 (Seido Shimizu)
精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医
引用・参考文献
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). コムタン錠100mg 電子添文. 2026年7月改訂.
・オリオンファーマ・ジャパン株式会社. コムタン錠100mg 医薬品インタビューフォーム. 2026年7月改訂.
・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
・日本神経学会 監修. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院; 2018.
・Mizuno Y, Kanazawa I, Kuno S, et al. Placebo-controlled trial of entacapone in Japanese patients with Parkinson’s disease. Mov Disord. 2007;22(1):75-80.
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